日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

映画 「血とバラ」

2016-10-31 | 映画

化学万能の現代に、古くから伝わる霊魂の世界を織り込んで
吸血鬼の物語をロジェ・バディム監督がレ・ファニュの小説「カーミラ」をベースに
耽美的に描いた映画作品。




イタリアの丘に建つカーンシュタイン家の城には
結婚を控えたレオポルド伯爵と婚約者のジョージア、
そしてレオポルドに恋心を寄せる従兄妹のカーミラがいた。
祖先は吸血鬼の一族だったというカーンシュタイン家にあるミラーカの肖像画は
カーミラにそっくりだった。
(ミラーカにカーミラ。ややこしい)

はるか昔、吸血鬼一族をほろぼす農民に襲われたカールシュタイン家で
ただひとり生き残ったのがミラーカで、恋人が墓地にかくして助けたという。

レオポルドとジョージアの婚約パーティが開かれ、花火が打ち上げられたが
ドイツ軍が埋めた地雷が爆発したため墓地が崩れてしまった。
誘われるように墓地の地下に下りたカーミラは封印されていた棺が開くのを見た。
その時からカーミラに霊魂が乗り移った。

血を求めるカーミラは、召使いの少女が森の中を帰るそのあとを追った。
映画の中で一番怖く、又一番美しいシーンだ。
白いドレスのカーミラが歩くシーンは抒情的で、
ハープの音色が恐怖ともの悲しさを誘うシーンでもある。

そして温室でカーミラがジョージアの血を吸う有名なシーン。
バラのトゲで血が出たジョージアに近寄るカーミラ。
危険な香りがするシーンで、レズビアン的要素がただようと聞くが
実際に見るとそんなことを感じさせない。
ヴァディム監督がふたりの女性を最も美しく描いたように気品あるシーンだ。

レオポルドへの想いはカーミラを次の行動に移す。
寝ているジョージアにカーミラが襲った。ジョージアは奇妙な夢を見る。
この夢の場面はモノクロだが
カーミラの胸から流れる血だけが赤のカラーになるのは
ヴァディム監督らしくシュールで印象的だ。
目覚めたジョージアの首にはふたつの歯の跡が――。



レオポルドへの叶わぬ愛に絶望したカーミラは
さまようように庭を歩くうち、墓地を破壊する爆風に飛ばされ
柵の杭に落ちて衝撃的な最期を遂げた。

レオポルドとジョージアが飛行機で新婚の旅に発った。
しかしジョージアでありながら彼女には霊魂が宿っていた。
500年も生きていたミラーカの霊魂が。

大女優と結婚し、その時の夫人を主人公に映画を撮るバディム監督だが
この「血とバラ」は2番目の夫人となったアネット・ストロイベルグを
遂げられぬ愛に悲嘆する女性として切なく描いている。
かなり昔に確かNHKの放送で見た時に魅了された「血とバラ」。
この名作も日本でぜひDVD化して欲しいと思う。

町田ダリア園へ 町田市山崎町 

2016-10-30 | Flower

先週行った町田ダリア園。
入り口の平地から丘のような斜面に沿って、多くの種類が植えられている。
まわりの緑に囲まれ、競うように咲くダリア。




黄色が鮮やかな「レモンカード」とサーモン色の「上総の舞」
 

「黒鹿毛」と、白にワイン色のしぼりが目を引く「ラブスペシャル」
 

白の細いはなびら「銀河」と、ねじれるような花びらの「神曲」
 


ヘンデルの 「サラバンド」 に送られて

2016-10-28 | アート・文化

演劇界の大ベテラン、平幹二朗さんが今日天国に旅立った。
突然の訃報にただ驚くばかりだった。
数々の舞台、テレビなどを多く見た訳ではないが、特に舞台の「王女メディア」は
衝撃が強く、忘れようにも忘れられない作品として残っている。
そして「鹿鳴館」の舞台で親子3人の共演も、何か心嬉しく観たのが
ついこの間のような気がする。

