日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

花曇りの日

2013-03-30 | Flower

Orengevase




昨日はやわらかい春の一日だったが

今日は沈黙しているような曇り空。

部屋を明るくしたい。

花の組み合わせにアクセントが少ないので

オレンジのガラスの花瓶に挿した。


使用した花材
ライラック、デンファレ(モカラ)、スカビオーサ、薔薇(ジャンヌダルク)、ガーベラ、スイートピー(シンデレラ)


弥生の空は

2013-03-29 | Flower

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桜を求めて歩く人が絶えない。
サクラの「サ」は田の神、「クラ」は田の神が座す場所。
桜が咲くと木の下に集まり
田の神の来訪を祝った。
それが花見の始まりといわれる。





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桜を愛したさすらいの歌人、西行法師。
北面の武士だった佐藤義清は23歳で出家。西行と名のる。同僚には平清盛がいた。
華美を捨て、家族と別れ花を求めて放浪の旅に出る。

   「願はくば花の下にて春死なむ 
          その如月の望月の頃」

如月の望月は2月15日。釈迦入滅の日である。その願いどおり2月16日に没した。

   「花に染む心のいかで残りけん 
       捨て果ててきと思ふわが身に」

貴族社会の政争が強まる世であった時に
この世のものではない美しさで西行の心をとらえた桜。
伝え聞く世の苦しみと、捨てきれない自身の煩悩をおぼえながらも、なお桜に憧れるのだった。

3sakura 
散りはじめた桜のはなびらが地面を覆う。

      花

   花がなければ
   世界はさびしいか
   ならば
   それがないために
   かく荒寥としている
   というものは
   なにか        川崎洋                                                                                    


桜など

2013-03-28 | Flower

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気象が定まらないうつろな春。

花はそれでもその季節の顔を確実に見せてくれる。

今年は寒い春と暖かい春と。

まるで人のこころのように。

使用した花材
緋桜、チューリップ、ビバーナム、レースフラワー、ゼンマイ、アスチルベ、ゲイラックス、サンセベリア、スチールグラス


渋谷駅 旧東横線ホーム3日間の「緑の公園」

2013-03-24 | 日常

3月22日から24までの3日間、85年の役目を終えた東横線のホームに人工芝が敷かれ一般開放された。
東急グループの謝恩イベントとして最後を惜しむ機会が与えられた。

長い行列で中に入ると、ジオラマの展示や鉄道グッズの販売、子供の塗り絵、
東横線を象った写真撮影などでホームを埋めていた。

Barasuto 

「85年分のありがとう」と記された袋

ホームから線路に降りてバラストを入れられるサービスがあった。
(袋代は500円)
バラストとは鉄道線路に敷かれる石のこと。
ホームの最先端から降り
大勢の人に混じって石の上を走った東横線を思い、袋に入れた。

何本もの電車を走らせたこの線路も長い役目を終えた。




Toyokosenhomu 


何年も見続け、馴染んでいたかまぼこ型の屋根と
丸みがかった三角の壁が特徴だった駅舎。
下の一 階は「東横のれん街」
のれん街はマークシティの地下に移る。
この跡地には46階の高層ビルが誕生するという。





Paneru

ホームのパネルより

写真撮影は中井精也氏。

通学も通勤も使用した東横線の思い出はあまりにも多い。
カーブしながら渋谷駅へ入る時の窓からの景色も忘れがたい。
新たな未来に向かっている渋谷は又違う顔を見せてくれる。


こぼれてきた光

2013-03-19 | Flower

Beranda



ベランダの隅に陽が射した。

毎日のことなのになぜか光がこぼれてきたような気がした瞬間。

淡い黄色の花なら光をさらに明るくする。

春が意志を与えた光。

使用した花材
チューリップ、パンジー、ジャスミン、アイビー


宇野亜喜良展 六本木ヒルズ

2013-03-15 | 宇野亜喜良

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もう開催は終わってしまったが、六本木ヒルズへ宇野さんの個展を見に行った。
詩人の谷川俊太郎氏との共作「おおきなひとみ」出版を記念しての個展。

展示は「おおきなひとみ」の絵をメインとして他にオブジェなども展示。
絵は淡い色調で、少女が持つ多面性が夢のように描かれている。

そしてオブジェはどれも素晴らしく
退廃と耽美が女性に宿って現れたように摩訶不思議な空気で私たちを包み込んだ。


渋谷駅 東横線のホームは明日で最終

2013-03-14 | 日常

明日、3月15日で渋谷駅の東急東横線が85年の役目を終える。
東京メトロ副都心線と相互乗り入れになり、
東横線が埼玉の和光市と直通運転になるため、渋谷の東横線は地下5階になる。
永い間、渋谷駅近辺は工事が続いていたが「渋谷ヒカリエ」が完成し
駅構内も大きく生まれ変わろうとしている。
駅では最後の写真を撮る人が多く、駅員が何人も改札付近で整理をしていた。

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東横線改札口

明日でここ2階の改札口も役目を終える。








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東横線の急行電車「元町・中華街」行き


ここのホームは渋谷へ出る地元民として幼い時からの馴染みのあるホーム。
ここは別の使い道として新しく生まれ変わるという。
一抹の寂しさが。。




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行き先を示すホームの表示板


ホームにある何もかもがいとおしく感じる。
いつかは新しい環境に慣れることがわかっていても
東横線だけでこれからもずっと走って欲しかった気持ちがまだ残る。




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東横線がここのホームで使われた85年の歴史に感謝するチラシが柱にも貼られていた。

