日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

金子國義 「夢の中」 展 FUMA CONTEMPORARY TOKYO

2018-04-29 | 絵画




最終日の昨日、何とか見に行くことが出来た金子國義さんの個展。
1960~70年代の油彩画中心の作品が展示されていた。
ほとんどの作品が初めて見る絵だったので
1点ずつ丁寧にゆっくりとー。
そんな時間が「夢の中」で過ごしているように感じた作品展だった。

弓型のくっきりした眉と大きな瞳の少女たち。
大人のような少女たちは林檎を持ったり、あるいはリボンが絡んだり。
特に印象的だった絵は「サド侯爵夫人」。
気高くたたずむ夫人の姿に漂うデカダンスの香り。

そして金子さんの部屋を再現したようなコーナーが2階に。
何枚かの絵、壁に貼られた数々のスナップ写真や貝、
ジャン・コクトーの本、絵の具など。
映画「ヴェニスに死す」でビョルン・アンドレセンが着用したセーラー服を
金子さんが所有していたのは有名だが、今回初めて見ることが出来た。

会場ではグッズも販売していた。
ポストカードやタイツ、メモ帳、マスキングテープなど。


そして黄ばみ始めたこんな記事を大切に保存しておいた。
1984年。今から34年前のクリスマスが近い頃。
金子國義さんのお宅で開かれるドリーミング・パーティの招待記事。
今思えば夢のようなプライベートな企画。
金子さんの部屋で冬の宵を共に過ごせる極上のパーティだったに違いない。


写真展ジャン・コクトー『オルフェの遺言』『悲恋』 Art Gallery M84

2018-04-23 | Jean Cocteau

銀座のArt Gallery M84で一昨日まで展示されていた「オルフェの遺言」と「悲恋」の写真展を見に行った。
私が行ったのは先月の末。



三島由紀夫が絶賛した映画「オルフェの遺言」は
コクトーが詩人として後の世代に伝えたかった遺言劇であり彼自身の自叙伝でもある。

フランスの写真家ルシアン・クレルグは
ピカソを介してコクトーと知り合い
40日間の撮影に参加し、コクトーが自由に撮影させたという写真の数々を展示。


そして「悲恋」は「トリスタンとイゾルデ」を元にコクトーが翻案した古典劇で
愛の媚薬によって悲運の愛に死すふたりを描いた崇高な愛の物語。

女性写真家ロール・アルバン=ギヨが撮影したプリントは
運命のいたずらによって許されない愛を貫くジャン・マレーとマドレーヌ・ソローニュの
光と影を幻想的に写し出していた。
当時のプリントだというので感慨深く感じる作品だった。

そして初めてみたオフのジャン・コクトーの写真。
フランスのエッソンヌ県にあるサン・ブレーズ・デ・サンプル礼拝堂のコクトー。
上を見上げているのだろうか。
背を反らしているコクトーを下から撮影したようだ。
親し気なコクトーがそこにいた。

誕生した地で「草間彌生 ALL ABOUT MY LOVE 私の愛のすべて」展開催

2018-04-22 | 絵画

草間彌生さんの故郷、松本で魂の軌跡をたどる展覧会が先月から始まった。
昨年の国立新美術館の「わが永遠の魂」展を見たが
ここ松本では壮大ともいえる草間さんの誕生から今まで手がけた作品までを紹介している。




松本駅前も草間さんの横断幕が。
街をあげてこのイベントに力を入れているのを実感。



水玉が乱舞する松本市美術館の正面

こうでなくては!とわくわくする水玉の外観。


正面の脇に咲く巨大なオブジェ「幻の花」

この巨大な花のオブジェはここでしか見られない。
圧倒的で生きているかのような存在感。


「大いなる巨大な南瓜」2011/2017年

自宅の畑でかぼちゃを見た時に底知れぬエネルギーを感じたというかぼちゃ。
草間さんのかぼちゃはどの作品も偉大な力を持つ。


作品「わが永遠の魂」の数々

約半数が日本初公開作品だという。
現在もこのシリーズの製作を続けている草間さんのその時々の魂の表現。


「自画像」1972年 (コラージュ)

