「もー、僕いやー」と、前代未聞の政権投げ出しをした、安倍晋三ボッチャマではあるが、唯一評価したいのが憲法へ国 民の目を向けたことである。NHKなどは、特別番組をいくつも組んでくれた。憲法の作成過程の特別番組を数編制作したり、長時間の討論番組も行った。
出版業界も、この1年で洪水のように憲法に関する書籍が出版された。改憲、護憲を問わず憲法に関して、これほどのいわばブームのようなことが起きた。私などは、10数冊の憲法に関する本に目を通した。
4年前に結成された、9条の会も護憲派を活気付けた。全国に6000ほどもの、9条の会が結成された。当地、北海道 の東の果ての片田舎でも、9条の会を結成して毎月集会を開いている。とりわけ、9条について危機感を多くの国民が抱いたのは、安倍ボンの功績と言えよう。
どの世論調査でも、憲法を変える必要があるとする人たちが半数を超えてはいるが、9条に限るとちょうど数字が逆転する状況で、過半数の人が平和憲法の重要性を認識している。国民投票法が、かなりいい加減な内容で成立したが、その後の経過をみると、彼が目論んでいた5年後の改憲は不可能となった。
もう少し長い目で見ても、当分憲法に関する論議は改憲派にとっては困難な状況であることが、露呈したと言える。安倍ボンのお気に入りの、右翼の改憲派ばかりを集めた、結論ありきの「有識者」による、集団的自衛権の検討も平和憲法に対する危機感を、国民に与えてくれた。
安倍ボンが、改憲や戦後レジュームの脱却と言い始めてくれたおかげで、今のこの国の平和が再認識された感がある。何はともあれ、この国は戦後60年以上にわたって、一度もただの一度も外国を侵略しなかったし、一人も殺さなかったことを再認識させてくれた。
教育の憲法である基本法を変え、27回も強硬採決をし、防衛庁を防衛省に昇格させた安倍晋三に、敵意と皮肉をこめて、国民に憲法の存在を認識させたことにお礼を言いたいものである。