大正ロマンの名残り、旧朝倉家住宅は東急東横線の代官山駅から近いヒルサイドテラス裏にあり、
関東大震災、太平洋戦争の焼失を免れ、今にその姿をとどめる。
大正6年(1917年)朝倉虎治郎によって建設され、平成16年(2004年)に国の重要文化財に指定された。
朝倉邸のほとんどは和室であるが接客のための洋室が一室ある。(右の写真)当時は板張りで、天井は折上格天井(おりあげごうてんじょう)の意匠が凝らされた。
建設当時は、来客など正式な接待をする部屋は書院造りの意匠にするのが習わしだったという。 他に数寄屋風に造られた部屋などもあり大正建築の美が至るところに息づいている。
2階へあがった場所から庭のほうを見る。
右は「板目」で飾った部屋で枝に百舌(もず)が止まっている絵が描かれている。
庭園は回遊式庭園で斜面を生かし、起伏に富んだ地形に豊かな自然がある。
朝倉家は個人邸宅であったが、最近まで「渋谷会議所」として実際に使われていた。2006年より渋谷区が管理している。
朝倉家は享保・元文年間(1700年代)に渋谷に定住し、明治2年に精米業を営み発展してきた。
虎治郎は東京府議会議長、渋谷区議会議長を歴任した人であり、材木店で働いていた経験からこの邸宅を建てる際に使用する
木材を自分で選んだ。
ファッション地区としてにぎわう代官山の中心地に静かにたたずんでいるが
震災や戦争の騒音を聞いて時の流れを刻んできた旧朝倉家住宅。貴重な遺産である。