平さんとは街で偶然お会いすることが多く、
(と言っても5回くらい)
また日生劇場で、舞台に向かう姿を楽屋でお見かけしたこともあった。

蜷川幸雄さんが5月に他界してからまだ半年も経っていない。
ふたりのコンビが創りだす壮大な人間ドラマや
重厚で舞台の空気を変えてしまうあの存在感をもう観ることも感じることも出来ない。

平さんが好きだった「王女メディア」に使われたヘンデルの「サラバンド」が
出棺時に流れた。
外国の古典劇俳優のような風貌だった偉大な平さん。
もっともっとシェイクスピアを演じたかったのではないだろうか。

どうぞ安らかに。

Haendel - Sarabande


「かもめ」或いは寺山修司論2016  芝居砦・満天星

2016-10-23 | 宇野亜喜良
墓地の脇を通り、たどりついた芝居小屋は階段を降りて、降りて…。
次第に過去へとタイムスリップしていくような階段だった。
異空間で見るひとつの物語。
それはマジックにかけられながら見た切ない大人のメルヘンだった。

今回の「かもめ」は、寺山修司がダミアのシャンソン「かもめ」をもとに書いた小説から
金守珍さんの演出でProject Nyxの旗揚げ10周年記念として2016年度版の上演なのだという。




船出する水夫と彼を愛する少女。
水夫が帰ったら結婚をするという約束をし、お互いに想いながらも
その約束は果たされず、少女の運命は過酷な最後へと向かっていく。
そして揺れる波の上を
かもめはいつまでも悲しげに飛んでいるのだった。

舞台は水夫と少女の朗読から始まる。
物語の進行とともに波のオブジェが動いたり
スクリーンに宇野さんの絵が次から次へと写し出される。

少女は海をみつめながら帰らぬ水夫を待つが
水夫は帰るお金もなく貧しさに負け、着いた波止場の女性と結婚してしまった。
帰りを待ちこがれ、傷心の日々を送る少女。
少女は海で舟をこぐ。
宇野さん製作の少女を出演者が操るのだが
純情な思いから痛々しさが伝わってくる舟の場面である。

寺山の「ポケットに名言を」から
マリー・ローランサンやアンドレ・ジッド、ジャック・プレヴェールなどの言葉が積まれる。
そして、寺山の「なみだは人間が作るいちばん小さな海です」も。

三大美女の楊貴妃、クレオパトラ、小野小町も登場。
それぞれのダンスは華やかで官能的。
黒色すみれのデュオはノスタルジックで、どこか儚く
やはりメルヘンには欠かせない存在。
劇場をメルヘンにしてしまうオーラが舞台に特異性を生み出す存在だ。

ラスト、少女は思わぬ不幸に見舞われ
水夫の帰りを待ちわびていた少女の運命は無残に引き裂かれていく。
球体関節人形のように作られている宇野亞喜良さんの人形。
少女は青い海の底へと沈んでいった。
 
海で死んだ人はかもめになるという。
かもめはその悲しみを翼にのせて
海の上をいつまでもいつまでも飛んでいた。

映像、人形、朗読、舞踊、そして音楽を融合させ
舞台は、時には海、時にはどこかの大広間、
時には時間のない町のようなめくるめくメルヘンの舞台だった。

私が観劇したのは昨日22日(土)の夜の部。
物語が終ってから「黒色すみれミニコンサート」があった。
メリーゴーランドのような夢の時間。
(ここからは撮影可能となった)

 

黒色すみれのスカートは宇野さんが描いた絵が。
すみれの花、魚の少女や青い文字が流れるように書かれているすてきなデザイン。


女性だけの出演者がそろって、撮影のためにポーズをしてくれる嬉しいサービスもあった。

ダリアの季節

2016-10-18 | Flower

気温が上下する10月だが空は冴え、夕日の茜色がひときわ輝く。
ダリアが豊富に咲く季節でもある。
紅葉は山が見えない都会ではうれしい季節の彩り。秋の花を添えてみた。



使用した花材
ダリア、鶏頭、キイチゴの葉(紅葉)、バーゼリア、ユーカリ


宇野亞喜良さんのマジョリ画

2016-10-15 | 宇野亜喜良

宇野亞喜良さんのマジョリカ マジョルカのマスカラを購入して手に出来たポーチ。
表がピンク地、裏が黒地になっていて
描かれているのはヘアースタイルがキュートな美少女。