不思議な花のまわりを蝶が飛ぶ。
いつか大輪の花を咲かせる未来へと向かおうとした70年代の草間さんご自身なのか。


ふるさとに帰りたい」2016年

極彩色が多い中でピンクとブルーの淡い色調が優しげで気に入っている。
信州の風は澄み、ふるさとはきっと自分を包んでくれる場所。


「人生の最大の夢を見たとき」2017年 初出品作

うねる模様の連続と色彩の対比がすてき。


「傷みのシャンデリア」2011年

ミラールームの四方に広がり続けるシャンデリアがキラキラと。
足元が危うくなりそうで壁にぶつかるのではないかと思った不思議な迷宮。


「真夜中に咲く花」2014年

壁に付けられたバルーンのオブジェ。
目を引く飾り方だった。


「ヤヨイちゃん」と「トコトン」2013年

階段脇に仲良く立っている。
階段のステップにはトコトンの足跡が貼られていた。

幼い草間さんを襲った病は水玉や網目、花が迫ってくるという苦しい幻覚だった。
自分で制御できない恐怖から逃れるにはまだ幼く、
絵筆に救いを求めなければならないほど切羽詰まった状況から草間彌生の生涯続く闘いは始まった。

病や周囲の無理解と闘い、走り続けて創作してきた長い年月は
「世界のKUSAMA」と称される日本が誇るビッグアーティストを誕生させた。
芸術に身をささげた草間さんの芸術は
水玉と同様に永遠に輝く唯一無二のもの。

     7月22日(日)まで

旧開智学校校舎 長野県松本市

2018-04-20 | 近代建築

松本城から近い旧開智学校に行ってみた。
文明開化の面影を残す校舎はぜひ見たいと思っていた場所だった。



明治維新後の1871年(明治4)、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)により
廃寺となった「全久院」の跡地に建てられた擬洋風建築で
昭和30年代後半に女鳥羽川から移築、正面の校舎だけが復元されて現在の姿になった。

正面の車寄せに施された彫刻。
龍、波、雲など流麗ながら愛らしい天使なども。



八角形の塔屋と東西南北の風見。



2階の廊下。素晴らしい天井の照明。



小さな机と椅子が並ぶ教室。



現在では見ることが出来ない優美なデザインのオルガン。



単語図や植物図などで学習した名残り。明治7年改正と記されている。



講堂。ここの柱は全久院の柱を使用したのだという。



講堂の天井は葉のレリーフに囲まれた照明。そしてギヤマンガラスの窓。



扉にも彫刻が。



復元された大棟鬼瓦。
建築当時の鬼瓦は重さ220キロの重さだったとか。



風見に付けられていた東西南北の文字。
漢字が当時を物語っているが展示されているのは銅板に複製したもの。



新築当時の開智学校



新しい時代の誕生のようなモダンな白亜の校舎は
1963年(昭和38)まで90年間にわたって使われ、
1961年(昭和36)に重要文化財に指定された。

松本城の桜

2018-04-19 | まち歩き

黒く、威風堂々とアルプスの山に映えて建つ松本城。
今月の8日(日)に松本城の桜を見に行った。
散り始めではあったけれど
薄日の射す中、お城は桜の淡いピンクに囲まれた春の風景だった。









松本城へは2度目の訪問で、最初の時は天守まで登ったが
あの急勾配の地獄の階段に懲りて、今回は周囲の桜を見るだけにした。

黒の漆で塗られた城郭の美しさは格別で
黒と白のコントラストはまるで正装をしているよう。
現存する城では日本最古の松本城は国宝に指定されている。
別名は深志城。

天守の最上階には松本城の守護神「奉鎮祭二十六夜神」が祀られている。
初回に行った2014年11月に撮影。

枝垂桜

2018-04-03 | Flower

東京のソメイヨシノは散ってしまったけれど
まだ枝垂桜はきれいに咲いている。

(左)大田区大森  (右)港区高輪
 

ソメイヨシノの吹雪のあとも地に向かってこぼれるように咲く枝垂桜。
この花もまた幽玄。可憐にして艶なるフローラ。