日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

蒼いねむり 和田光生

2012-06-29 | 

 

Buleimage 
     わたし……歩いています。

     わたし……泳げないんです。

     だから……歩いているんです。

     そこは……よく見る夢の海だから、

     決して、迷うことがないのです。

                 和田光生 「蒼いねむり」より抜粋


everyday、、、巡りめぐって

2012-06-25 | 日常

Hikidasi 
暑かったり涼しかったりの梅雨。
雲間にとける光、さえずる鳥は
この季節の空に明るい音楽を奏でる。

体が不調にならないための管理と
同じように
めぐる季節の自然は良薬となる。

小鳥が毎日さえずり
自由に飛び立つ羽音が心地よい。
鳥のように、、someday。



 


人間の罪と滅びを描いた画家 ジョン・マーティン

2012-06-21 | 絵画

ピナコテーカ・トレヴィルシリーズの第2集「ジョン・マーティン画集」

赤と黒の色彩に劇的、衝撃的な世の終末が描かれている。
それは人間の傲慢に下された神の罰であり、稲妻を光らせながら巻き起こす天変地異の恐怖である。
画集の大半は旧約聖書やジョン・ミルトンの「失楽園」から描いたもので占められている。

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写真左 忘却の水を探し求めるサダク
写真右 ペルシャザルの饗宴

「ペルシャザルの饗宴」はジョン・マーティンが1820年に完成させた油彩。饗宴のさなか、解かれた封印から謎の文字が現れ、不吉な前兆に人々はおびえている。
この絵は一等賞に輝き、展覧会では5千人の観客が拝観料を支払ったという。




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写真左 混沌にかかる岩橋

「創世記」をテーマにした一大叙事詩「失楽園」からのメゾチントだが
夢に出てくるように神秘的だ。
奥に見える光に向かう橋が結ぶのは善と悪、天国と地獄なのか。




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英国の画家ジョン・マーティン(1789~1854)が絵を通して見据えていたもの。
その衝撃から目覚めさせられるものは多い。
スペクタルな絵はその恐怖のあとに有名な「最後の審判」へ。
しかし油彩画の最後は「天国の平原」で終える。
(亡くなる2年前に完成させた)
平原はわらかい光に満ち、水は豊かに流れている。


     1995年9月 トレヴィル発行


夏ツバキ

2012-06-17 | Flower

朝に咲き夕刻には散ってしまう儚い花、夏ツバキ。
6~7月にかけて椿に似た花を咲かせることから名づけられた。
別名で沙羅の木(さらのき)とも呼ばれる。

インドの聖樹・沙羅双樹と似ているらしいことから混同されるが
日本の土壌では育たないため、この夏ツバキは沙羅双樹とは別種である。

    祇園精舎の鐘の声
    諸行無常の響あり
    沙羅双樹の花の色
    盛者必衰の理(ことわり)をあらはす

琵琶法師が哀しく語った「平家物語」の冒頭では世の無常を落下する花にたとえた。
その沙羅双樹は夏ツバキではないかといわれる。 

そしてこの夏ツバキを愛した作家・森鴎外が詩に描いた風情。

         褐色の根府川石(ねぶかわいし)に
         白き花はたと落ちたり、
         ありとしも青ばがくれに
         見えざりしさらの木の花。

長くはとどまってくれない夏ツバキはひととき人を魅了し
静かに落ちて、木に咲いていた姿とは又違う風景を見せてくれる。


熟す前のブルーベリー

2012-06-14 | Flower

Buleberry 2bulebarry

今頃になるとフラワーショップに枝物としてブルーベリーが顔を出す。
つい手にしてしまう枝である。
地面や鉢で濃紫色に熟したブルーベリーが一番だが、葉と同じような色の実も貴重。


チェストに生けてあった花に陽が射した。
でも光は強い。
まだ夏の陽射しではないのに。
それでも植物の循環は美しい。



使用した花材
ブルーベリー、デンファレ、ギガンジューム、ノリウツギ、アルケミラモリス、てまり草


湊川神社 神戸市中央区

2012-06-12 | 神社仏閣

左右対称の建築様式が美しく、目を引かれる湊川神社。
正面に立つと威風堂々としたたたずまい。表神門は、白く塗られた垂木(たるき)の先が均等に並び
束ねられた御幣の飾りが神聖な気持ちにさせてくれる。
JR神戸線の「神戸駅」からまっすぐ。

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地元の人々が「楠公さん」と呼ぶ湊川神社は楠木正成(大楠公)を主祭神として
子・正行(まさつら・小楠公)と正成の弟・正季(まさすえ)をはじめとして
その一族を祀っている。






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目にしみるようなくすの木の葉が白い鳥居をきわだたせる。
本殿への参道を歩きながら木々を見ているうちに

少しずつ身が清められていくような感覚になる。

 





ここ湊川の地で最期を遂げた楠木正成は南北朝時代の南朝方の初代天皇・後醍醐天皇に仕えた武将。
鎌倉時代末期、時は騒然としており、
後醍醐天皇から鎌倉倒幕の命を受けて正成は北条氏と戦い、鎌倉幕府の崩壊へと導いた。
しかし足利尊氏が背き、彼はいったんは九州へ退いたがふたたび攻勢してくる。
湊川で迎え撃った正成は猛然と戦うが敗北。

