どこに私の根はあるのか
どこから私は根なし草になったのか
差し向かいでパレスよ私に言ってくれ
そうして私が逃げたがっている
家族はとジッドよ言ってくれ
地上は結局私の祖国ではないのだ
そしてどんな先祖伝来の化学から
私のインクが生まれ
不器用にも私がともにととのえようとする
言葉を誰が私に語るのか
知りたいのはやまやまだ
残念 私は行方しらず波まかせ
海の漂流物 空瓶だ
(注)パレスはフランスの作家モーリス・パレス。コクトーの若き日に親交があった。著書に『根なし草』がある。
『鎮魂歌』第四期より抜粋 井上輝夫 訳
コクトー最後の詩集となった『鎮魂歌』は1959年から書きはじめた。
70歳の時である。彼の作品「人間の声」の舞台演出の最中に喀血し、
医師から絶対安静を言い渡されたコクトーがベッドで書き綴った詩であった。
死を意識したこの詩集は、「詩人は病気に挨拶する」という
始まりの第一期から「碑銘」で終わる第七期にわたる壮大な詩で
コクトー自身の回想であり遺言ともいえる作品となった。
詩の中で夢や神話、幼少の頃、天使、ミューズのイメージに自分自身を重ね
生と死を織り込んで書かれている。
自分の生涯を綴り、のちの時代に続く若者への伝言を織り込めながら。
異端の建築家、あるいは日本のガウディの異名で呼ばれる梵寿綱氏が手掛けた建築。
細部にいたるまで施された装飾は、血の通った人間に呼応するように生命感にあふれている。
ラポルタ和泉
京王線の代田橋駅から北に5分ほど歩いたところに建っているが
住宅街の中なのでひときわ目を引く。
正面入り口には大きな女神のレリーフ。
金の炎とステンドグラスがまわりを囲む。
左は女神像の裏側。右は吹き抜けで天井にもステンドグラスが。
ペガサスが空に向かうように。
(電線が。。)
エントラス部分とエレベーターに通じるヌーボー風の扉。
ラポルタ和泉から同じ道をまっすぐ歩いて行くと、もうひとつの建物マインド和泉にたどり着く。
マインド和泉
左右対称でありながらモザイクのように立体感のある外壁が美しく
周囲との調和も違和感のないたたずまい。
正面のステンドグラスを中から見ると緑色ガラスと線の組み合わせがさわやか。
外壁は整った装飾で、まるで絵本に描かれている建物のようだ。
エレベーターへと続くエントラスは白の壁に波打つ階段。
階段の角に飾られたアンモナイトのような模様が美しい。
エントランスホールから中庭に通じる廊下。
天井には天衣のような装飾。
細部もまるで絵を描くように飾られている。
中庭。光が色や模様を浮き立たせる空間。
仕切りも床も幻想的。
梵j寿綱氏の、人と住まいが一体化することの願いが込められたような建築から
胸に響いてくるものはとても多い。