今週の法話

法華宗北海寺住職-二王院観成による仏教用語と法話集です。毎週水曜日に更新いたします。

原発継続か代替エネルギ-か?

2011-07-02 09:10:29 | 幸福の追求
 現在、原発の存廃論議が盛んになってきている。この論議をする前に、
過去の原発事故を正確に知る必要がある。1989年4月に起きた最悪と
いわれたチェルノブイリ原発事故を例証として見てみよう。
(1)場所
   ソ連の内陸地のウクライナの湖のほとりに原発が位置していた。半
   径30kmの地がまるまる事故に巻き込まれた。現在も居住禁止と
   なっている。福島第一原発は海岸に位置しているため、近隣被害は
   半分といえるだろう。
(2)事故の原因。
   事故発生時、4号炉で動作試験中であった。予期せぬ事態と、責任
   者の不適切な対応などから炉が不安定となり、メルトダウンののち
   爆発した。
(3)事故発生当時の対応。
   当時のソ連の最高意思決定機関である共産党中央委員会政治局会議
   に、原発担当大臣が「大丈夫です」と報告したため、対策が遅れた。
   今回の福島大地原発事故の対応と酷似している。また、ソ連政府は
   住民のパニックや秘密漏洩を恐れて、上記の事態を公表や避難指示
   をしなかった。このため付近住民は多量の放射能をまともに受ける
   ことになったのである。どこかの国に似ている。
(4)死者数。
   直後は203人が即座に入院、内31人が死亡したが内28人が急
   性放射線障害だったという。長期的には、放射線被曝と癌や白血病
   等による死者は、数百人とも数万人とも云われている。
(5)避難民。
   プリピチャ地域から135,000人が避難させられた。内訳は、
   30km以内の住民11万6000人が即座に強制避難、高濃度に
   汚染されたホットスポットが非難対象となり、住民数十万人が移転
   させられた。計40万人超が移転を余議なくされた。
(6)ホットスポット。
   半径350km以内に約110箇所のホットスポットができ、農業
   の無期限停止と上記の移転措置が取られた。
(7)健康被害。
   IAEAの報告によると、事故発生時に0才~14才だった子供の
   1,800人が甲状腺癌になったと報告されている。汚染された牛
   乳を通じ,甲状腺に蓄積された放射性ヨウ素が原因だったという。
   また子供は身体および器官が小さいため、大人よりも累積線量が高
   くなるためだからである、と云われている。また、270万人が事
   故の影響を受け、1985年から2000年に汚染地域のカル-ガ
   で行われた検診では癌が増加し、乳癌が121%,肺癌が58%、
   食道癌が112%、子宮癌が88%、リンパ腺と造血組織で59%
   増加した。なお、白血病は被曝から発病まで平均12年、固形癌に
   ついては平均20~25年以上かかることが分かっている。さらに、
   セシュ-ム137などによる土壌汚染は表層にあり、植物、昆虫、
   キノコなどに吸収され、食料生産に入り込み、やがて人体に入るこ
   とになる。この他、呼吸によって体内にはいる体内被曝の心配もあ
   る。
 (以上、フリ-百科事典 ウィキペディア。チェルノブイリ原子力発電
  所事故)参照。

 あるテレビで日本の原発の権威者なる人物が、広島や長崎の原爆投下や、
核実験などによる被害は、今になって思えば、大したことはなかった、と
いう意味の発言をしていた。この見解は、問題の本質を知らなすぎる。現
在進行中の地球劣化は、化石燃料等による温暖化だけが原因ではない。地
球の大気自体が劣化しているのである。いわば薄い毒ガス室の中で人類は
笑いながら生きているようなものである。その濃度は年々濃くなる一方で
ある。その原因の一つに核実験や原発などによる放射能の影響があること
を故意に無視した発言としか思えない。さらには水質汚染、土壌汚染など
数え上げれば限がない。
 原発継続か、代用エネルギ-か、という結論であるが、今すぐに原発を
廃止するのは、工業等の生産活動に与える影響が多きすぎる。したがって、
徐々に原発を廃止し、代用エネルギ-に移行すべきではなかろうか。一番
の問題点は、社会生活や生産活動に不足をかけないだけのエネルギ-を確
保できるのであれば、代用エネルギ-の方が理想的だ、ということは間違
いない。いずれにしても、真実を知った上で論議すべきであろう。貨幣経
済の世界である以上、最終的には経済的な判断が優先されるのは人類とし
ての進化を阻んでいる一番の原因だと考える。


   

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