日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

シクラメン 変わり続けて

2009-12-28 | Flower

    

 この季節になると必ず目にするシクラメンは、品種改良によって一見シクラメンとは思えない種類が出回っている。                                           左はプリマドンナ・ゴールド。フリンジ状のはなびらが華麗である。
右はワーリーギグ。2本の花が重なったように個性的である。

シクラメンは花の姿が篝火のように見えることから篝火花(かがりびばな)という別名もあり、
日本には明治にヨーロッパから渡来した。原種のシクラメン・ペルシカム(花は白やピンク)が英国やドイツで
17世紀頃に改良がはじまり、我々が目にするシクラメンへと変身をとげてきた。

      

      シクラメン花のうれひを葉にわかち    久保田万太郎

      部屋のことすべて鏡にシクラメン      中村汀女


「クリスマス・ソング」 H.E. ベイツ短編

2009-12-24 | book

「きっと、本当はクリスマス・ソングではないんです。そんな曲なんですが、本当はそうじゃないんです。つまり、むしろ、聞いているとクリスマスを想い出すような歌なんです。」 (本文より)

Candrenight
クリスマス・イブの日、楽器店で声楽を教えるクララのもとに店を閉めた後に訪れた青年は
ある曲のレコードを探していた。
クララが2,3 曲ピアノを弾くと、青年が知りたいと思っている歌はシューベルトの曲とだけわかった。
しかし曲名が判明しないまま青年は帰った。
気が進まないクリスマスパーティにボーイフレンドのフレディが誘いに来ても
クララはシューベルトの曲が頭にめぐる。
でかける間際に又青年が引き返して訪れ、曲のことばを少し思い出したという。

          秘めやかに 闇を縫う わが調べ…

聞いたクララはその歌のレコードを青年に渡す。内気な青年はクララに感謝を述べ、うれしそうに帰った。

「私はとても感謝しています。本当に良いクリスマスでありますように」


秘めやかに 闇を縫う
我が調べ
静けさは 果てもなし 来よや君
ささやく木の間を 洩る月影
洩る月影
一目もとどかじ たゆたいそ
たゆたいそ

         シューベルト 「セレナーデ」  訳詞 堀内敬三

H.E.ベイツが描いたこの短編には特別なクリスマスがあるわけではない。
ささやかな気持ちの交流から生まれた暖かいクリスマス・イブの夜が描かれている。


航空会社の案内紙 ジャン・コクトー

2009-12-22 | Jean Cocteau

AIR MONDE という航空会社の旅行案内紙。プログラムは縦と横に折られて両面に印刷された8 面の記事になっている。
フランス 1963年 AIR MONDE社 発行

Cocteauinvitation

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1936年、コクトーは80日間の世界一周の旅に出ている。
その時のことに触れ、旅で出合う魅惑を書いている。
プレゼントとして先週思いがけなく到着したこのプログラムは
コクトーのために3面を用意して作られている。
当時、ロビーなどに置いてあったのだろうか。
時を経てこうして見ると夢のような案内紙である。


『恐るべき子供たち』のインスピレーション

2009-12-14 | Jean Cocteau

阿片解毒治療の入院中、コクトーの部屋へ見舞いに訪れていたクリスチャン・ベラールは
コクトーの映画や舞台で衣装と美術を担当する当時の一流デザイナーで、コクトーとのかかわりが深い人物である。
1929年、病室でコクトーはベラールから「ブールゴワン姉弟」の話をたびたび聞かされ
そのイメージから『恐るべき子供たち』が誕生した。

Jean_b    Janne_b

コクトーにインスピレーションをあたえたブールゴワン姉弟の父親は1922年に他界し、
ロジェ街のアパルトマンに母親と住んでいた。
この時の経済状況は深刻のようであった。
美貌の姉ジャンヌと長身の美青年ジャンは双子のように行動を共にし、
時代の先端でもあったジャズ酒場「屋根の上の牡牛」にも連れ立って顔をみせていた。
姉はドレスメーカー「マドレーヌ・ヴィオネ」のマヌカンで時々収入を得ていたが
性格にむら気があり、結婚したものの数ヵ月後には弟と図って夫を追い出してしまう。

いっぽう弟のジャンはデッサンなどを描く一面、怠惰なところもあり、
病身の母の面倒を看ずに同じ部屋ですごす二人には
社会的通念のモラルから離れたところにいる若者の危ういうたかたのような日々をすごしていた。

ジャンヌは恋人の自殺などから精神のむら気が強くなり、アルコールや麻薬中毒などにおちいり
1929年、睡眠薬で自殺してしまう。『恐るべき子供たち』が発行されてすぐ後のことになる。                                                           ジャンは姉の自殺と精神的絶望感に、ジャック・マリタンの導きと1947年の母の死を機に
トラップ修道院の修道士へと生き方を一変させ、らい病患者の看護にあたっていたアフリカで1966年60歳の生涯を終えた。


今年も飾りはモミで

2009-12-03 | christmas

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 09swags

 

 
西洋でクリスマスにモミの木を用いるのは、冬でも枯れることなく
清らかな緑のまま天に向かって伸びる姿に「永遠」の象徴を見たことに由来する。
永遠とは変わらずにあること。
自然の木にそんな願いを込め、果てしなく続いてきた季節。