そして、化粧品メーカーの資生堂提供で宇野さんが複数のパターンで
似顔絵メーカーを作ったサンプルから作成して先月送られてきたマジカルギフト。
メークにはうといほうだが、
自分の作成した顔がカードになるのと箱が可愛いのでつい注文。


「かっぱ橋道具まつり」へ 東京・台東区

2016-10-11 | 日常

浅草雷門に近い「かっぱ橋」は厨房設備や食器類、調理器具など、プロ仕様の物から
一般の物まで幅広く扱う日本最大の問屋街。
昨日まで開催されていた「道具まつり」に出かけてみた。

朝から多くの人で歩くのも困難なほど。



お菓子の型抜きが楽しい。まだまだ山のように積まれていた。



有名な「釜浅」の店先に置かれている大きな釜。
店内のディスプレーはハイセンスな上、とても見やすい。



これも大きなカブトムシが2階ベランダに張りついているサンプルで有名なお店。


納豆ごはんも味噌汁もサンプル。

このお店ではベーコンのしおりが外国人に人気でお土産に買っていくのだとか。

別のお店で、おそばや丼物に添える薬味(ネギなど)の小皿にかける紙を見かけた。
下の写真は500枚セットで確か300円と書かれていた。こういう品を見られるのも問屋街ならでは。



道具まつりで購入したキッチン用品

普通のフライパン、WMFの両手鍋、アルプレッサのホットサンドメーカー、
柳宗理のパンチングトレーナー(ざる)とフライ返し、
そして出汁取り網とハロウィンの紙コップ。
糸たわしのサンドクリーンはサービスでいただいた。


アケビに薔薇を

2016-10-08 | Flower

きれいな色のアケビをみかけたので薔薇を添えてアレンジ。



アケビは中の種を除いて果肉を食べるが、中心に白いスジが見えると
割れて中が見えるように開いてくる。そこから開け実がアケビになった。
薔薇は赤と白の絞りが妖艶なイメージのフリューレット。
あざみのような花、オヤマボクチ(雄山火口)は焦げたような色に変化した。
周囲にムラサキシキブの実を散らして。


銀座プレイス 中央区銀座

2016-10-04 | まち歩き

東京・銀座4丁目の交差点に新しくオープンした「銀座プレイス」。
この交差点は、和光、銀座三越、三愛、そして銀座プレイスが十字の角地にそれぞれ立っている。



日産のショールームだったこの場所に先月の24日にオープンした銀座プレイスは
日産とソニーのショールームとともにカフェやレストランなどが入っている。
外観は白い網目模様のようなデザインで、
夜になると菱形の連続からブルーやオレンジ、白のあかりが見えビル全体の模様がさらにきれいに。
本当に素敵な外観だと思う。

3階のカフェ「ラモ フルータス カフェ」から和光を見る。
テラス席の中央に座った。銀座のパノラマ風景が広がる。

右側の高いシルバーの建物は真珠の「銀座ミキモト」で現在工事中。

今年の3月にオープンした「東急プラザ銀座」も含め
銀座は今、6丁目にあった松坂屋跡地も工事中で大型ビルが次々と変貌を遂げつつある。

「ラモ フルータス カフェ」で注文した
カボチャとアプリコットのグラタン仕立て タルティーヌプレート


宇野亞喜良展 「綺想曲」 銀座三越

2016-10-02 | 宇野亜喜良

宇野亞喜良さんの原画、版画の作品展が三越で開催されている。
今日は宇野さんも会場に。
オリジナルの原画やオブジェなど、やはりどの絵も幻想的で
そこに独特なアイディアが盛り込まれていて引き込まれるものばかり。
そして夢のようなオブジェも記憶では4点展示されていた。



上の葉書は「ピカソとフジタとミロとわたしの猫、そしてコクトーの猫」
少女のスカートにジャン・コクトーの猫が描かれているのが嬉しい。

今日は見に訪れた人も多く大盛況。
宇野さんはとても忙しそうだったけれど
絶えずにこやかで相変わらずスマートだった。

会場で購入した来年のカレンダー 「猫たち少女たち」



       作品展は明後日の10月4日(火)まで