日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

宇野亞喜良さんのカレンダー2020

2020-03-15 | 宇野亜喜良

今年の宇野亞喜良さんのカレンダー。
表紙をはじめ、月ごとにイラストに詩が添えられ
どの月もレイアウトのセンスが素敵で
文学的であり、夢を誘う嬉しいカレンダー。




1月のイラスト 詩「私はロバを好きだ」フランシス・ジヤム


8月のレイアウト 「バラード」から
ジャン・コクトー、ピカソ、エリック・サティの文字


11月 「甲冑」ジャン・コクトーの詩
2枚重ねで下の紙にはイラスト、そして上のグラシン紙に詩が。



詩はマリー・ローランサン、ツルゲーネフ、レミ・ド・グールモン、
ジャン・コクトー、ジャック・プレヴェール、寺山修司など。


麻布十番納涼まつり 2019

2019-08-25 | 宇野亜喜良




不安定だった天候が夏の暑さに戻った24日(土)と25日(日)に
今年もにぎわった麻布十番まつり。

宇野亞喜良さんのうちわを手に歩いて
今年はお祭りの雰囲気を少し味わってみた。
人であふれた商店街は、なぜか夏が舞いキラキラしているようだった。

商店街の街灯を宇野さんの旗が飾る。
今年はアリスをイメージしたデザインとのこと。
スプーンを持つ小さな少女もかき氷の中で涼しそう。



シネマ歌舞伎「天守物語」とトークイベント 東劇

2019-07-07 | 宇野亜喜良

歌舞伎座で上演された「天守物語」をシネマで上映されている昨日、
宇野亞喜良さんと山本タカトさんのトークイベントがあったので
東銀座にある東劇へ見に行った。


泉鏡花屈指の作品のひとつといわれる「天守物語」。
そのめくるめくような鏡花の文を
現実にその人となって坂東玉三郎丈が気高く演じた鏡花の幻想。

玉三郎さん演じた富姫と、市川海老蔵さんの姫川図書之助コンビのこの作品は、
2009年(平成21)の歌舞伎座での上演を
実際に見て感動した記憶は今も鮮明に残っている。

そして宇野さんと山本さんが挿絵を手がけた本「天守物語」は
2016年(平成28)に刊行され
当時、お二人のサイン会があり、同時に挿絵の展示会が素晴しかったのが
昨日のような気がする。

トークショーでは同じ場面の2人の挿絵を
それぞれどのように描いたか解説してくれる趣向で
物語から受けたイメージと、製作法を聞くことが出来て
とても興味深いものだった。

スクリーンで歌舞伎の舞台を鑑賞、
そして宇野さんと山本さんのトークを聞いて。
なんとぜいたくな時間。

定本 薔薇の記憶 宇野亞喜良

2018-10-28 | 宇野亜喜良



1968年から2013年までの45年の間に
宇野さんが書いた「定本 薔薇の記憶」は
今まで歩んできた様々な記憶に彩られたエッセイ集。

冒頭は『俳句四季』よりイラストとともに12句が紹介されている。
魔境に棲める少女や王。

そして仕事をはじめ、美術、映画、風景、出来事などを
詩人のまなざしのように見つめ
時にはそこに秘められている哀しみも見いだしている。
また時にはユーモアの視点が光ったり。

うつろう季節や風景から
何かを掴み、イメージを広げられる宇野さんの美意識。
同じ情景を見て、何を感じるのか、感じないのか、
それが個性を作っていくのだと、読み終えて改めて感じさせられる。

少年時代の体験も含め
宇野さんがたどってきた時代の空気。
私たちが知り得ない文化を幅広い知識と感性で語っている。

そしてここに書かれている「ステンドグラスへの郷愁」は
1983年から2年間にわたって発売されたAD ARCHITECTURAL DIGEST JAPAN
(アーキテクチュラル・ダイジェスト・ジャパン) に
確か15回の連載で、宇野さんが日本各地のステンドグラスを紹介していた。
クオリティの高いインテリア雑誌だった。
毎号買っていた訳ではないが宇野さんのその切り抜きは
今も大切に保存している。


