田舎に住んでる映画ヲタク

「映画大好き」の女性です。一人で見ることも多いけれど、たくさんの映画ファンと意見交換できればいいなぁと思っています。

彼が愛したケーキ職人(The Cakemaker)

2019年02月03日 16時39分58秒 | 日記

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 イスラエルの若手監督オフィル・ラウル・グレイツァ監督が、同じ男性を愛した2人の男女の姿を描き、イスラエルのアカデミー賞といわれるオフィール賞で9部門にノミネートされたほか、国外の映画賞でも多数の映画賞を受賞した作品。ベルリンのカフェで働くケーキ職人のトーマスと、イスラエルから出張でやって来る妻子あるなじみの客オーレンは、いつしか恋人関係へと発展していった。「また1ヶ月後に」と言って、オーレンは妻子が待つエルサレムへ帰っていったが、その後オーレンからの連絡は途絶えてしまう。オーレンは交通事故で亡くなっていた。エルサレムで夫の死亡手続きを済ませた妻のアナトは、休業していたカフェを再開させ、女手ひとつで息子を育てる多忙な毎日を送っていた。アナトのカフェに客としてトーマスがやってきた。職を探しているというトーマスにアナトは戸惑いながらも雇うことにするが……。(映画.comより)

 

 

 

 

 なんて優しい映画。こんなに優しい映画は久しぶりな気がします。話の設定上、受け入れられない方ももちろんいらっしゃるかと思いますが、私は好きです。もし自分が妻であっても、トーマスであっても、彼(オーレン)を愛せると思うし、また、自分がオーレンであっても、妻とトーマスが仲良くなることを喜べると思います。「そんなことは、想像の範囲だから言えるのだ」と言われるとそれまでですが、私も長らく自分とつきあってきたので、やっぱりそうだろうと思うのです。

 イスラエルの映画は「ハンナ・アーレント」や「オオカミは嘘をつく」「ハッピーエンドの選び方」や「パラダイス・ナウ」、あと「シリアの花嫁」とか「スペシャリスト/自覚なき殺戮者」なんてのも見ました。どれも見ごたえがありましたね。公開数が限られているから、厳選されているのかもしれませんね。「ハンナ・・・」と「スペシャリスト・・・」は同じ題材を扱ったもの。ハンナの「悪の凡庸」という言葉にはうなったものでした。「ハッピーエンド・・・」もよかったですね~。笑わせてホロリとさせて。歳を取って死ぬ、とはどういうことかと考えさせられました。

 さて、この映画です。舞台はエルサレム。みんな、厳格なユダヤ教徒です。そんな中、妻と息子が一人いるビジネスマンのオーレンは、時々出張でドイツへ赴き、ある時ふと立ち寄ったカフェでケーキ職人のトーマスと出会うのです。腕のいいケーキ職人であるトーマスと、親交を深めるうちに恋に落ち、ドイツにいる間は一緒に過ごすようになります。でも、ある時を境にドイツに帰って来なくなるのです。取り乱すトーマス。そして、その理由を知ったトーマスは、落ち着きを取り戻したころ、エルサレムの彼の妻のカフェを訪ねるのです。取り乱していたのは、突然夫を失った妻とて同じこと。それでも、生活は続き、子供も育てていかねばなりません。なんとかカフェを再開した妻アナトは、「仕事を探している」というトーマスを雇います。

 腕のいいトーマスのおかげで、お店は繁盛。アナトの心も少しずつほぐれていきますが、事実をいつまでも隠しおおせるわけもなく、ユダヤ教の厳しい戒律も相まってトーマスは行き場を失います。

 無知な私は、この映画で「異教徒はオーブンでものを焼いてはいけない」などという決まりを始めて知りました。日本人にとっては「なにそれ」レベルのつまらないことだと思うのですが、オーレンの息子の誕生日にと、黙ってクッキーを焼いたトーマスはアナトと共に、アナトの兄に責め立てられることになります。また「女一人だから」という理由で、男性(今回は兄)がいちいち干渉してくるのがとてもウザイと思いました。それも、宗教がら男性優位なのか(たぶんそう)偉そうに説教するのです。人が立ち直ろうとしているときに。見ていて腹が立ちました。放っておいてほしい。女だって一人で生きて行ける。と思うのは、私が日本人だからで、ずっとそういう環境で生きていると、男性家族に干渉されてもそんなものだと思うのでしょうけれど。

 トーマス役のティム・カルクオフは、新人らしいのですが、色白の肌やガタイの良さなど、見るからに”ドイツ人”で、若いけれども無口な職人がとてもハマっていて説得力がありました。また、ガタイが良くても、そこはかとなく繊細さを漂わせていて、唯一無二の存在感でしたね。これからを期待します。

 次々と登場するスイーツは、目にも鮮やかでとてもおいしそう。「私も行きたい!」と思わせます。後から何かで読んだのですが、色彩が統一されているのだそうです。エルサレムでは、登場時間は短いのですが、オーレンの母親も出てきます。彼女のトーマスに対する態度が秀逸です。やっぱり母親って、素晴らしい。

 映画全体が、優しさのベールをまとったような仕上がりでした。ラストシーンも、私は好きです。個人的にはハッピーエンドだと思っています。あ~スイーツの食べ歩きを始めようかな。

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