南フランスのヴィルフランシュに建つ瀟洒な
Hotel Welcome。
地中海に面したリゾート感いっぱいのホテルだ。
ジャン・コクトーはこのウェルカム・ホテルに1926年頃からしばしば滞在していた。
写真はホテルのために描いたデッサンをもとに作られたプレート2枚。
大皿 バウシャー Baucher(ドイツ)
小皿 リリエン Lilien(オーストリア)
制作年・枚数、いつ頃まで使用されていたのか不明だがプレートには1957年と記されている。
ウェルカム・ホテルについてコクトーは『存在困難』でこう述べている。
ホテル・ウェルカムはひたすら魅力的であり、恐れるものは何一つないかのような外観を呈していた。
「幽霊屋敷について」より
夏の雲
刻々と形を変えて流れる夏の雲。
澄んだ空に自然の偉大さを誇るかのように突然目に映ることがある。
雲は灰色がかり縁は明るく輝いている。
美しいが何か不安を感じさせるのが夏の雲だ。
ざわめくものを胸におぼえながらそれが何のためなのかつかむことが出来ない。
雲から目を離せば日常の風景がある。
しかし人も自分もうつろい、音も声もない陽炎のような風景に変化した感覚になる。
夏の雲は時に不思議な意識を呼び起こす。
宮島はその昔、島全体が神とされた神聖な島であった。厳島神社が海水の満ち引きする入り江に建てられたのは御神体に杭を打たないためだといわれる。現在の規模になったのは仁安三年(1168)に平清盛によって造営された。
海にそびえる高さ16mの大鳥居は荘厳で優美。この特異な景観は島への畏敬の念と海を守る象徴のようにそこに建っている。
(左)干潮の大鳥居(9日午前10時半頃)
(右)潮の大鳥居(9日午後6時半頃)
鳥居の屋根の左側(西)には「月」が描かれ、右側(東)には「日」の文様が金色で描かれている。
屈折する廻廊はいずれも長さが異なり、青銅製の灯篭が釣られている。
何本も立ち並ぶ赤い柱も見どころのひとつであり、廻廊に海の風が心地良く吹き抜ける。
8月10日は「四万八千日観音大祭」であった。知らずに9日に行ったので他のスケュールを変更して10日にもう一度訪れた。この日に参拝すると四万八千日分の功徳をいただけるといわれる。
近くにある千畳閣(豊国神社)の内部。
天正15年(1687年)、豊臣秀吉が建立した桃山式の
大経堂である。未完であるがその素朴さがかえって
豪壮なスケールを感じさせる。
ここでは腰をおろして体を休めたが、弥山(みせん)の
山頂を見上げると今でもこの島には多くの神様がいるのだと実感させられた。
太古から人々に崇められてきた宮島。世界遺産に登録された価値は世界に通じる。宮島は歴史を刻みながら訪れる人々を包み、瀬戸の海は太陽にきらめいていた。
一枚の紙にはさみを入れてその手が動き出すと野山に生きる昆虫や花、鳥などが出来上がる。
何でもないたった一枚の紙がいのちを持つ驚き。
今森氏は野山の自然を撮る写真家である。
その風景には人の手に触れていないあるがままの木がそよぎ、水が流れている。
そこに生息する昆虫、花、そして動物に至るまで彼ははさみ一本で紙を変身させる。
その技術は目を見張るほどの見事さだ。
小品から大作まで、細かい観察眼とイマジネーションがあるからこそ
昆虫の動きや細密画のように表現できることが見る者に伝わってくる。
今村氏は自然に生ける者と一体となり
はさみによってもうひとつの自然を創り出す切り紙作家でもある。
現在日本橋三越で個展を開催中(8日まで)