図書館前の鉢に咲いていた花。(写真)
こちらは、園芸趣味の人なら、一目で花の名前が分かるだろう。よく見かける種類のように思う。しかし、私は、その名を知らない。
この花のすぐ近くに腰を下ろし、タバコを吸っている人がいた。休憩時間、外に出て、図書館の日陰で、しばし寛ぐ感じで。
私は、多分図書館勤務の人だろうと思い、木の名を尋ねるには格好の人に出会えたと喜んだ。が、確かめてみると、そうではなかった。
逆に、
「○○さんですね」
と言われ、よく見ると、かすかに顔に見覚えがあった。
20年以上前の知己であった。少年から青年の顔に変わってはいたが、面影が残っていた。郵便局に勤務しているのだ、ということであった。
往時の話をひとしきりした。
花の名を確かめることはできなかったが、思いがけぬところで昔年の知己に会った。私が、図書館の人かと尋ねなかったら、そのまますれ違うことになったであろう。
人と人との出会いは不思議である。思いがけず縁を深めたり、無縁に終わったり……。
図書館には二時間いた。
「月魚」という題に惹かれて手に取った小説は、三浦しをんの作であった。
名前は聞いたような気がするけれど、どんな作家かは知らない。あとがきを読んでみて、文章からすぐ若い作家であることが想像できた。
<緊張のあまり、借りてきた死にかけの猫みたいに大人しい私>と、編集者(だったと思う)に会ったときの自分を表していた。気取った比喩を使う人だな、と思いながら、「月魚」を読み始めた。
古書業界が小説の舞台である。まるで知らない世界なので、興味を抱いた。同時に男性世界の人間間関係を描こうともしているようだ。
続きは、次回図書館で読むことにし、借りずに帰った。
こちらは、園芸趣味の人なら、一目で花の名前が分かるだろう。よく見かける種類のように思う。しかし、私は、その名を知らない。
この花のすぐ近くに腰を下ろし、タバコを吸っている人がいた。休憩時間、外に出て、図書館の日陰で、しばし寛ぐ感じで。
私は、多分図書館勤務の人だろうと思い、木の名を尋ねるには格好の人に出会えたと喜んだ。が、確かめてみると、そうではなかった。
逆に、
「○○さんですね」
と言われ、よく見ると、かすかに顔に見覚えがあった。
20年以上前の知己であった。少年から青年の顔に変わってはいたが、面影が残っていた。郵便局に勤務しているのだ、ということであった。
往時の話をひとしきりした。
花の名を確かめることはできなかったが、思いがけぬところで昔年の知己に会った。私が、図書館の人かと尋ねなかったら、そのまますれ違うことになったであろう。
人と人との出会いは不思議である。思いがけず縁を深めたり、無縁に終わったり……。
図書館には二時間いた。
「月魚」という題に惹かれて手に取った小説は、三浦しをんの作であった。
名前は聞いたような気がするけれど、どんな作家かは知らない。あとがきを読んでみて、文章からすぐ若い作家であることが想像できた。
<緊張のあまり、借りてきた死にかけの猫みたいに大人しい私>と、編集者(だったと思う)に会ったときの自分を表していた。気取った比喩を使う人だな、と思いながら、「月魚」を読み始めた。
古書業界が小説の舞台である。まるで知らない世界なので、興味を抱いた。同時に男性世界の人間間関係を描こうともしているようだ。
続きは、次回図書館で読むことにし、借りずに帰った。