この春3/9に玲小姐さんの歴史散策で目黒ウォーキングをしてきて、頑張って記事アップすると翌日の記事に書いた。もともと目黒散策は、目黒不動尊をはじめとする「目黒七福神」などが面白そうだったので私がリクエストして実現したのに、気力体力の余裕がなくてやはり書けていない。
ランチは「五百羅漢寺」入り口の「らかん茶屋」でいただき、高村光雲に影響を与えたという江戸時代の五百羅漢像が立派だった。
それと、庭に「移動演劇さくら隊原爆殉難碑」があって驚いた(冒頭の写真)。戦時中の国策によって地方への慰問巡演活動のために広島にいて、原爆で被災して全滅した劇団だ(丸山定夫ら9人が8月下旬までに全員死亡)。新藤兼人監督の映画「さくら隊散る」で名前だけ知っていた。
Wikipediaの「桜隊」の項はこちら
さくら隊の前身の苦楽座の結成メンバーである徳川夢声が建立し、碑銘も書いている。背面には柳原白蓮の短歌が刻み込まれているというがよくわからなかった。
8月に入るとテレビでも「原爆・終戦関連番組」というような企画が組まれる。土曜から日曜にかけての深夜にEテレセレクション・アーカイブス「原爆・終戦関連番組」で1991年の現代ジャーナル「原爆とは知らず 女優・園井恵子の戦争」を偶然観ることができた。NHK仙台とあったと思う。「五百羅漢寺」にもポートレートが展示されていて、それと同じ写真が画面に映し出されたのでぐっと引きつけられて観てしまった(上記のWikipediaの「桜隊」の項にも園井のその写真が載っているのでおわかりいただけると思う)。
「原爆とは知らず 女優・園井恵子の戦争」
【出演】小笠原英法,葦原邦子,池田生二,槙村浩吉
1942年に初演された文学座の「富島松五郎伝」で丸山定夫が無法松役で客演。1943年の映画「無法松の一生」(脚本は伊丹万作!)は、松五郎が阪東妻三郎、吉岡夫人が園井恵子。苦楽座時代の「無法松の一生」の各地巡演は丸山が無法松、園井が吉岡夫人。
ということは、当時としてはなかなかのスターだったことがわかる。
園井恵子は元宝塚男役スターだったので吉岡夫人として女らしいしぐさの芝居をするために何度も何度も同じ場面の練習をしていたこと、女優という仕事に人生をかけていたことが伝わってきた。8/6の朝、原爆の光や熱からちょうど遮られるところにいたために額を壁に強く打ちつけるくらいの軽傷ですみ、宝塚時代の友人の神戸の家に高山象三ともに逃れてきたという。ところがしばらくして原爆症を発症し高山が8/20、園井が8/21に亡くなった。髪が抜け、高熱が出てあちこちから出血して腫れあがり、意識朦朧としてついに亡くなっていった様子を看病した友人とその母親が証言していた。女優として顔の出来物ですら気にしていたような園井の最後の姿は無残だったという。
また、自分の母親にあてた手紙には、ちょうど8/6が誕生日でその日に生き延びることができて生き直すことができると感謝しながら、体調がよくなったらと今後への決意を書き記していて、それが絶筆となったという。
本人は自分の症状が「原爆とは知らず」に逝った。戦時中、米軍占領下の情報統制は厳しく、被爆者はもちろん国民全体に、反米感情をもたせないためにGHQプレスコードを敷き、被爆者を定期的にABCCに来させては治療をせず、血液などのサンプルだけを採取してデータだけを集めるという非人道的対応を続けていた。
そんな日本で原水爆禁止の声が上がるのは1954年3月のビキニ環礁での水爆実験で「第五福竜丸」が被災し、築地に水揚げされたマグロなどの魚から放射能が検出され、汚染された魚が食べられないということが社会問題になってからだ。9月には久保山愛吉無線長が「原水爆による犠牲者は、私で最後にして欲しい」と遺言して亡くなった。
あと2年で広島と長崎での原水爆被爆70年となる。まだまだ核兵器はなくならないどころか、拡散してしまっている。そのことを考えて必要なことをそれぞれの国で世界で世論にする力がまだまだ弱すぎる。
私もやれることをやるしかないなぁと思いつつ、こんな記事を書いている。
ネット検索していたら、番組にも登場していた近野十志夫さんのサイトにあった以下のコーナーがみつかったのでリンクしておきたい。
近野十志夫『人物史詩 櫻隊』(補追)の中の「過去の録画ビデオ−1」忘備録として「原爆とは知らず~女優・園井恵子の戦争」
ついでに「目黒七福神」でおみくじ入りの木の人形をそれぞれのお寺で売っていて、弁財天をまつる「蟠龍寺」で撮影したものを以下にアップしておこう。手前に弁財天が揃っていて一つ一つ表情が違うので選んで買うのが楽しい。美しい園井恵子さんへのオマージュということもある。
奥の一列が七福神の勢揃いだ。ちなみに私は「大円寺」で大黒天も買った(薄紫の衣を来て右手に打出の小槌、左肩に大袋を背負っている)が、おみくじは全く同じ文面のものだった。この偶然もすごいけどね(笑)