うぉんばっとな毎日

大用、現前するとき、軌則を存せず

最近、取り込んだCD

2018-12-31 19:58:37 | 音楽


ちょこちょこと取り込んでおり、現在こんな感じです。夜中に聴くことが多いせいもあってジャズが多いですね。コメントを。

「Waltz For Debby」:スコット・ラファロのベースを猛烈に聴きたくなることってありません?
「Beethoven Symphonie No.5」:クラシックのCDに部屋を占拠された友人に、フルヴェンで何か、と聞いて、まずはこの辺をと「バイロイトの第九」とともに推薦してもらったやつ。どちらも超絶有名盤。エグモントがえぐい。
「Ballads」:ご存知Balladsです。確か身辺整理をしていた知り合いからもらったはず。
「Yellow Submarine Songtrack」:発売当時に音質が良いかなんかの口車に乗せられて買ったやつ。
「A Boy Full Of Thoughts」:試聴コーナーにありました。
「Thelonious Himself」:昔は、分かりにくいなあ、と思っていたこの盤も時が経つと聴けるようになるんですね。
「Art Pepper meets The Rhythm Section」:当時の彼女(今の妻ですが)との初デートの際の待ち時間に買ったやつ。
「Chet」:若かりし頃はもっとはっきりした演奏が好きで、ひたすら甘ったるいこの盤は苦手だったのですが、今になって聴くと案外大丈夫。
「Undercurrent」:買った当時もそれなりに聞いていたはずなのですが、最近聴いてみて#1 My Funny Valentine [Alternate]の尖ったアレンジの格好良さにしびれました。
「Intermodulation」:こっちは本当によく聴いていたらしく、久しぶりに聴いて懐かしさに死にそうになりました。
「Beethoven: Great Piano Sonatas」:ブーニンはショパンのワルツ集とかは持っていたのですが、急にベートーベンを聴いてみようと思って確か昨年買ったんですよね。
「Miles Smiles」:何か忘れましたが、このアルバムをマイルス・デイヴィスの最高傑作と評しているのを読んだことがあってそれならと買いました。

ネオリアリズムはオーストラリアで種牡馬入り

2018-12-27 20:18:21 | 競馬日記
ネオリアリズムはオーストラリアで種牡馬入りするそうですね(記事)。日本ではGIを勝てませんでしたが、香港のQEIICを勝っています。

母はトキオリアリティー。芝ダート問わず1600m以下を走り3勝。条件クラスどまりだったのですが、勝つときの勝ちっぷりが良かったからか(ダート1400mで5馬身差つけて勝ち上がり、2勝目も芝1200mで5馬身差)、評判の馬だった記憶があります(この記事では無名馬風に書かれていますが)。
配合は父Meadowlake×母父In Realityで、あのMeadow Starと同じです。残り1/4にMy Babuを含むところも同じ。Northern DancerどころかNearcoすら持たないところも同じです。Meadow Starは直仔には活躍馬を出せませんでしたが、曽孫に2016年、2017年と2年連続WBRR1位に輝いたArrogateを出しています。
トキオリアリティーは繁殖成績が素晴らしく、オーシャンS(GII)勝ちのアイルラヴァゲイン(エルコンドルパサー産駒)、安田記念、ジョージライダーSと日豪のGIを制したリアルインパクト(ディープインパクト産駒)、そして本馬と、異なる種牡馬を相手に2頭のGI馬を含む3頭の重賞勝ち馬を出しています。

ネオリアリズムは父もNorthern Dancerを持たないネオユニヴァースであり、特殊な配合だと言っていいと思います。さらにMr. Prospectorもありません。日本で種牡馬入りしていても、自分の牧場の繁殖に合うか検討する価値のある種牡馬になったのではないでしょうか。
オーストラリアで、ということになると、当地では母父Meadowlakeと同じHold Your Peaceのラインがまだ頑張っており(Success Expressの仔Mossmanとか)、日本で種牡馬入りした場合とは違う面を見せる可能性があるように思います(リアルインパクトはオーストラリアにシャトルされており、こちらも注目です)。Northern DancerもMr. Prospectorも持たないという貴重さは当地でも珍重されることでしょう。

ブラストワンピース

2018-12-24 01:36:34 | 競馬日記
有馬記念を制したのはシルクの勝負服のブラストワンピースシルクジャスティスみたいだなととっさに思った人が多いと思いますが、GI未勝利の3歳馬が有馬記念を勝つのはシルクジャスティス以来とのことです。

