日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

大岡昇平 訳「美女と野獣」 字幕台本発見

2009-10-29 | Jean Cocteau

ジャン・コクトーの映画「美女と野獣」を作家・大岡昇平が翻訳した台本が発見された。
タイプで打たれた58ページ全文が残っていた。   

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発見されたのは東京国立近代美術館フイルムセンターで
この映画が日本で封切られた1948年当時、大岡昇平は洋画輸入会社の
「フランス映画輸出組合日本事務所」に勤務しており、
フランス映画の字幕翻訳や宣伝向けの文章を書いていたという。                                                                         (2009年10月29日 朝日新聞 朝刊より)

コクトーの代表作「美女と野獣」は美女の美しい心によって野獣が王子に変わる幻想物語。
今年、大岡昇平は生誕100年にあたる。この年までの永い眠りからさめた言葉がよみがえる。

この原稿は「戦後フランス映画ポスターの世界」と題して
来年1月からフイルムセンターで開かれる展覧会で公開される。


千日紅 

2009-10-27 | Flower

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千日紅の花言葉は「終わりのない友情」

時を経ても変わらない信頼。

その気持ちを持てる人、得られた人は幸運な

心の鍵を手にしたといえるだろう。

千日紅の名前は千日も色褪せないことから由来する。
千日とは長く色褪せないたとえである。江戸時代に中国から渡来した。
『花壇地錦抄』という書物にも ~花の色かわらずして重宝なるもの~ と記されている。
日本で初のドライフラワーであった。珠のようなこの花を女性はかんざしに用いたという。

昨晩友人から届いた画像、雨の日の花束。


金閣寺 三島由紀夫

2009-10-26 | book

昭和25年(1950年)、金閣寺の見習い僧侶によって炎上した実際の事件をもとに
三島由紀夫は主人公・溝口が「私」という一人称で独白するかたちで小説にした。
主人公が見る金閣寺の心象風景は抒情に満ち官能的で美しい。この格調高い文体が三島の31歳の時に
書かれたことに感嘆する。 

 

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父から金閣ほど美しいものはこの世にないと聞かされてきた主人公は
吃音(きつおん)の障害があるため外界との接触が少なく、自己の中で成長する。
そして自分とを隔てる美の象徴として彼の目は金閣寺のみにそそがれてゆく。
やがて金閣は自分自身となり、醜い自分が焼き滅ぼされる時は金閣も焼失する、という考えに至る。
屈折した感情が、自分の運命を金閣と同一にするという狂気を生んだ理論ともいえる。

少年時代に自分を裏切った有為子と母の暗い過去。
そして内翻足の友人・柏木もまた現実を荒々しくかげろうのように生きている男だった。
金閣寺の住職を約束されながらも序々に深まる老師との溝。

こうした暗さと、鬱々とした気持ちが混濁した人生の中で生まれた呪いは、世間から遮断されている自分を
解放することだった。
金閣に火を放ったあと、彼はゆっくり煙草をくゆらせ「生きよう」と思う。                                         

 


ジャン・コクトーのピンズ putit Cocteau

2009-10-24 | Jean Cocteau

Jean Cocteauの顔ピンズ。 37mm 1993年 フランス製作 作製個数不明

コクトーの額や髪型の特徴をとらえて作られているピンズ。
写真は正面から撮影したが斜めから見た横顔はさらに似ている。



さまざまな創作活動から多くの作品を残したコクトーは
地上にいながら天上の彼方をいつも見つめていた。
そして天使を見い出したコクトーは、
自らも天使となって地上と天上の間を飛翔しつづけた


ジャン・コクトーのピンズ ミィ・ラ・フォレ

2009-10-22 | Jean Cocteau

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Jean Cocteau <Milly la Foret> と書かれたピンズ(ピンバッジ) 17mm×23mm
1991年 フランス製作 限定1000個 

サンブレーズ礼拝堂と天使の祈りに書かれた言葉。       

    <Je reste avec vous>

    私はあなたたちと共にいる

言葉は力を持つ。永遠に変わらない存在の確かさを与えてくれるこれ以上の言葉はない。


ベルギーの幻想がBunkamuraに集う

2009-10-20 | 絵画

19世紀末、ベルギーの画家たちは内なる夢想を画布に描き、不滅の美を永遠のものした。
世紀末の甘美な闇、幻影の彼方にたたずむ女性、いずことも知れぬ桃源郷、そこにいる女性たちは幻でありながら猟奇的、観念的、運命的である。                             

