解説
「ある子供」「ロルナの祈り」「少年と自転車」などカンヌ国際映画祭で受賞を重ねてきたベルギーのダルデンヌ兄弟が、過激な宗教思想にのめりこみ教師を殺害しようと試みた少年の姿を描き、2019年の同映画祭で監督賞を受賞した人間ドラマ。13歳のアメッドはどこにでもいるゲーム好きな普通の少年だったが、尊敬するイスラム指導者に感化され、次第に過激な思想にのめりこんでいく。やがて学校の先生をイスラムの敵だと考えはじめたアメッドは、先生を抹殺しようと企むが……。これまでにカンヌ国際映画祭で2度のパルムドール(「ロゼッタ」「ある子供」)と脚本賞(「ロルナの祈り」)、グランプリ(「少年と自転車」)を受賞してきたダルデンヌ兄弟にとって、初のカンヌ監督賞受賞作となった。(映画.comより)
<2021年12月10日 録画鑑賞>
怖かった、本当に怖かった。まだ子供、しかも学習障害(?)の傾向があった男の子アーメッド。毎日教えてくれた熱心な女性教師のおかげで、やっと人並みに(表現悪くてごめんなさい)勉強ができるようになったのに、そしてゲーム三昧な、ごくよくある子供だったのに、ムスリムのある指導者に取り込まれてしまいます。コーランは絶対だ、アラーは偉大なり、そして他の宗教は敵だと洗脳され、すべての人はアラーを信ずるべきで、それに反対するような奴は間違っていると思い込むようになります。そして、やがて彼を助けようとしてくれていた女性教師を「殺さねば」と思うようになるのです。
<ここからネタバレ>
事件は未遂に終わり、彼は少年院に入れられます。しかし、そこでも考えが改まることはなく、農業実習などスタッフはみんな親切にしてくれるのに、なお遂行するべきと思い込み、歯ブラシをこっそり削りながら優等生を演じるようになります。プラスチックの歯ブラシがすっかり尖り、人々が「彼は更生してきている」と油断したころ、脱走。塀をよじ登って放課後教室に侵入し、女性教師を殺害しようとします。なんでそこまで・・・。宗教を信仰しながら、人を殺すということがどういうことなのか、わかってないのでしょうか。皆、本当に親切にしてくれているのに。若い人の更生を本当に願っているのに。悲しいですね。
ラスト、窓のサンが取れて落下してしまったアーメッドは、「ママ」と言って泣いていたけれど、果たしてあの時改心したのでしょうか。私は、物音を聞いて女性教師が駆けつけてくれた時(落ちたアーメッドは動けなかった。かなり打ち所が悪かったはず。運が悪かったら障害を負ったかもしれないほど)、さらに刺すのかと思いました。映画はそこで終わるので、アーメッドが改心したかどうかはわからないのですが(女性教師の手に触れていたから、改心したことを表していたのかもしれませんが)、脱走したうえ、凶器を持って侵入していたわけですから、もう自由になることはないのかもしれません。なんで、いたいけな少年がここまで洗脳されるのかと、悲しみは止まりません。