化学万能の現代に、古くから伝わる霊魂の世界を織り込んで
吸血鬼の物語をロジェ・バディム監督がレ・ファニュの小説「カーミラ」をベースに
耽美的に描いた映画作品。
結婚を控えたレオポルド伯爵と婚約者のジョージア、
そしてレオポルドに恋心を寄せる従兄妹のカーミラがいた。
祖先は吸血鬼の一族だったというカーンシュタイン家にあるミラーカの肖像画は
カーミラにそっくりだった。
(ミラーカにカーミラ。ややこしい)
ただひとり生き残ったのがミラーカで、恋人が墓地にかくして助けたという。
ドイツ軍が埋めた地雷が爆発したため墓地が崩れてしまった。
誘われるように墓地の地下に下りたカーミラは封印されていた棺が開くのを見た。
その時からカーミラに霊魂が乗り移った。
映画の中で一番怖く、又一番美しいシーンだ。
白いドレスのカーミラが歩くシーンは抒情的で、
ハープの音色が恐怖ともの悲しさを誘うシーンでもある。
バラのトゲで血が出たジョージアに近寄るカーミラ。
危険な香りがするシーンで、レズビアン的要素がただようと聞くが
実際に見るとそんなことを感じさせない。
ヴァディム監督がふたりの女性を最も美しく描いたように気品あるシーンだ。
寝ているジョージアにカーミラが襲った。ジョージアは奇妙な夢を見る。
この夢の場面はモノクロだが
カーミラの胸から流れる血だけが赤のカラーになるのは
ヴァディム監督らしくシュールで印象的だ。
目覚めたジョージアの首にはふたつの歯の跡が――。
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さまようように庭を歩くうち、墓地を破壊する爆風に飛ばされ
柵の杭に落ちて衝撃的な最期を遂げた。
しかしジョージアでありながら彼女には霊魂が宿っていた。
500年も生きていたミラーカの霊魂が。
大女優と結婚し、その時の夫人を主人公に映画を撮るバディム監督だが
この「血とバラ」は2番目の夫人となったアネット・ストロイベルグを
遂げられぬ愛に悲嘆する女性として切なく描いている。
かなり昔に確かNHKの放送で見た時に魅了された「血とバラ」。
この名作も日本でぜひDVD化して欲しいと思う。