忘れられない一年が終わろうとしている
人が待ち望んでいるのは
悲しみのない
苦しみのない
平穏な今日と明日
希望はいつの時も待っているに違いない。
冬の装いの金沢へ一週間前に足を延ばした。
柳はそよぎ、黒い屋根瓦はここだけの証のように町並みを作っている。
加賀百万石の風光はいくえも重ねた静かな歴史を秘めていた。
金沢城・高石垣の城郭にしつらえられた金沢の風物詩「雪づり」
尾山神社
加賀の藩祖・前田利家が祀られている金沢の名所ともいえる神社。
鳥居から神門をのぞむ。
この神門は和漢洋の三様式建築で、ギヤマンの窓は夜になると灯がともされる。
昔は日本海を航行する船のしるべにもなっていたという。
右は、母衣(ほろ)をつけた軍装の前田利家像。
ほろは、流れ矢を防ぐために平安時代末期に考案されたとするが
他にも多くの役目を果たしていた。
尾山神社には、利家の妻まつをはじめ、加賀藩十七代当主まで祀られている。
ひがし茶屋街
通りは格子戸の家並みが続く。
国の伝統的建造物の保存地区に指定されているここは、
繊細な格子戸が優美。
小路にも、さだめる地につつまれているかのように立つ家並み。
兼六園
日本三名園のひとつで霞が池に立つ「ことじ灯篭」
ここに着いたとたん、あられが降りだしてきた。
苔のうえにも葉にもあられが散り
、あたりは次第に墨絵のような景色になった。
名園はいつの時でもここでしかありえない季節の詩を語っている。
降りしきるあられで白くなった地面。
兼六園は廃藩置県後、明治7年(1874)に一般公開されるようになった。
松はいくすじもの縄に護られてたたずむ。
長町武家屋敷跡
細かい雪が降る夜の武家屋敷跡にぼんやりと灯るあかり。
ぬれた石畳をゆっくり歩いた。
静寂のかなたには消えなんとするいにしえの時を刻んでいる。
何度も乗った周遊バス。
金沢の三文豪、泉鏡花・徳田秋声・室生犀星の名のバスがある。写真は香林坊を出る「鏡花号」