ジャン・コクトーが「ポトマック」を書いたのは1913年~1914年(コクトー25歳)であったが
第一次世界大戦が始まったため、遅れて1916年にこの世に出ることになった。
訳者の澁澤龍彦は大学を卒業した一年後にコクトーの一語一語を自分の言葉に変えていたと語っている。
1969年 薔薇十字社発行
「ポトマック」は小説であるが物語らしい内容はなく
コクトーがノートに書きためていたものを1冊にまとめものがこの本の誕生となった。
コクトーのデッサンによるウジェーヌたちは、人間のあらゆるところに入りこんではその精神を食べる存在として登場する。
この頃のコクトーは苦難の時であり自己変革を強く意識していた 時でもあった。
そして「見えざるもの」が突然ペンの先に現れる。
それはウジェーヌの姿を借り、過去の自分から脱皮するコクトーの内的改革の願望であり欲求でもあった。
この小説はその後のコクトーが自分の存在意義に用いた「死と再生」がすでに表れており、
青春期の迷いから進むべき方向の道しるべともなる作品となった。
「それは1冊の本ではなくて、序文であることがわかった。一体何の序文やら?」
「ポトマック」より