Project Nyx の「星の王子さま」

2018-09-22 | 宇野亜喜良

東京芸術劇場で昨日、千秋楽を終えた「星の王子さま」を
私は宇野亞喜良さんの舞台美術観覧ツアーがあった9月18日(火)に見てきた。



寺山修司の「星の王子さま」を金守珍さんが演出したこの舞台、
メルヘンとアングラを蒸留酒で混ぜたような寺山スピリッツに満ちていた。

あるホテルにやって来たオーマイパパ(男装をした父親)と娘の点子。
そのホテルは人工の星々がきらめく元売春宿だった。
女主人ウワバミは
星の王子様を愛し、顕微鏡で空を見上げては「見えないものを見る」ことに没頭し、
醜いものを見ない、と現実から目をそむけている。

点子は「見えるものを見ない」と反論するが
ウワバミは、紙クズが星に見えるか、紙クズに見えるかと強制的に
点子を「見えないものを見る」ように迫る。

いっぽうオーマイパパはホテル内で行き合わせた修理工に
実は夫を殺し、男装をして逃げていることを暴かれてしまう。

虚構を装ってもその裏は醜くもある、という現実。
寺山修司は「見えるものを見る」という現実、あるいはその残酷さを
メルヘンの中に込めたのだろうか。

このホテルには不思議ないくつもの星が住んでいた。
召使いのヒツジ星
尾ひれをなびかせる人魚星
黒色すみれのメロディ星
そして妖しく大胆な五大星。
まさに劇場が寺山星にきらめいた。

星の王子様と薔薇の少女の人形は
やはりロマンチック。浮遊し、一瞬の幻想のように星の彼方へ消えていく。

楽しみにしていた宇野亞喜良さんの舞台美術は
濃いピンクを基調として、おとぎの国のようでいてアンニュイ。
インモラルなこの物語をより効果的に見せ、異空間へと誘われた。




麻布十番まつり2018

2018-08-28 | 宇野亜喜良

8月25日(土)~26日(日)の2日間は麻布十番の納涼まつりだった。
午後3時から始まり、人出がだんだん多くなって商店街は大賑わい。




    江戸から いまへ続く なつまつり

宇野亞喜良さんのうちわに書かれたコピーと
糸電話で江戸と現代を結ぶイラスト。
時代を糸電話でつなげるセンスが素敵。

うちわが欲しくて今年も出かけた。
そして人混みを避けてすぐに帰るのも毎年のことだけれど
今年の暑さは格別。
小さなジェラートだけ食べてすぐに場所を移動した。

商店街の街灯には宇野さんの旗が。
地元民ではないけれど、毎年うれしさを感じる光景。

 


美女劇「奴婢訓」 東京芸術劇場

2018-03-16 | 宇野亜喜良

2006年から公演を続けているProject Nyxが手がけた寺山修司の作品「奴婢訓」を見てきた。
当時、この作品はオランダ、ベルギーからロンドンへ巡演し、絶賛されたという寺山の代表作。



客席に入ると目に入る舞台装置。流れるチェロの旋律。
やがてライトが変わり、パントマイムの赤いあやとりの糸は赤いロープに変化して
ダンサーの官能的なパフォーマンス。
そして豆電球を操りながら次々と出演者が客席から舞台へと。
妖しく耽美な物語が始まった。

主人不在の館で召使たちがそれぞれの主人に変身し、
タイムリミットになるまで玉座をめぐってバトルを繰り広げる。
寺山らしいアングラにレビューをミックスしたような
大胆、華麗な舞台は果てしなく―。
しかし時間が来ればという現実に戻る。
つかの間の夢。
いつか終わる夢。
ラストも鮮やかな盛り上がりで見応えのある舞台は終わった。

この公演は金髪姿がキュートな水嶋カンナさんの構成。
奇想天外な舞台は圧倒的でもう一度見たいと思う公演だった。
白いドレスの佐藤梟さんの存在感も印象的。
そして耳に残るほど感動的だった黒色すみれのバイオリンと歌声。