勝ち目のない戦いであることをあらかじめ予知していた正成は
兵庫への出陣に随行してきた子・正行に、大阪の桜井(現在の大阪府三島郡島本町)で、
分が亡き後は天皇への忠節を尽くすよう諭し郷里へ帰した。(桜井の別れ)

6時間にも及ぶ激戦の末、敗れた正成は
弟・正季と「七たび生まれ変わっても賊のために戦う」(七生滅賊)ことを誓い湊川で自刃した。

楠木正成の天皇への忠誠に心打たれた地元の人々は彼が殉節した地に供養塚をつくり、大切に守り続けてきた。
元禄5年(1692)、正成の功績を高く評価していた水戸光圀によって
「嗚呼忠臣楠子之墓」(ああちゅうしんなんしのはか)と書かれた墓が建立された。

そして、大楠公の忠節を後世に伝えるために明治天皇によって明治5年(1872)、湊川神社が創建された。

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均整のとれた本殿は鉄筋コンクリート造りで
戦後の代表的な新しい神社建築様式という。

中央の扉の奥には主神の大楠公
右の扉は大楠公夫人
左の扉は子の小楠公、弟の正季と一族16柱が祀られている。





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楠木正成の墓(写真はパンフレットより)

正成の墓前には、幕末から維新にかけて国事に奔走した政府要人もここに訪れている。




境内は静かでどの人をも受け入れる大きなものに包まれているような気がした。
「楠公さん」は地域の人々に愛され、また何世紀も超えてそうであったように
地域の人たちを暖かく見守っていくのだろう。


布引ハーブ園 神戸市中央区

2012-06-07 | Flower

布引山の緑は深く、空気も流れる風もここでは体を通りぬけるように優しい。
ハーブ香るそこで自分を解放し、安らぐ時間を得ることを期待してでかけた。

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新神戸駅から徒歩5分ほど歩くとハーブ園へのロープウェイ入り口に着く。
ハーブ園への現在のロープウェイは昨年リニューアルされたという。
動きだすとぐんぐん上がっていく。

以前一度訪れた「布引の滝」も、滝つぼから流れ落ちるのが見えて壮観。
そして重要文化財に指定されている
「布引五本松ダム」も見えてきた。

上へ上るほどに神戸の街が眼下に広がる。そして空気が冷たく感じるのもこの時。



展望レストハウス
ドイツの古城「ヴァルトブルク城」をモチーフにしたという建物。そして広場。
レストランやハーブグッズのショップがある。
クラシックな雰囲気が神戸らしい。


薔薇が満開。
行き届いた手入れで咲いた見事な薔薇につつまれる場所。
どの薔薇も香りが良く、目にも華やか。


さほど広くはないが、どのくらいの色、香りがあるのだろう。
山の頂上に咲き乱れる薔薇たちはここだけで濃密な楽園を作り出している。
 

手前のシルバーの茎と穂はラムズイヤー。
ブルーと白のニゲラ。その奥のグリーンはローズマリー。


白い花のコリアンダー
南欧原産のハーブ。カレー料理などに欠かせない素材。


コーンフラワー(矢車草)ユーラシア原産のハーブ。
あたりに咲き乱れる矢車草は風に揺れて可憐。
こうして咲き終わろうとする矢車は感動的でさえある。


グラスハウスに咲いていたフクシアの色に息を呑む。
「女王の耳飾り」として有名だが
形状の複雑な美しさと種類の多さでコレクションしている人も。


ローズマリーとミントの葉がガラスの器に。
キッチンにこんなふうに飾られていたらそれだけで潤う場所になり
さりげない心づかいが生活を豊かにする。
そんなことを再認識させてくれたコーナー。


短い時間だったがロープウェイの空中散歩、そして目に広がった神戸の街。
広大な敷地で過ごした数え切れないほどの植物たちとの時間は
日常の中の別の時間であったような思いでハーブ園を後にした。


宇野亜喜良 ふたつの展覧会

2012-06-02 | 宇野亜喜良

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「La Fete Blanche 白い祭」

銀座スパンアートギャラリーへ宇野さんの個展を見に行った。

白い額に収められた少女は何を語ろうとしているのか。
そして白いオブジェは中世の彼方から来たかのように物を言わずして瞳を閉じ、
薔薇や貝とともに静かに存在する。

霞んだ記憶なのか、追憶なのか・・。
宇野さんの魔法は時間を逆戻りさせ
迷宮に入っていくうちにいつしか幻想に陥ってしまう。




Aquirax_world 「AQUIRAX WORLD 宇野亜喜良の全貌」

渋谷Bunkamuraで5/16(水)~5/27(日)の11日間だけの展覧会で行ったのは最終日。

1960年代の作品が主流で、モノクロのスケッチは
やはり物憂げであり、魔と聖が共生しているかのようだ。
少女のイラスト、トランプのデザイン、当時の本や雑誌のイラスト、
ポスターなどが展示されていた。

60年代の若者を刺激した宇野さんの「イラストレーター」という仕事は
新しい言葉として時代に躍り出たときでもあった。
あの時代の空気そのままに展示されていた今回、
2度と同じ熱狂の時はもう来ないという思いをめぐらせて会場を回った。