古書店でこの豆本を目にした時、多くの本が並べられている中で
大切な物のように置かれていたのが印象的だった。
ディスプレーが上手な古書店。
良い本があるかも知れない…。そんな気持ちで行った時に
気に入った一冊とめぐり合えるのはひとしおの喜びがある。
詩人であり、随筆家でもあった串田孫一が本にまつわる自身の思いを綴っている。
(表紙のカットも串田孫一自身の手彩)
本との出会いから始まり、手作りの本を初めて手にした思い出、
造本の魅力に惹かれた時代、そして印刷への関心、特装版が出来るまでの過程へと話は進む。
読み返したり、同じページを何度も読める読書の道草。
そして最後は刊行された日記類の中から、盲目の筝曲師「葛原匂当」(くずはらこうとう)に触れ
簡略された一言、二言の日記の奥にある大切なものと56年間書き続けた匂当への敬意で終わっている。
「古通豆本」(こつうまめほん)は、「日本古書通信社」が昭和45年(1970)から
平成14年(2002)まで全141冊を刊行した豆本シリーズ。
串田孫一の本への愛着は、著者だからという衒いもなく本を愛する一人の読者として
本に関わるすべてに共感や疑問を自然に語っている。
昭和58年5月 日本古書通信社 発行 (写真をクリックするとほぼ実物大)