私が見た日は13日(火)だったので、終演後に舞台装置の内覧会があった。
宇野亜喜良さんの舞台美術を楽しみにしていたが
玉座を中心に、中世と日本の和をミックスした摩訶不思議な雰囲気。
この時は撮影が可能だった。

舞台全体


宇野さんのオブジェ。テントのそばに馬、そして顔が彫られた館。
 

「2ひきのねこ」出版記念原画展

2017-12-24 | 宇野亜喜良

ももちゃんとぼくの幸福な日々は、ずっとずっとつづくと思っていたー。



ボンボンの寂しくせつない思いが宇野さんのイラストでつづられた絵本。
カフェ・アンニュイではコクトーとピカソも登場させ
ももちゃんと2ひきのねこは幸せなお茶を味わっている。

宇野さんの原画はどの絵も優しい色調。
ねこは言葉を持たないけれどボンボンが少女に語りかけるせつない物語。

本を開くと可愛いブックマークが。


宇野亜喜良さんの表紙 エドガー・ソールタス短編叢書

2017-12-13 | 宇野亜喜良

アトリエ空中線の造本で宇野亜喜良さんのイラストが目を引いた
アメリカの作家エドガー・ソールタスの短編3冊。



『紫と美女』全7巻の中から発表されたこの3冊は
「アルマ・アドラタ」第2巻
「太陽王女」第3巻
「サロンの錬金術」第6巻

表紙を開くと同じ絵の蔵書票が貼られているのが嬉しい。
正方形の造りも気に入っている。



豪奢なサロン、優雅なディナー、紳士と美女…
そんなイメージを背景に、宿命ともいえる頽廃的な愛が描かれ
アメリカの作家でありながらヨーロッパの幻想を思わせる。
美と虚構、そしてデカダンの三位一体ともいえる珠玉集。


宇野亞喜良展 「メルヘニズム」 六本木ヒルズ

2017-09-22 | 宇野亜喜良

明後日の24日まで開催中の宇野さんの「メルヘニズム」展を見てきた。
今回は4つの童話を中心に宇野さんの世界感がただよう原画が多く展示されていた。



どの絵もやはり幻想的で
色彩が美しく、コラージュの要素も素敵で1枚の絵から離れるのが惜しかった。
そして見果てぬ夢を見る思いがしたオブジェの素晴らしさ。
アートショップでは宇野さんのスカーフや書籍なども販売。
トランプは今回の絵画展の絵でデザインされた2パターンの発表。

ギャラリー入り口のディスプレーから。
 


麻布十番納涼まつり2017

2017-08-30 | 宇野亜喜良

8月26日~27日の2日間の麻布十番のお祭り。
午後3時から始まり、次第に人も増えてブラスバンドの音楽も聞こえてきた。

宇野亞喜良さんのうちわ。今年のデザインは「ペーパームーン十番版」


1930年代のアメリカを舞台にした映画「ペーパームーン」は
ライアン・オニールとテータム・オニール親子が共演した映画。

テレビで見たが、9歳のテータム・オニールが大人顔負けの知恵を働かせ
そして可愛らしく、最後はじーんとする愛情で終わるロードムービー。

宇野さんは「ペーパームーン」のポスターのように月に少女を乗せ、
フリルのえりや足にアンクレットをつけ、浴衣の帯はリボンのように飾って
麻布十番のお祭りに花を添えた。


マジョリカのギフトボックスと今年のイヤープレート

2017-01-12 | 宇野亜喜良

宇野亞喜良さんイラストで作られたマジョリカマジョルカのギフトボックス第2弾目は
昨年11月に限定発売され、猫がテーマになっている。


箱の表は少女が風船を持ち、まわりにはユニコーンや風船に吊られた猫などが描かれている。
淡い色調の優しいボックス。

そして2017年、今年の宇野さんのイヤープレート。
昨年末に新宿伊勢丹で開催された「絵本の城」展の会場で購入。


猫が少女と同じポーズで描かれているのが愛らしい。


栃の木と 柳田國男 「遠野物語」 より

2016-12-04 | 宇野亜喜良

「遠野物語」は山形県の遠野に伝わる妖怪や精霊などの不思議な出来事を
柳田國男が遠野郷で聞いた話をまとめた伝承譚。
宇野亞喜良さんの挿絵でECRITから「栃の木と」が発売された。



