日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

美女音楽劇 「人魚姫」 東京芸術劇場

2015-09-29 | 宇野亜喜良

寺山修司生誕80周年を記念して上演されたProject Nyxの「人魚姫」。
原作のせりふを変えずに上演された。



舞台が始まると、やはり寺山らしいアヴァンギャルドな刺激と
水にただようマルドロールや魚たちがゆらゆらと動く海底は
客席までも水中と化すような水の世界。

宇野亜喜良さん製作の船長とマルドロールの人形は古典的な姿。
人形と実際の2人が重なり、夢幻の世界が進行する。
宇野さんの舞台背景は
一幕がブルーの波に女性の横顔。
二幕は少女のまわりにクラゲやヒトデ、金魚の絵など。
そして衣装も宇野さんのデザインで目を楽しませる。

舞台は寺山のことばを散りばめながら
浄瑠璃の要素や見世物小屋のような雰囲気、
又、からくりを見せるような演出でもあった。
特に「海の魔女」の登場は、ねぷた祭りのらっせらーに乗って
東北の祝祭を盛り込んでいる。
魔女の姿もねぷたのように作られていて
この役を演じたフラワー・メグのせりふは一段と冴えてメリハリをつける。

佐藤梟の圧倒的な存在感、
舞台姿が美しい「船長」の元宝塚歌劇団の男役だった悠未ひろ、
「金魚」を演じた有栖川ソワレの可愛らしさ、
不思議な霧をふりまくような黒色すみれ。
舞台は次から次へと様々な要素を入れて寺山舞台をよみがえらせた。

船長への恋を果たせなかったマルドロールが人間の世界から海に戻るには
船長をナイフで刺せば、300年人魚として生きられ、
それが出来なければ海の泡となって死ぬ、というものだった。
その条件はマルドロールにとって何と残酷なものだったろう。
好きな船長のために
自分の愛を真実のものにするため
マルドロールは海の彼方に消えていった。

演出 藤田俊太郎 


人魚姫・王様の耳はロバの耳 寺山修司

2015-09-21 | 宇野亜喜良

寺山修司が「人形の家」という人形劇団のために書き下ろしたミュージカル。
1967年に上演され、その時の人形デザインを宇野亜喜良さんが手がけた。



人魚姫
海の中しか知らない人魚マルドロール。
ある日、難破して海底にただよっていた船長ジークフリートを助け、そして恋をしてしまう。
船長がつぶやいた「マリー」という人間のことばを初めて知ったマルドロールは
口がきけなくなるのと引き替えに海の魔女から「2本の足」をもらい
船長に会いに海の上へとあがっていく…。

船長のために犠牲をいとわず
マルドロールが一途に恋した船長はマリーと結婚する。
口がきけないため、自分が助けたことも言えない悲しいマルドロール。
叶わない恋の果てに彼女は海の泡となって消えていった。

王様の耳はロバの耳
ある時代、ある国にわがまま放題の王がいた。
そのあまりにも無謀なわがままぶりに神様から罰として
耳をロバの耳に替えられた。
民衆は王のわがままぶりを皆でうわさしている。
1人だけ王の秘密を知っている床屋は
本当のことを隠して嘘をついていることに悩み、森の木々に打ち明ける。
ロバの耳を持った王は本当のことが聞こえない。
強くても偉くても真実を知らない王は一番の不幸者。


本は見返しがグリーン、ページがミントグリーンの造りで
宇野さんと伊坂芳太良のイラストが童話の世界へと誘う。
この本は大切に保存していた中の1冊で
芸術劇場で現在「人魚姫」を上演中なので久しぶりに出してみた。
今や美しい本はあふれるほどあるが、
寺山の詩や60年代の宇野さん人形は今見ても可愛らしい。

1968年 新書館


宇野亜喜良展 東京国際フォーラム B棟1階

2015-09-17 | 宇野亜喜良

宇野さんの絵画展が有楽町の国際フォーラム1階にあるギャラリーで
開催されている。

初めて目にする絵画や、額の中に宇野さんの感覚で作られたオブジェなど、
どの絵を見ても
そこには夢がただよっているユートピアのように、見たことのないすてきな異郷へと誘われる。
ギャラリーの中央ではグッズの販売も。



チラシに使われている作品タイトルは「シャンソン」  9月27日(日)まで

 


アンディを偲んで CD 「SONG FOR DRELLA」

2015-09-15 | 音楽

ヴェルベット・アンダーグラウンドで一緒だったミュージシャンのルー・リードと
ジョン・ケイルが、1987年に他界したポップアーティストの画家アンディ・ウォーホルを
偲んで2人の共作によって行われた追悼アルバム「SONG FOR DRELLA」。



タイトルにあるドレラ(DRELLA)は
ドラキュラとシンデレラを合わせたウォーホルのニックネーム。
彼はヴェルヴェット・アンダーグラウンドを聴き、
それからは仕事を共にしたが80年代ころから仲違いをしたままの状態であった。
このアルバムはウォーホルの独白として構成されている。
当時、日本でもテレビでこのコンサートが放映され、録画したビデオを何度も見ていた。

ルーの胸に響くようなギターと透る低い声、
そしてケイルのピアノとヴィオラに乗せたデリケートな声があいまって
ウォーホルを語り、戻ることのない時間を回想するかのように歌う。

Lou Reed & John Cale - Open House


どうか
81丁目に来てくれ
バーのうえのアパートにいるんだ
迷うはずはないだろ 地下鉄の駅の向かい

      2曲目「オープン・ハウス」より抜粋 対訳 沼崎敦子


サルスベリ

2015-09-05 | Flower

晴れた日のピンクと、曇りの日の白いサルスベリ。
 

夏になると梢を揺らして咲くサルスベリ。
色もきれいで、ちぢれた花びらが気に入っていた幼い頃、
庭にあったこのサルスベリに登りたい衝動にかられ
いつも木を見上げていた。
しかしツルツルした木肌は子供の足を拒否するように滑らかだった。
そして私が登れるようになる前に
我が家は引っ越し、私の目標は達しないままに終わった。
夏になるといつも感じる懐かしく、ほろ苦いサルスベリ。