寺山修司生誕80周年を記念して上演されたProject Nyxの「人魚姫」。
原作のせりふを変えずに上演された。
舞台が始まると、やはり寺山らしいアヴァンギャルドな刺激と
水にただようマルドロールや魚たちがゆらゆらと動く海底は
客席までも水中と化すような水の世界。
宇野亜喜良さん製作の船長とマルドロールの人形は古典的な姿。
人形と実際の2人が重なり、夢幻の世界が進行する。
宇野さんの舞台背景は
一幕がブルーの波に女性の横顔。
二幕は少女のまわりにクラゲやヒトデ、金魚の絵など。
そして衣装も宇野さんのデザインで目を楽しませる。
舞台は寺山のことばを散りばめながら
浄瑠璃の要素や見世物小屋のような雰囲気、
又、からくりを見せるような演出でもあった。
特に「海の魔女」の登場は、ねぷた祭りのらっせらーに乗って
東北の祝祭を盛り込んでいる。
魔女の姿もねぷたのように作られていて
この役を演じたフラワー・メグのせりふは一段と冴えてメリハリをつける。
佐藤梟の圧倒的な存在感、
舞台姿が美しい「船長」の元宝塚歌劇団の男役だった悠未ひろ、
「金魚」を演じた有栖川ソワレの可愛らしさ、
不思議な霧をふりまくような黒色すみれ。
舞台は次から次へと様々な要素を入れて寺山舞台をよみがえらせた。
船長への恋を果たせなかったマルドロールが人間の世界から海に戻るには
船長をナイフで刺せば、300年人魚として生きられ、
それが出来なければ海の泡となって死ぬ、というものだった。
その条件はマルドロールにとって何と残酷なものだったろう。
好きな船長のために
自分の愛を真実のものにするため
マルドロールは海の彼方に消えていった。
演出 藤田俊太郎