栃の木に毎日のように寄り添っていた美しい少女は
船を作るために伐られることになった栃の木の話を聞き悲しみにくれていた。
川に流された木を追い、桐壺の淵に飛び込んだ少女。
晴れた日には川底に羽がはえたような木が見えたという。



木と少女の悲恋を語った言い伝えだが
樹木には精霊が宿り、また神の依代とされる日本の伝承として
人々が樹木へよせる敬虔な思いを感じる逸話。
宇野さんの絵は木に寄り添う少女が水のゆらぎに漂うように描かれている。


「かもめ」或いは寺山修司論2016  芝居砦・満天星

2016-10-23 | 宇野亜喜良
墓地の脇を通り、たどりついた芝居小屋は階段を降りて、降りて…。
次第に過去へとタイムスリップしていくような階段だった。
異空間で見るひとつの物語。
それはマジックにかけられながら見た切ない大人のメルヘンだった。

今回の「かもめ」は、寺山修司がダミアのシャンソン「かもめ」をもとに書いた小説から
金守珍さんの演出でProject Nyxの旗揚げ10周年記念として2016年度版の上演なのだという。




船出する水夫と彼を愛する少女。
水夫が帰ったら結婚をするという約束をし、お互いに想いながらも
その約束は果たされず、少女の運命は過酷な最後へと向かっていく。
そして揺れる波の上を
かもめはいつまでも悲しげに飛んでいるのだった。

舞台は水夫と少女の朗読から始まる。
物語の進行とともに波のオブジェが動いたり
スクリーンに宇野さんの絵が次から次へと写し出される。

少女は海をみつめながら帰らぬ水夫を待つが
水夫は帰るお金もなく貧しさに負け、着いた波止場の女性と結婚してしまった。
帰りを待ちこがれ、傷心の日々を送る少女。
少女は海で舟をこぐ。
宇野さん製作の少女を出演者が操るのだが
純情な思いから痛々しさが伝わってくる舟の場面である。

寺山の「ポケットに名言を」から
マリー・ローランサンやアンドレ・ジッド、ジャック・プレヴェールなどの言葉が積まれる。
そして、寺山の「なみだは人間が作るいちばん小さな海です」も。

三大美女の楊貴妃、クレオパトラ、小野小町も登場。
それぞれのダンスは華やかで官能的。
黒色すみれのデュオはノスタルジックで、どこか儚く
やはりメルヘンには欠かせない存在。
劇場をメルヘンにしてしまうオーラが舞台に特異性を生み出す存在だ。

ラスト、少女は思わぬ不幸に見舞われ
水夫の帰りを待ちわびていた少女の運命は無残に引き裂かれていく。
球体関節人形のように作られている宇野亞喜良さんの人形。
少女は青い海の底へと沈んでいった。
 
海で死んだ人はかもめになるという。
かもめはその悲しみを翼にのせて
海の上をいつまでもいつまでも飛んでいた。

映像、人形、朗読、舞踊、そして音楽を融合させ
舞台は、時には海、時にはどこかの大広間、
時には時間のない町のようなめくるめくメルヘンの舞台だった。

私が観劇したのは昨日22日(土)の夜の部。
物語が終ってから「黒色すみれミニコンサート」があった。
メリーゴーランドのような夢の時間。
(ここからは撮影可能となった)

 

黒色すみれのスカートは宇野さんが描いた絵が。
すみれの花、魚の少女や青い文字が流れるように書かれているすてきなデザイン。


女性だけの出演者がそろって、撮影のためにポーズをしてくれる嬉しいサービスもあった。