このところ、どこの山も美しい。
山口からの帰り、山々によって、木の種類がかなり異なることに気づいた。それを感じさせるのは、新緑の季節であればこそ、なのであろう。
山口周辺には、黄色い木々が目立つ。山の一部がまるで黄色に彩られているのだ。しかし、近辺の山々が同じ彩かといえばそうでもない。山によりけりであるのも面白い眺めであった……。植物の植生ということを思ってみたが、山の木々のことはよく分からない。
山口線の沿線や国道周辺の山々には、四月、白い辛夷の花を沢山咲かせる山と、そうでない山とがあることに、近年気づいている。
今年は、黄色い花を咲かせて盛り上がる山と、そうでない山とがあること、さらに、山によって黄色の粗密さにも、違いのあることに気づいた。
何しろ、遠景なので、その花の実体は、よく分からないのだが…。
津和野の稲荷神社の境内近くにも、やはりもこもこと花を咲かせた木があった。(写真)
しかし、この木の花は、黄色より地味な色をしている。
この時期、山々が生命力に溢れ、華やいで見えるのは、葉の色によるものばかりでなく、木々の花の色が、山の彩色に大きく関わっているようだ。
友人も私も、木々の種類の見分け方に疎く、せっかく木々が、自らの個性を最も発揮しているこの時期なのに、その見分けのできないことを残念に思った。
昨日、読売新聞に、あの黄色い木の正体を明かす記事があったと、友人から電話があった。
<スダジイ>というらしい。
早速、木の本を開いてみた。ブナ科のシイ属で、5、6月ごろ黄色の小さな花が枝先に集まり、穂状の花房を下げる、とある。なお、果実はドングリ、生で食べられる、とも記されている。
友人の説明とほぼ同じである。
花の咲く頃、匂いを発すると、友人の説明にはあったが、私の見た二冊の本には、その説明は載っていなかった。
とにかく、山が黄色く見えるのは、スダジイの存在によるものに間違いあるまい。
子供の頃、神社の森で、小ぶりのシイの実を拾って食べた。白い実を食べると、素朴な山の味がした。多分、あれは、スダジイの実だったのであろう。
写真に収めた稲荷神社の木も、ブナ科のシイ属には違いないかもしれない。ただ、花の色からして、スダジイではなさそうだ。