日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

かすかな微笑み

2014-01-20 | こけし

Konomisan



ほわ~と筆を引いたように柔らかな描彩。
野で草花を摘んでいるのが目に浮かぶような少女。

製作は木地山系の阿部木の実工人。 6寸

東北はまだ雪が深いけれど、蝶が飛ぶような季節に
なったら、花もこのこけしのように咲くだろう。


海に住む少女 ジュール・シュペルヴィエル

2014-01-16 | book

生と死を合わせ鏡のように描いた奥に人間の普遍的感情がただようシュペルヴィエルの短編集。
それは時に切なく、そして時に哀しく滑稽に。

Uminisumu
大西洋の海に浮かぶ町に一人で住む「海に住む少女」
町が浮かんでは波の下に沈む。
父の強い思いが蜃気楼のように少女を出現させては波間に消していく。
なす術のない少女の孤独。

強い思いがゆえに意味を失った習慣を続ける青年を描いた「牛乳のお椀」
競馬の騎手がやがて馬になってしまう「競馬の続き」
美しい音色のような声を持つ少女が
普通の声に戻った時の涙は寂しい胸のしずくだった「バイオリンの声の少女」
人の強い思いはもうひとつの不条理な世界を生む。

「セーヌ河の名なし娘」は、セーヌで溺死した少女が死んだ後に
悪意によって水底に引き止める者たちから逃れ
本当の安らぎの死へと向う過程が描かれている。
そして影になった死者たちが集う天上で、ひとつの箱から得られた力が
希望を感じさせる「空のふたり」。
「飼葉桶を囲む牛とロバ」は、イエスの誕生に立ち会った牛が
自分の角で周囲の者を傷つけるのではないかと負い目を感じている。
旅立つイエスたちとの切ない別れ。
その夜、牛の犠牲的精神は祈りとなり、天空に座す星となった。

冒頭、インクも吸い取り紙も乾かず、
葉も砂糖も水をしたたらせることから起こる大洪水を描いた寓意が
壮大なこの世の始まりへと引きつけていく「ノアの箱舟」


詩人ならではのファンタジーを織り込みながら、心の中にある思いは国や時代が変わろうと
不変であることをシュペルヴィエルはまるで童話を書くように描いている。
人間とは哀しい生きもの。
それでもそこにすがりながら幸せを探していくのだ。

              2009年 光文社発行 訳 永田千奈


デルフィニュームベラドンナ

2014-01-12 | Flower

Beradonna


デルフィニュームの仲間であるベラドンナが年末に沢山届いた。
濃い青と薄めの青。

青のイメージは、空、水、夕暮れの富士、サファイア、モスクの屋根、
トルコの寺院を彩るタイルなど・・。
西洋では高貴な色とされ
青い血は貴族の血筋であることを意味している。

青い花もりんどうや桔梗、露草などは古来よりあったものだが
青い薔薇、青いけしを求めた苦難の時代があった。
青は謎めいた色といえるかも知れない。