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Bunkamuraのチラシにはポール・デルヴォーの大作「海は近い」がプリントされている。
神殿、室内、月、外灯、木立ちを配した中に女性たちはデルヴォー自身の神話から登場する。
室内と室外は一体となり、ありえない不思議な風景が月の下に存在する。

そしてデルヴォーの連作「鏡の国」はクロード・スパークの小説に挿絵として描かれたエッチング。
死んだ妻を剥製にする男の悲劇を扱った衝撃的な内容を緻密に描いていた。



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ウィリアム・ドゥグーヴ=ド=ヌンク「夜の中庭 あるいは陰謀」。黒と青が溶けるような闇。老婆三人の黒のマントが陰謀めいた暗さをより深める。  「青は信仰の対象にして天上の色であり」の言葉が印象深い。



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フェルナン・クノップフ「女性習作」は淡い光を内包した究極の幻想を感じさせ、
今回楽しみにしていた画家である。
クノップフは常に端正な装いをしていたことでも知られるが、
外界と遮断して生きた彼自身の中で、理想とする女性への美学は幻想の世界に淡く存在する。
しかしそこには魔術的空気が秘そみ神秘の空気が流れている。




「ブルージュにて 聖ヨハネ施療院」は運河に建物が映っている絵であるが水は暗い。
動かぬ水面は黒い鏡のようであった。

フェルシアン・ロップスは冒涜の夢想を描き、不安でありながら魂の結合を閉じ込める。
ジェームス・アンソール「薔薇」、豊かに咲きそろいすべてが溶けるように濃密な絵。
ルネ・マグリットはモチーフを象徴的に配し、機械仕掛けの風景を思わせた。
「9月16日」は黒い木に細い三日月を描き、シンプルな構図でありながら非現実へと誘う。

    姫路市立美術館から集った「ベルギー幻想美術館」は10月25日まで。


キャンドル

2009-10-15 | 日常

 

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  ともし灯よ

  魂はかがやきを求めず

  まばゆき光を消して

  闇となれ

   九鬼周造 「タンゴ」より



今やキャンドルはデザインの変化を遂げ、灯りの実用性だけではなく、装飾用としても普及し
キャンドルデザイナーたちによって芸術的作品にまで高められている。

キャンドルは5~10世紀にアルジェリアなどでミツバチの蜜ロウで良質なキャンドルが作られ、
ローマ帝国時代にはカトリック教の儀式にも多く使われるようになる。
日本には奈良時代に中国から蜜ロウのキャンドルが輸入され江戸時代には松明や松油ロウソクが灯火として
使われていたが、その後一般市民にも普及した。

やわらかい光は明暗をたくみに変えて周囲に思わぬ影を浮かび上がらせる。
キャンドルは陰影の魔術師。
静けさの中に淡い希望を揺らしている。


秋の色

2009-10-12 | Flower

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ダリア狂時代。19世紀初めにヨーロッパでそう呼ばれた時代があった。
日本では戦争中に根から果糖を作ったという。あ
でやかなダリアはしばしば女性を形容する表現としても用いられる。 

  放たれし 女のごとく わが妻の
       振舞う日なり ダリアを見入る     石川啄木

秋はチョコレート色やこげ茶が似合う。
木々も色を変えつつあり風景はひかりに沈む色に染まってゆく。

使用した花◆ダリア、ガーベラ、スカビオーサ、スモークツリーの葉、
ミント、ゲイラックス、レモンリーフ

 


冥界への通知 ジャン・コクトー

2009-10-11 | Jean Cocteau

1963年10月11日、ミィ・ラ・フォレ。

心臓を病んでいたコクトーはこの日も2階で休んでいたが電話が何回も鳴る。
エディット・ピアフが同日の朝8時40分に亡くなり
マスコミが彼にコメントを求めていたのだ。
息子のデルミットと庭師夫妻はコクトーに知られないように配慮していたが
様子を察したコクトーは容態が急変。

午後1時過ぎ、鏡の向こうから死神がコクトーを迎えにきた。
多くのことばを残し時代を駆け抜けたコクトーはもう語らない。
74歳の秋、コクトーは冥界への鏡を通っていった。



写真の新聞記事は偶然手にすることが出来た。
そのため新聞社、日時は不明だが当時の10月11日(金)の夕刊かと思われる。


ヒガンバナ科が彩る

2009-10-10 | Flower

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ピンクのネリネとアマクリナム(下方の中央)はヒガンバナ科の花。
今頃の季節を淡く彩る。
少しひんやりとする空気の中で茎はすじを伸ばし、花は遠慮がちに光を避ける。  
       

