それは挫折を味わい、失望を繰り返しながらも夢に向かっていく時期にめぐり合った恋さえ
思うようにならなかった青春への懐かしさとほろ苦さを残す映画「LA LA LAND」。
道路は車の渋滞でその車から皆が出てきて歌い踊るシーンから始まる。
この街は夢を叶えようとする人々が集まる街。
女優を目指すミア(エマ・ストーン)もカフェで働きながらそんな夢を追う女性だった。
ある日、ふとピアノの音色に引かれて場末の酒場に入ったミアは
そこでピアノを弾いていたセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会う。
彼も自分でジャズの店を持ち、そこでピアノを弾くことを夢みていた。
お互いの夢を尊重しながら愛し合うようになり、セバスチャンと暮らすようになるが
店を持つために夢とは違う音楽でお金を稼いでいる彼と意見が合わずミアは実家へ帰ってしまう。
月日は流れ――、女優になったミアは夫とバーへ入る。
そこでピアノを弾いていたのは、自分の店を持ったセバスチャンだった。
客席にミアを見つけたセバスチャンは、ふたりの思い出の曲を弾き始めた。
しかしそれは叶うことのなかった愛の淡い幻想でしかなかった。
まだ31歳という若きデイミアン・チャゼル監督が色彩豊かに歌とダンスを織り込み
血が熱くなるようなジャズの音やタップダンス、バラードも含め
現代でありながらどこか郷愁を感じさせる映画だった。
個人的にはプラネタリウムの星の中で舞うふたりや
「パリのアメリカ人」を思わせるラストの群舞のシーンが気に入っている。
そして帰ってきてテレビで見たアカデミー賞。
主演女優賞、監督賞、美術賞、撮影賞など6部門でオスカー像を獲得した「LA LA LAND」。
最後の「作品賞」で「LA LA LAND」が呼ばれ
最高に盛り上がったと思ったら大失態が映し出された。
「LA LA LAND」ではなく、手違いで本当の作品賞は「ムーンライト」だと発表された。
テレビの前であっけにとられてしまったが
主演女優賞のエマ・ストーンは「ムーンライト」は賞に値する作品だと言ったという。
前代未聞のハプニングだったが
チャゼル監督が描いた夢を追う人々への熱いエールともいえるこの作品は
明日を信じて進む情熱がかけがえのないものだと語っているようだった。