ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

10/05/28 五月花形歌舞伎千穐楽夜の部(3)22年ぶりの水入りまでの「助六」

2010-05-31 01:04:17 | 観劇

歌舞伎座さよなら公演と2ヶ月続けてかぶらせる演目の第三が「助六」。22年ぶりの上演となる「水入り」までを若い海老蔵がやってくれるというのが最大の楽しみ!
御名残四月大歌舞伎「助六」の記事はこちら
【歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜】「三浦屋格子先」より「水入り」まで
今回の配役は以下の通り。
花川戸助六=海老蔵 三浦屋揚巻=福助
白酒売新兵衛=染五郎 三浦屋白玉=七之助
文使い番頭新造白菊=歌江 揚巻付番新=芝喜松
くわんぺら門兵衛=松緑 福山かつぎ=亀三郎
朝顔仙平=亀寿 通人里暁=猿弥
国侍利金太=市蔵 奴奈良平=大蔵
遣手お辰=右之助 三浦屋女房=友右衛門
髭の意休=歌六 曽我満江=秀太郎

先月は意休だった左團次が口上で出て、襲名披露公演などで「口上の爆弾男」と呼ばれているのとは違ってかしこまってつとめているのが物珍しい。成田屋の「助六」で河東節連中が交代で舞台に出る慣わしだが、先月今月は「十寸見会(ますみかい)」の皆様にご多忙の中で2ヶ月連続でつとめていただいたという千穐楽の口上に、なるほどなぁと感じ入った。そこで敬意をこめて本日の河東節出演者名の看板を撮影したものもリンクしておこう。

千穐楽夜の部は平日なので3階席がとれたものの左列3番で花道はモニター頼み。助六の花道の出のところは「出端の唄」の歌詞(2008年1月の時の記事にリンクあり)をプリントアウトして持っていけばよかったと思うが後の祭り。歌舞伎座の西列で全く見えないのよりはましだが(^^ゞ
先月は白玉で今月揚巻の福助も、笑うところ2箇所で度を越して品を落としてしまう点を除いては予想以上によくて安心した。最高位の女郎の誇りを見せつけての笑いなので品位を保ってやってくれないとガッカリするので、そこを是非工夫して欲しいと思う。満江からの文使いの番頭新造で歌江が、揚巻付番新で芝喜松が出ているのを見るのも嬉しかった。

今月の意休の歌六は初役だというが、なかなか堂々としているし、何よりも台詞が明瞭なのが有難い。最後の方で曾我の三人兄弟は力を合わせるのが大切だと説教して香炉台を友切丸を抜いて切る時の台詞が聞き取りにくいことが多いのだが、今回はちゃんと三兄弟の名前も聞き取れたくらいだ。
高麗屋では珍しく和事のできる染五郎の白酒売新兵衛も安心して見る事ができた。海老蔵の助六の兄にちゃんと見えるし、「喧嘩の稽古」で息が合う様子も嬉しい。ただ二人とも何箇所か声が不安定なのが惜しいところ。特に助六の喧嘩のきめ台詞の最後に「こりゃまたなんのこってぇ」と言うところで、毎回気が抜けた声を出すので聞いているこちらも毎回ずっこける。ここでずっこけるような言い回しでは喧嘩の相手がカッとしないじゃないかと突っ込みたくなる。高音域の不安定ということもあるが、御曹司の海老蔵は子どもの頃に「おまえの母ちゃん出べそ~」とかの挑発的悪口を言ったことがないんじゃないかと思ってしまう。先月の團十郎の「こりゃまたなんのこってぇ」は実に可愛く素晴らしかったなぁと思い出しながらずっこけていた。

くわんぺら門兵衛の松緑も福山かつぎの亀三郎もよかったが、朝顔仙平の亀寿は線が細すぎて色奴の拵えが板についていない感じがした。国侍利主従の市蔵・大蔵も可笑しく、猿弥の通人里暁は品がよくて楽しい。「こんな体型でも通れるかしら」「ダイエットが必要でげすね」とやり、染五郎には「ジュースとコーラとどっちが好きでげす」と聞いて勝手に「コーラ?コーラいいや」と高麗屋の新兵衛誕生を寿いだ。

満江と紙衣を預かった揚巻の出で、紙衣を入れた畳紙を肩において出てくるのは成駒屋のこだわりなのだろうがやはり変な感じがする。秀太郎の満江は細身だが立派で、二人の息子をひれふさせるお袋様だ。
紙衣に着替えてしまったために、意休の友切丸を確認してもすぐに取り返せなかった助六が揚巻の助言で待ち伏せするために花道を引っ込むところで一度幕になり、いよいよ「水入り」の場面へ。

下手に水の満ちた天水桶が置かれ、花道から登場する助六は髪をほどいて紫の鉢巻をしめ白装束。茶屋を出てきた意休主従を襲う。哀れ朝顔仙平は首をはねられて街灯の上に首が乗るのは歌舞伎のお約束。意休もついにとどめを刺されて友切丸を手に入れたが、さっそく追っ手がかかって天水桶に飛び込んでやりすごすという演出が「水入り」。汲み桶の底を抜くところは「うかれ坊主」と重なるが、顔の部分を隠すためとわかってなぁるほど!最近は本水を使う演出の舞台が多いが、全身を水に沈めるのはコクーン歌舞伎くらいじゃないだろうか?それにしてもこの場面の上演が22年ぶりになったのがよくわかった。助六をやれる役者が若くて健康でないと無理だろう。

揚巻が傷の痛みで気絶した助六を帯に水を汲んで介抱するのもなかなか贅沢な場面。追っ手から打掛に隠してかばい、バレても揚巻の言うことだからいないことにしろと言いたて、従わせてしまうという展開にもちょっと驚く。まぁ、追っ手も人気者の助六を捕まえたくないという設定でもあろう。
天水桶の梯子を使って屋根づたいに浅草田圃へと逃げろと揚巻の助言。助六が梯子に登って上下に極まっての幕切れ。いいもんを見せてもらいました!感謝!

写真は、今月の筋書の表紙。明治時代の絵だというが、定式幕の色が新橋演舞場の色と同じだ。そんな意味もあるかな?!
「五月花形歌舞伎の演目を眺め渡す」記事はこちら
5/22昼の部(1)「寺子屋」 
5/22昼の部(2)「魚屋宗五郎」 
5/22昼の部(3)「吉野山」「お祭り」
5/28千穐楽夜の部(1)「うかれ坊主」
5/28千穐楽夜の部(2)「熊谷陣屋」