日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

シス書店で見た宇野亞喜良展「5月の歌」 渋谷区恵比寿

2013-05-31 | 宇野亜喜良

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すでに今月26日で終了したが、ジャック・プレヴェールの詩
「5月の歌」による宇野亞喜良さんのイラスト展を見に行った。

LIBRAIRIE6シス書店は蔦の絡まるアパートにあり
中に入るとアート作品が心地良く配列されている。

入り口を入ると宇野さんの「ロバと王様とわたし」の絵に
プレヴェールの詩集が置かれていた。
そして「5月の歌」による絵画や今年製作のオブジェが
時を止めるようにそこにある。
風船、馬、お城、マンドリン・・・。
描かれた少女のそばには遥かな夢がめぐっている。

書店でありギャラリーでもある店内は、中央に植木があり
そばの椅子でアートをゆっくり見ることも出来る。
ここは特別な時間が流れるところ、ミステリアスにしてアバンギャルドな場。


前髪ギザギザ

2013-05-28 | こけし

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まん丸頭に前髪ギザギザのこけしは
鳴子系(本庄)の菅原修工人の作品。5寸。


菅原工人は1971年(昭和46)から鎌倉で修行をし
昭和53年に秋田へ戻り、そのまま修行を続けて
58年から本格的にこけしを作ったという。

頭の丸みが何とも可愛らしく
眠たいのかぼんやりしているのか・・・。
そんな表情も気に入っている。

 


芍薬(黄色)

2013-05-26 | Flower

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蕾から花びらが1枚ずつほぐれるように咲いた芍薬。
中心が赤いこの芍薬の名はオリエンタルゴールド。

芍薬は平安時代頃に中国から渡来した。
別名「顔佳草(かおよぐさ)」と言われるように
麗しい女性の表現にたとえられ、
また「花の宰相」と呼ばれるにふさわしいあでやかさだ。

古代ギリシャでは畏敬、信仰の念をいだき
魔除けの花として尊重されていたという。

あけびの籠にどうだんつつじ、泡盛草の葉、枯れ木を配して。


百花繚乱―花言葉・花図鑑―(後期) 山種美術館

2013-05-22 | 絵画

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春の季節にふさわしく、古くから描かれた春夏秋冬の花の絵画展が山種美術館で開催されている。


四季折々に彩る花は絵画や文学、工芸にいたるまで
多くのモチーフとなって人と密接に関わってきた。
そして花は単なる意匠としてではなく
時には詩歌とともに思いを秘めた伝達としても扱われてきた。

作者がさまざまに描いた作品からは草木や鳥をいとおしく見つめた眼差しがある。





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菱田春草
「桜下美人図」
(明治27年)

秋の菊と対象になる春の花といえば桜。
三人の美女が桜の下で楽しそうに笑っている春のひととき。










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奥村土牛
「吉野」
(昭和52年)

静かであり、穏やかであり、
この時こそ人を季節に目覚めさせる桜が吉野の山を包むように。




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狩野芳崖
「芙蓉白鷺」
(明治5年頃)

 

細い葉と白い芙蓉の花を右に配し、白鷺が上を向いている。
水を飲んでいるのか、飛び立とうとしているのか。
現実でこのままの情景を見てみたいと思う。












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西田俊英
「華鬘」
(昭和58年)

 ガンジス川で荼毘にふされていた花々を曼荼羅のように描いた作品。
印象に残った絵で、中央の百合が召される人へのはなむけに思えた。
そして鳥を囲む多くの花が重なり合い幻想的な世界が出現している。




繚乱と咲き競う絵画の花。四季を通じて人と呼応し合う動植物。
それらは今、山種美術館の空間で6月2日(日)まで咲いている。               


ジャーマンアイリス(白)

2013-05-18 | Flower

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良い香りが漂う白のジャーマンアイリス。
縁がうねる華麗な花びらは、まるでレースか羽根のようだ。

このジャーマンアイリスは別名ドイツアヤメ(独逸菖蒲)ともいうが
アイリスを数種類交配させて誕生した品種である。

アイリスはギリシャ神話の「虹の精」で
ゼウスとその妻へーラーの使者であり、
七色の衣をまとい天空に弓形の橋をかけて渡ったといわれる。

アイリスには様々な色があるが、
その色彩をイギリスの園芸史家P・コーツは次のように詩的な表現を残している。

「晴朗な空色、雷の来そうな紫、日の出前の淡黄色、暮れなずむ桃色など
空の色はほとんど現代アイリスの花びらに映されている。真紅がないだけである」

球根から咲かせたので、と2本頂いたこのジャーマンアイリスの白さと香りは
気高くもあり、また複雑な形状が花の美しさを際立たせている。
1本から5~6輪咲くが、いっぺんに咲かず1輪ずつ開花していく。


