
ピンク・フロイドで一番好きなアルバムが何かを考える時、頭を悩ませることになるのは
昨日書いた。では、キング・クリムズンではどうか。
これは全く悩まずに簡単に答えはでる。それは「RED」に他ならない。時代に風穴を開けたという
意味においては1STの果たした役割の方が、歴史的には遥かに重要だろうが、今の私にとっては
何となく詰め込み過ぎというか飾り過ぎのように思える嫌いがある。
その点「RED」は、男気溢れる硬派なキング・クリムズンという印象(それは同時にハードで冷酷という
印象でもある)が強いのと、文字通りレッド・ゾーンまで振り切ってしまったバンドの最高到達点を示す楽曲に
心惹かれる。
「STARLESS AND BIBLE BLACK (暗黒の世界)」も好きなアルバムだ。
冒頭の2曲と『NIGHT WATCH』の前半以外はライブ録音というのが意外な感じがするが、「RED」ほど
ではないが、ここで聴くことができるクリムズンもスリリングで冷ややかである。
そんなアルバムの40周年シリーズが出た。
このシリーズの過去に出た作品同様に、DVDには様々なタイプのDVDオーディオが収録されているが、
私の最大の目当ては73年のセントラル・パークでの映像である。ブートレグではVHSの時代から
劣悪な画像で出回った良く知られた映像であり、興味は今回のDVDの映像でどれくらい綺麗な
画質のものが登場するかであった。実際に見てみるとブートレグのように酷くはないが、ドンピカというほど
でもない。しかしながら、それはこれ以上の画質の物は無いことを意味しているのであり、わずか2曲であるが
オフィシャルで登場したことに価値があると了解しなければならない。
アルバムのボーナス・トラックにはアナログ時代からブートレグ「DOCTOR D」として有名な73年6月23日の
リチャード・クラブでのタイトル曲を含めて計5曲。熱心なファンの方ならブートレグや、クリムズンのHPでの
音源購入等で聴いたことがあるだろうから、余り有り難味はないかもしれないが、『DOCTOR D』を手軽に
聴くことができるという点で便利ではある。
アルバム「暗黒の世界」で使用された73年のライブ音源は、後に2枚組CD「THE NIGHT WATCH」として97年に
発売された。それはそれで十分有難かったが、やはりアルバム冒頭の『THE GREAT DECEIVER』が
無いこと、いやそれ以上に92年に出た4枚組のライブボックスで74年の演奏の強烈さを知っていると、
物足りなく思えるのだから、贅沢なものだ。
4枚組ライブ「THE GREAT DECEIVER」は、私が失業している時にリリースされた。金も無いのに
この箱を手に入れて殺伐とした気分で聴いていたのだが、その時のささくれだった気持ちの高揚を
思い出させるのが、74年の演奏に贔屓目になる理由であるのは否めないが。(笑)
アルバム・タイトルにもなった楽曲『STARLESS AND BIBLE BLACK』はインストであるが、最後のアルバム
「RED」の最終曲『STARLESS』の歌詞に、STARLESS AND BIBLE BLACKという歌詞が登場する。
レッド・ゾーンを超えたら「星ひとつない聖なる暗黒」だったというのが、如何にもクリムズンの美意識に
似つかわしくアルバムの出来云々以上に、「RED」に繋がるこのフレーズ故にアルバム「暗黒の世界」への
思い入れも強くなるというものだ。
さて、70年代のクリムズンのアルバムの中で40周年シリーズで登場していないのは「太陽と旋律」である。
40周年シリーズで発売する際は、是非ともDVDにはビート・クラブでの演奏の完全版を収録していただきたい。
音はこれで十分楽しんだので、次は映像を。(笑)
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