日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち

2019-05-31 | 絵画

神話や聖書から数々の作品を描いた幻想画家ギュスターヴ・モロー展を
「パナソニック汐留美術館」へ見に行った。
今回は「宿命の女たち(ファム・ファタル)」がテーマ。
男性を破滅へと導く女性たちから、神話の世界へと引き込まれる絵画展だった。




「出現」 1876年

あまりにも有名な踊るサロメに宙に浮かぶ洗礼者ヨハネの首。
実際にはあり得ないこの状況は
モローがサロメに見たファム・ファタルを魅惑的に描いている。

新約聖書に登場するサロメは、母ヘロディアと父ヘロデ王・ピリポとの娘。
しかし母はヘロデ王の弟アンティパスと結婚したことをヨハネに咎められる。
アンティパス王はサロメが踊ってくれるなら望むものを与えると言うが
母はヨハネを消すためサロメに「ヨハネの首を」と言うように焚きつける。

サロメがヨハネの首を所望し、盆に首を置くというストーリーは
オスカー・ワイルドの創作でその印象が強く残ってサロメが語られている。

「デリラ」


旧約聖書に登場するするデリラ。
神殿を怪力で破壊できるサムソンを裏切り、陥れるデリラ。
ポーズはリラックスしているがこれから起こる運命が
サムソンを悲劇へと導くような気配。


「セイレーンと詩人」


ギリシャ神話に登場するセイレーンは水のある所に棲む怪物。
女性に姿を変え、美しい歌声で航行する船を沈没させ
人を死に至らしめる。
絵はセイレーンの罠にかかり死した詩人が描かれている。


「エウロペの誘惑」 1868年


ギリシャ神話に出るエウロペはフェニキアの王女。
古代ローマの詩人オウィディウスの詩集「変身物語」から着想したこの絵は
彼女への思いを遂げようと
妻ヘラに悟られぬよう牡牛に変身したゼウスと見つめ合っている。
このエウロペ(Europe)がヨーロッパの語源と言われている。


「一角獣」1885年


貞節の象徴である一角獣は伝説上の幻獣。
純潔な乙女にだけおとなしくなると伝えられる。
豪奢な衣装、白い肌、純潔を表す百合の花。
宮廷的な雰囲気がただよう1枚で
未完の作品だが、楽園を思わせる抒情性にあふれている。


「妖精とグリフォン」 1876年頃

ここは洞窟なのだろうか。
座る妖精を守るように囲む青い羽のグリフォン。

グリフォンは伝説上の怪獣で
頭は鷲、体はライオン、そして羽を持つ恐ろしい獣と言われるが
モローは椅子の背にラピスラズリ、羽も青で仕上げ
妖精の白い肌が際立って幻想的でさえある。


モローの内面世界に生きる女性たちは
処女性と残忍な魔性を秘めたミステリアスな存在として描かれている。
神話や聖書の中に生きる男女の多面性を
絵筆で作り上げた夢幻の世界だった。


横浜で見た花々

2019-05-24 | Flower

10日前の風景だが遠くに横浜ベイブリッジを見ながら公園を散歩した。
薔薇が盛りで華やかだった。
けれど今年は薔薇ではない花についカメラを向けてしまった。

白いハクロニシキの葉とデモルフォセカの花



撫子



石楠花(しゃくなげ)



薔薇なら私にとってのナンバーワン「バタースコッチ」





ダイナミックに咲いていたシルバープリペッド


 


鳩山会館 文京区音羽

2019-05-21 | 近代建築




音羽の丘に建つ薔薇とステンドグラスに囲まれた洋館は
戦後、総理大臣となった鳩山一郎によって1924年(大正13)に建てられた。

鳩山家といえば鳩山和夫、一郎、威一郎、由紀夫、邦夫と政治家が誕生した家系。
この邸宅で重要な政治案件を決める事もあった歴史の場でもある。

設計は大正・昭和を代表する建築家であり
一郎の親友でもあった岡田信一郎(1883~1932)

アーチが優美なロマネスク調の正面玄関


玄関の扉からいきなり大理石の階段が。
登ったところが1階になっている。




鳩山邸には鳩のモチーフが多く使われている。
玄関の上にはイオニア式の柱と鳩がデザインされたステンドグラフが彩りを添えていた。



第一応接室。
大正ロマンが漂うシックな室内。


第2応接室からサンルームに出る間仕切りには
4カ所に花模様のステンドグラス。明るく開放的な雰囲気が素敵だった。


2階へ続く踊り場の有名なステンドグラス。
鳩が大空を飛ぶ雄大なデザイン。アメリカで修行した小川三知(さんち)の作。


2階大広間
陽射しがいっぱいに入り鏡の効果もあって明るい。


館にも鳩のモチーフ。
平和の象徴でもある鳩が洋館を守るように。


庭に出ると薔薇が見事に咲いていた。
一郎が愛したという「ピース」の薔薇。素晴らしい香りだった。
やはり薔薇も平和という名。


お互いの立場を理解し「友愛」の精神こそが和となると唱えた
一郎の理念もこの館から生まれた。


裏玄関にはシンプルながらトスカナ式の柱が古典的。


5月の緑がベージュの洋館との調和も美しく
歴史を刻みながら今も貴重な建築として残る鳩の館だった。


ツルハナナスなど白い花

2019-05-07 | Flower

晴れたゴールデンウイークの散歩で見かけた花。
何気なく歩いてもいても
時にその存在を気づかせてくれる花に足が止まる。

ツルハナナス 
今頃になるとよく見かけるナス科の蔓性植物。星のような形が固まって。



ウツギ 
ひときわ白い小さな花がいくつもの房になって咲く。
場所によっては散ってしまった所も。



ノバラ
乱れるように咲いていた。小さな花に沢山の小さな棘が。


名称不明
名前を調べたがどうしてもわからなかった。
葉は丸く大きい。花はクレマチスのような。



風に身をまかせて咲く花。

陽を浴びる花、その陰に咲く花…。
それぞれの使命を春の中で果たし、
わずかな余韻を残していく無言の花々。


令和になって

2019-05-01 | 神社仏閣

新しい時代に気持ちが引き締まる思いと
さわやかな空気が流れるような朝を迎えた。
今日も烏森神社に行き、金で抜かれた菊の御紋と
践祚改元(せんそかいげん)と書かれたご朱印をいただきに行った。



践祚とは天皇の位を受け継ぐ、の意味だという。
令和の時代も平和な日本であればと思う。

そして浅草では入り口に素敵な飾りがかけられていた。