   色褪せた表面の

   またその内側には

   数え切れない色糸が交叉して

   花のいろ、匂いが消えないまま

                   作者不明

他に使用した花◆風船かずら、ハートカズラ


カフェ・ド・フロールの黄金時代

2009-10-07 | book

著者クリストフ・デュラン=ブバルは、フランス「カフェ・ド・フロールの」最盛期を築き、名経営者であったポール・ブバル氏の孫である。
店に訪れた人々のエピソード、祖父の経営でひときわ輝いたカフェ・ド・フロールを語り、
そこに様々な人生があった黄金期の時代へ導いてくれる。1998年 中央公論社

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1884年。カフェの建物に記されている年号である。
作者の祖父ブバル氏は1938年にフロールのオーナーになった。 
青年の頃はカフェレストラン「 屋根の上の牡牛」で働いていたという。

ここに訪れたアポリネールは毎日のように訪れては友と議論を交わし、前衛機関誌「ソワル・ド・パリ」を発行していた。
そして詩人のフィリップ・スーポー、また後にはアンドレ・ブルトンもフロールを訪れている。

時代は戦争をはさみフランスは激しく変化している。
若者たちは夢を語り、新しい芸術を創っていくエネルギーに満ちていた。
文化の華は開きサンジェルマン・デ・プレはその中心地となってゆく。

ピカソも古くからフロールに来ていた一人であり、サルトルとボーボワールが2階を
自分達の応接室のようにしていたという有名なエピソードをはじめとして
画家、詩人、音楽家、舞踊家、映画関係者、評論家、編集者、政治家、
そして他国の王女…と名が知られる人々がここでくつろぎ潤う時間のながれに身を置いていた。

そしてブバル氏の経営を支えたギャルソン(ボーイ)、パスカルは有能な従業員で
教養と節度ある人物であり全顧客から絶賛され、周囲の信頼を得ていた。
時を経て、のちに彼からの感動的な手紙でブバル氏はパスカルとの永遠の別れを知る。

マスコミは、時代を作る地としてサンジェルマン・デ・プレを取り上げ、フロールの店先では映画の撮影も多くなっていく。
ジャン・コクトーの映画「オルフェ」の詩人のカフェはこのフロールをモデルとし、ルイ・マル監督の「鬼火」もここで撮影された。

時代と人は動き続ける。
フロールは1968年の5月革命の喧騒を聞き、有名・無名にかかわらず多くの人々が去来し、
思いがけない事件や忘れらない出会い、ドラマがここに舞い込んだ。
ブバル氏は、自分の時代に心地よいテーブルを求めてやってきた客への愛着を胸に1985年、次のオーナーへこのメゾンを任せた。

伝統の慎みと栄光の輝きを多くの人々にもたらした「カフェ・ド・フロール」は、精霊(人間をさす)が
そこに入れば誰もが王子であり、友人であると著者は最後に結んでいる。


ブラッシア

2009-10-06 | Flower

Burassia

黄色に茶の斑がある小さなランは
正式名「ブラッシア・エターナル’サマードリーム’」という。
スパイダーオーキッドとも呼ばれ蜘蛛のすがたを思わせる。

異様でありながらもランの造形的な不思議さは興味が尽きない。
2輪一緒についているが、細い花の先を手まり草に這わせれば
一瞬にして動き出す蜘蛛に変化する。

初夏から秋に咲く高山性のラン。

他に使用した花
手まり草、ピンポン菊、ブラックベリー、姫りんご、縞フトイ、ナルコラン、ユーカリ


ユーカリのガーランド

2009-10-01 | Flower

Yukarigarland
ユーカリの葉で作ったガーランド。
ガーランドとは花や葉をロープ状にしたもの。
使用した葉は「ギンマルバ・ユーカリ」で
葉に白い粉がかかったように見えるシルバーの色が美しい。

ユーカリはギリシャ語で「ユーカリプタス」といい
Eucalyptsは(eu =well) と(kalyptos=Covered) で「よくおおわれた」の意味で
オーストラリアのブルーマウンテンはユーカリにおおわれた森が
木から発するガスで青く見えるためこの地名がついたという。

原産はタスマニアで多くがオーストラリアで栽培されている。
種類はおよそ800種以上あるとされが
オーストラリアの森は淡い銀青色に今日も輝いているのだろう。

使用した葉は高さ40cmのユーカリを4本で作成した。

花言葉◆慰め、追憶、思い出