明日は最終日。
東横線がなくなるわけではないが
この場所にあったホームとは別れることになる。


3/11 あれから2年

2013-03-11 | 日常

午後2時46分。鐘の音が響いてきた。
あたりが急に静かになったような気がした。
東北地震から2年の月日は、それぞれの人に同じように流れてきたが
あの日以来の歩みも心の復興も人それぞれに違っている。
気持ちが進んだかと思うと後ずさりするその距離に苦悩する日が晴れるのはいつなのか。
季節だけではない春。被災に苦しむ人に待たれる春。


夜間飛行 サン・テグジュペリ

2013-03-10 | book

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夜間飛行

郵便飛行がまだ黎明期であった頃。
南米のブエノスアイレスからパタゴニア、チリー、パラグアイに
郵便物を空輸するパイロットと、この物語の主人公で、航空会社の支配人リヴィエールの
過酷でありながらも任務を遂行する精神を描いた一夜の物語。

夜間のフライトは命がけである。
悪天候になると、山が波のようにうねり、風は大空を台無しに、
そして霧は方向を狂わせる魔物となって操縦士に襲いかかる。
空中での緊張感、孤独、疲労困憊。


支配人のリヴィエールはそんな彼らを愛しながらも自らを律し、
冷徹に厳格に離発着の完璧と操縦士のありかたを彼の信念によって徹底させる。

   自分は何者の名において、彼らをその個人的な幸福から奪い取ってきたのか?

リヴィエールは市民的幸福をふっと考える。
しかし優しさによって永遠なるものを途切れさせるわけにはいかない。
何事にもたじろがない精神を保ちながらも、リヴィエール自身もまた孤独であった。


パタゴニア線の操縦士ファビアンは闇の中で逆巻く暴風と戦っていた。
上下する機体、感覚のなくなった手で握る操縦桿。届かない無線。
その気流を突破しようとするが闇と風は容赦なく彼を襲う。
そしてとうとう見えた光。それは満天にかがやく星。
それが罠であることを知りつつファビアンは上昇する。
帰ることの出来ない静かなそのきらめきへ向かって。

そして応答のないファビアンを案じ、苦悩するリヴィエールであったが絶望の中であっても
前進する足を止める訳にはいかない。次の飛行を続行する。永遠をつくるために。



南方郵便機

『夜間飛行』と一緒に収められているこの小説は、主人公のジャック・ベルニスの友人が語るという物語で
サン・テグジュペリ自身の体験が色濃く投影された処女作品。

アフリカ・サハラ砂漠の奥地カップ・ジュビーからフランスへ郵便飛行するベルニスは
自分の幸福をさまようように探し求める。
航空士として空で飛ぶ満足をおぼえながらも、幸福の泉としてジュヌヴィエーヴを愛する。
空の幸福と地の幸福。
自分を理解しない夫を持つ彼女もまたベルニスを愛する。
もう一度会いたい気持ちでジュヌビエールを訪ねるが
彼女は細い息の中で別の世界へ行こうとしていた。地の幸福がベルニスを引き裂く。

そしてジュピーからの飛行。
砂漠の砂は風に巻かれ、太陽の熱は空気を澱ませる。
カサブランカとダカール中間のサハラ砂漠に飛行機のトラブルで不時着したベルニスは
救出されたフランス軍小屯地で老軍曹と出会う。
その後飛び立ったベルニスは消息を絶った。

ラスト、物語を語った友人は砂漠でベルニスに呼びかける。

    君が尋ねていたあの埋もれた宝物は、あれほど君が憧れていたあの宝物は、
    ここにあったのか!
    君はいやが上にも身軽になった。気ままに飛び去る魂よ!

そして無線からの通信。
「郵便物は無事、直ちにダカールへ向け空輸せり」

新潮文庫 訳 堀口大學
表紙のカット 宮崎駿


花はあふれているけれど

2013-03-02 | Flower

春の強風が木の葉を揺らしている。
いつになったら、と春の到来を待っていた。
フラワーショップでは、心がはずむような明るい花が並んでいる。
でも枝や葉が恋しい。
あるだけの葉を使って。



使用した花材
チューリップ(フレミングフラグ)、トルコキキョウ、アネモネ、レースフラワー、こでまり、スチールグラス


画集BOX 「HOMMAGE Jaen Cocteau」

2013-03-01 | Jean Cocteau

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2013年。今年はジャン・コクトー没後50年に当たる。
1963年に詩人コクトーは74歳の生涯を閉じた。
彼が手がけた文学、芸術に多くのメッセージを残して。

左のBOXのタイトルは「HOMMAGE Jean Cocteau
暑さ3,5cmの箱にコクトーの版画4枚と
『存在困難』からのアフォリズムが3枚収められている。
フランス 1993年 Artcurial Diffusion社発行
限定550部の370番台

額縁のように縁取られた表の中央は透明のフイルムがかけられたデザイン。


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二つ折りの表紙と『存在困難』からの言葉が印刷された3枚のシート。

「美について」
「ぼくの幼年時代について」
「さまざまな風俗について」 

より抜粋したコクトーの言葉がそれぞれ1枚に記されている。







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マリアンヌなどのリトグラフ4枚。

茶色の線で描かれた女性の絵に押されたスタンプはオリジナル。
他の3点「JK」のスタンプはシートに刷り込まれている。

このBOXが発行された1993年といえばコクトーの没後30年の年。
50年の今年もフランスではイベントなどがあるだろうか。
詩、小説、戯曲、評論、映画、絵画・・・。
コクトーの世界は深くて遠い。