「医者」と名の付く人種には、患者さんの病気が治ることに生きがいを感じる人が
多いです。
ですから、治療して治る可能性があるとほうってはおけなくなるものです。
ところが患者心理としては、治療しなくてすめばなるべく何もしたくないと思うのが
普通です。
ここに医者と患者の気持ちのギャップがあります。
簡単な治療であればまだ良いのですが、手術のような大げさな処置になるとその
ギャップはさらに大きくなります。
外科医は治るのであれば手術をしたくてたまらないでしょうし、患者としてはなる
べく手術を避けたいでしょう。
さて歯科医も技術職ですから、高度な技術を要する治療には胸躍るときがあり
ます。
「こだわり」をもってより完璧な歯を作りたくなるでしょう。
ただ、「こだわり」を持って治療すると手間と時間がかかることが多いです。
ところが患者さんの中には、「そんなに完璧な歯を入れなくても良い」と思っている
方もいらっしゃいます。
そういう方にはこだわりの時間は無駄な時間となります。
治療方針は患者さんの意に沿って初めて正しいものになるので
医者は可能性のある治療方針をすべて提示して、患者さんが自分
の責任において治療方針を選択することが重要であると考えています。
というのは、医者に手術を勧められている患者さんがいらっしゃいました。
その患者さんと話していると、「そうですよね。手術はなるべくしたくないです
もんね。」と同感します。
でも自分がその外科医だったら手術をしたがるのではないかと、ふと感じました。
立場が違うと、思いも変わってしまうものですね。