街に出てきた。
一番の目的は、S 書店で、月々購入している雑誌を受け取ることだった。
ついでに、<ホール友の会>の更新を済ませておこうと、グラントワに立ち寄った。
バス停下車の都合で、まずグラントワに行った。
更新手続きを済ませた後、今、特別見たいものはないはずと思いながら、それとなく係員に尋ねると、
「特別展として<平成の萬福寺出開帳展>を開催中です」
とのことだった。
のぞいてみることにした。
<二河白道図>(鎌倉時代の仏画、国重要文化財)が飾られていた。
一室に一点、一幅の掛け軸が掲げてあるだけの贅沢な展示であった。
作品に対面する壁にはパネルが用意され、解説文が掲示してあった。分かりにくい仏画の意味する世界を、小学生にでも理解できるように易しく解説したものから、順次、難度をあげて説明してあるのだった。気の聴いた試みだと感心した。
展示された仏画は、視力の衰えもあるのか、ガラスケースも邪魔しているせいか、細かいところまでは見にくかった。
そもそも、今まで、仏画への関心が乏しく、目を凝らしてみるような見方はしたことがない。ただ今回は、解説の力を借りて、仔細に眺めた。
仏画を通して、仏教の教えがどの程度浸透したのだろう?
鎌倉時代、仏教の教化には、言葉だけでなく、仏画による視覚的な効果も考えられたのだろうか。
ついでに、現在展示されている、他の部屋の展示物も見てまわった。
<KITTY EX. ハローキティとアート ファッションの幸福なコラポレーション展>(写真)
かわいいキャラクターとしてのキティが、絵画、写真、デザイン、服飾、影像など、様々に生かされいた。どこを眺めてもキティのいる空間を、それなりに楽しんできた。
かわいいものを見て、心和まない人はいないだろう。ひとりでに、表情を緩ませて歩いていたに違いない。
キティの存在が多くの作家の心を揺さぶることや作家それぞれの着想の面白さにも、感心しながら……。
今日は、私のために美術館が存在しているかのようであった。どの部屋に入っても、観覧者は私ひとりであった。(部屋の角に座る係員の姿はあったけれど。)
<名画への招待>には、「鑑賞のポイント」を掲げる工夫がなされていた。
今までに見た作品も多かったが、名画は幾度見てもいい。
<感動の日本画、癒しの日本画>の部屋に入った辺りから、急に右足に疲れを覚えた。ここ、二、三年、長く断ち続けると、足の指の付け根に痛みが生じるのだ。ひととき長椅子に腰掛けて休んでみたが、症状の回復が鈍いので、壁面を見渡しただけで、部屋を後にした。
その後、S 書店には立ち寄ったけれど、いつものようにスムーズに歩けなかった。足先の痛みが腰の辺りに向けて走る感じがした。その他の用は後日にと考え、最寄の停留所からバスに乗って帰宅を急いだ。
私の体のあちこちに、<いじめ虫>が潜んでいるらしい。さて、この対策はどうすべきか? こうして不具合にいやおうなく慣らされながら、人は老いの道を歩んでゆくのだろうか。