岡本太郎記念館 港区南青山

2013-05-16 | 絵画

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青山の骨董通りを入ると青い旗と芭蕉の大きな葉が見える。
画家・岡本太郎が1953年(昭和28)~1996年(平成8)まで住んでいた家である。

周囲はブティックやレストラン、商業ビルなどが多いが
緑が茂る記念館は入り口を入ったとたんエネルギーを発する別天地へ
私たちは吸い込まれる。






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1 階のリビングルーム

個性的で鮮やかな色彩なのに心地良いスペース。
椅子に置かれた太郎と敏子さんの写真が来訪者を迎えてくれる。




画家のアトリエを目にすることが出来るのはとても貴重。
太郎が瞬間の思いを絵に託したその作品が多く並ぶ。
現在は「明日の神話」に原発事故を連想させる絵を貼りつけたアート集団に
岡本敏子さんの甥であり、記念館の館長である平野暁臣氏の理解によりコラボレーションを開催中。

アトリエにはピアノも据えられている。
太郎はピアノも得意だった。作業の合間に弾いていたのだろうか。
 

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記念館を入るとすぐに目につく「若い太陽」と
「坐ることを拒む椅子」



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                                               (右)「歓喜」の鐘

                                               太郎が両手でこの鐘を叩いていたシーンは印象的だった。


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「午後の日」

力強くも天真爛漫な表情。
太郎の墓地も同じモチーフが使われている。

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                                                                                                (右)「犬の植木鉢」

                                                                              庭に植えられた植物も個性的で大胆。
                                                                              そんな中で振り向くようにこちらを見ていた。




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「海の門」

スチールで造られたオブジェ。
水が揺らぐような動き。


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                                                                                            (右) 「めばえ」

                                                                                ひときわ高いオブジェに芭蕉の花。
                                                                                太郎の息吹きが迫ってくるようだった。




異彩を放った岡本太郎の空気を室内でも庭でも感じられる記念館。
幼い時から生きることについて考えていたという太郎。
そして独自の道を切り開いた生き方。
ここに来ると、既成概念が足元からゆらぐような太郎の情熱と
生きざまを感じてしまうのだ。
この日も人がひっきりなしに訪れていた。
撮影可能という記念館の配慮も親切。


石の花 バーヴェル・バジョーフ

2013-05-07 | book

ロシアのウラル地方を舞台に、孔雀石が持つ神秘に惹かれた石工と山に棲む精霊との不思議な物語。
緑とも翠ともつかない美しい孔雀石。現世と幻の世が妖しく交錯して語られる。

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ひとりの若者、ステパンの前に現れた「山のあねさま」は
この世で見たこともない孔雀石の服を身につけていた。
鉱山を支配する孔雀石の精だった。
宝石に誘われて自分のもとへ来るかと試したがステパンは応じない。
その強い意志に感心した孔雀石の精は
暮らしが楽になる条件と宝石箱を与えた。
美しい細工がほどこされた数々の装飾品が入っている宝石箱。
その後、ステパンはナスターシャと結婚するが
幸せは続かず彼は若くして死んでしまう。

時は流れ、宝石箱はステパンの娘であるタニューシカの手に。
たったひとりの美しい少女にだけ合う装飾品。
美しさを放ちながら魔法の宝石箱は次々と不幸をもたらした。

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そして二人目の若者、孤児のダニールシコは
孔雀石の細工師として不思議な才能を備えていた。。
孔雀石の模様を生かしたものを彫りたいと日夜思いつづけるダニーロがある日聞いた不思議な話。

孔雀石の山で聖ヨハネの日に咲くという「石の花」
それは世にも華麗な石の花で不思議な光を放っているという。
ダニーロは自分を育ててくれた老人ポロコーピィチといいなづけのカーチェシコを残し
その「石の花」を見に森へと入って行った。

ダニーロを待つ冷たい孔雀石の精とカーチェシコ。
精霊にどちらかを選ぶよう迫られたダニーロは
美を求めながらもこの世に生きる人間であった。
悲しい結末に終わった精霊はふたりを祝福し、石に化身した。


この物語は作者の孔雀石への限りない愛にあふれ
また数々の石を幻想的な風景として取り入れている。
そしてベリューキンの絵が民話にふさわしく牧歌的に飾っている。

1979年 童心社 訳 島原落穂