Jean Cocteau
『LES ENFANTS TERRIBLES』
1929年 フランス グラッセ社発行 限定2200部の420番台
コクトーは阿片の解毒治療入院中に17日間でこの小説を書き上げた。
グラッセ社から発行されるや若者から圧倒的支持を受けベストセラーとなった。
数千通の手紙が舞い込み、その反響に驚いたのは部屋で暮らしている
数人の若者のためにこの小説を書いたというコクトー自身だった。
ダルジュロスの投げた雪球はポールの胸に命中した。
少年期のコクトーにとって羨望であり、悪がもつ魅惑として存在したダルジュロスという天使。
天使は白の雪球と黒の毒球をポールに与えた。
下校帰りの他愛ない雪合戦。ポールの姉エリザベートの不運に終わった結婚。
大人が介在しない別世界の若者だけの濃密な時間のはじまり。
それは怠惰で気ままな生活でありながら、彼らにとっては純粋なものであった。
しかしその生活は愛の芽生えと破壊によって崩れる。「部屋の精霊」が致命的な運命を用意していたからである。
ここに書かれている夢想と情熱、そして不安と狂気は、さまよいながらも愛に到達する
コクトーの神話に輝く青春のすがたである。
4月8日の今日はお釈迦様が生まれた日として、お寺では花御堂に誕生仏を安置し、甘茶をかけてこの日を祝う。
釈迦が誕生した時、飛来した竜が甘茶を注ぎ
体を清めると釈迦は立ち上がり、七歩進んで右手で天を指し、左手で地を指して
「天上天下唯我独尊」
と言った姿がこの誕生仏である。
甘茶は無病息災の効果があるとされている。この日は参拝者にも甘茶が振舞われる。
「天上天下唯我独尊」
(てんじょうてんげゆいがどくそん)は、この世に自分ほど尊い者はない。
ひとつの命をいただいた人間ひとりひとりの命は尊い、という意味を持つ。
そして誰もが息災であること。
この年、痛感するように味わった釈迦の言葉、甘茶の味、2011年の花祭り。