歯科麻酔には「手術する場所と麻酔の管が通る場所が同じ」という特色があり
ます。
ですから歯科の手術を熟知していないと麻酔がうまくかけられません。
ここに歯科麻酔学の独自性があります。
麻酔をかけることに関しては体の手術の方がやりやすいそうです。
手術する人と麻酔をかける人が違う場所にいるからです。
以前、歯科医が体の手術の麻酔を研修で行うことは違法であるという判例が
ありました。
医師法では「医師でなければ医業を行ってはならない」と定めていますので、
体の手術の全身麻酔を歯科医が行ってはならないことになります。
が、口腔外科の全身手術の麻酔は歯科医業なので歯科医が行ってもよいことに
なっています。
ところがこの全身麻酔は体のどこの手術を行うにせよ、同じものです。
「歯科医業であれば歯科医が全身麻酔を行ってもよい」というルールが甘いのか、
「医業であれば歯科医は全身麻酔を行ってはならない」というルールが厳しすぎる
のか。
歯科麻酔はこのハザマに漂っています。
歯科医といっても「歯科麻酔医」は全身を管理する訓練を受けています。
この訓練は、歯学部の医学教育が足りないために、医業の中で受けた方が
はるかに身になります。
ですから医業の中での麻酔研修を奪われた歯科麻酔医の行く末が案じられます。
麻酔医の指導の下で、適切に歯科医が麻酔研修を受けられるシステムを構築
してもらいたいものです。