「奇蹟の画家」と呼ばれる石井一男さん(神戸在住)の個展を心待ちにしていた。
静かな暗がりで、ろうそくの灯りに照らし出されたように浮かび上がっている女性の絵は
語らずして心を揺さぶるものを秘めている。
石井さんがぎりぎりの生活の中で、
自分が生きている証として日々描いたそれらの絵は、神戸「ギャラリー島田」の島田誠氏によって
「女神」と名づけられた。
無名だった石井さんの絵は島田氏との接点によって
多くの人々に感動をもって知られることになった。
それでも石井さんの生活は以前と変わることなく無欲・清貧な日常だという。
少しの時間、石井さんとお話をさせていただいた。
誠実そうな人柄そのままの優しい笑顔で接してくださるその清潔さに
自分を省みる瞬間が何度も胸をかすめた。
そしてそれは同時に私にとって宝物の時間になった。
「女神」たちを見て心が浄化された気持ちと、どれほど清らかに生きてきただろうと思わせる
石井さんを思い浮かべ、ギャラリーを出た細い路地で目頭が熱くなる思いがした。
石井一男さんの画集
「絵の家」
「絵の家のほとりから」
「女神」
いずれも島田ギャラリー発行