民芸と出会い、自己の道を見い出して生活用品を美に高めた芹沢介の創作作品を見てきた。
デザイナーであり人間国宝でもある芹沢銈介の生誕120年の今年、
多くの作品をとおして「手仕事の普段使い」にある造形の自由と美意識を見た思いがした。
現在は横浜高島屋で10/6(月)まで開催
下のチラシに描かれているのは「いろは文六曲屏風」
のびやかな字にその音から始まる絵がそのそばに。「に」は、にわとり、「ち」なら茶碗という具合に。
謎解きをするように字と絵を見比べる楽しさにあふれている。
民芸運動の柳宗悦(やなぎむねよし)の「工藝の道」に感銘、そして沖縄への旅で紅型に出会い、
自分の道が明確になった芹沢は以後、自分の紅型を追求していく。
その創作は多岐にわたり、あふれるようなイメージから作り上げた作品は芹沢工芸になっていった。
(上) 「縮緬地型絵染着物」より
(下) 「型絵染筆彩着物」(着物型のカード)
着物のデザインは紅型のほかに、いろは文字やひとつのモチーフを連続させたものが多く
その斬新なデザインは、着物の概念をはるかに超えた美術品ともいえる。
中でもフランスの画家・バルテュスを感動させた赤地に鯛文様の着物は、大胆な構図と力強さが意表を突く。
下は「風の字文のれん」
白い丸型の中に「風」の文字を藍の濃淡で。
1976年、フランス国立グラン・パレ美術館で開かれた「芹沢介展」では
この図柄と同じ壁掛けを元にしたポスターがパリの300カ所に飾られた。
デザインの型を切り抜き、染めに至るまで芹沢自身がすべて手作業で行った作品は
日本の春夏秋冬を取り入れ、多彩な表現によって
生活を快適にする術を残したデザイナーであったことを多くの作品から感じることが出来た。
図案という「空」なものではなく具体的な「もの」に自分を見出したい (芹沢銈介)