父はDansili産駒ハービンジャー。Kジョージでの圧勝劇がまだ記憶に新しいですが(といっても2010年のことですか、時が経つのは早い)、そういえば、先日、Champs Elyseesが亡くなったというブログを書いたのでした(ブログ)。DansiliはChamps Elyseesの全兄であり、ブログ中に名前を出しています。冠婚葬祭馬券は買え、みたいなのがありますが、実はこっそりサインが出ていましたか。

母ツルマルワンピース、祖母ツルマルグラマーともにGI出走経験があるので、名前は記憶に残っています。曽祖母の輸入繁殖牝馬エラティスの仔に日経賞(GII)を勝ち菊花賞と天皇賞春の2つの超長距離GIで2着があるアルナスラインがいますが、ブラストワンピースはエラティスの子孫で初のGI馬になりました。めでたいですね。

ブラストワンピースは中島理論的に見れば、父と曽祖母父がゼロで、全力で要注意という配合になっていますが、そういう話はこちらに譲りましょうかね(雪の家雑記帳)。
それで、クロス馬的なところを見ていこうと思うのですが、その前にハービンジャー産駒GI馬を挙げると、ディアドラモズカッチャンペルシアンナイトに続く4頭目ということになります。共通の特徴は、Northern Dancerの豊富さ(母内Northern Dancerクロスなしはペルシアンナイトだけだが、ペルシアンナイトは祖母がNorthern Dancerクロスを持つ)とNijinskyクロスでしょうかね。父ハービンジャー×母父キングカメハメハはブラストワンピースとモズカッチャンの2頭。
で、ようやくクロス馬を見ると、まずNorthern Dancer 5. 5. 6. 7 X 5. 6. 6. 8、Nijinsky 6 X 7があり、主導は位置関係からNorthern Dancer系列ぐるみだと言いたくなります。他にはHis Majesty = Graustark 5 X 5. 7、Le Fabuleux 6 X 5がありますね。Le FabuleuxはWild Risk、Rialtoもクロスし、若干特殊なKsar、Dark Legendを含み、BlandfordでNorthern Dancerと結合しています。なかなか魅力的です。ただし、Le Fabuleux内はBlandfordが8代目ですが、Nothern Dancer内は10代目で、9代内で見ればArctic TernのAlmahmoud内9代目にあることによって救われています。BlandfordにしてもNijinskyとNorthern Dancerにしても、位置関係でチグハグなところがありますが、それでいて全体的な破綻はないんですよね。この辺のところ、案外うまくできていています。悪くない配合なんですよね。

2着はレイデオロ。キングカメハメハ産駒です。ブラストワンピースの母父もキングカメハメハで、キングカメハメハ向きのレースになったのでしょう。重要な種牡馬です。

本レースには障害レース界のスター、オジュウチョウサンが出走していました。16頭中9着でしたが、このメンバーに入って普通に走った訳で、全く悪くない結果でした。

Champs Elysees死亡

2018-12-21 18:28:37 | 競馬日記
Champs Elyseesが亡くなったそうですね(記事)。

北半球においてGI馬を4頭以上出した繁殖牝馬は今まで6頭で(ブログ)、その中で唯一5頭のGI馬を出したのが母のHasiliになります(この辺、情報古くないですよね?)。
HasiliはDanzig系、特にDanehillを父として駿馬を連続して産み、初仔が重賞勝ち馬で名種牡馬のDansili(Danehill産駒)、1年産駒なしで、Banks Hill(Danehill産駒)、Heat Haze(Green Desert産駒)、Intercontinental(Danehill産駒)、Cacique(Danehill産駒)と4年連続でGI馬を出し、1年また産駒なしでその次がChamps Elysees(Danehill産駒)になります。

Champs ElyseesはHasiliの出した最後のGI馬になります。記事にあるように当初はフランスのファーブル師のところで管理され、そこでも重賞を勝ちましたが、GI勝利はアメリカのボビー・フランケルのところに移籍し、北米に主戦場を移してからでした。ノーザンダンサーS、ハリウッドターフC、カナディアンインターナショナルSと3つのGIを勝利し、2009年にはカナダのソヴリン賞年度代表馬に選ばれました。
Juddmonteで種牡馬入りしたのですが、2017年にCoolmoreに買われたそうですね。1000ギニー馬Billesdon Brook、アスコットGCの勝ち馬Trip to Parisを出しています。Billesdon Brookは曾祖母が独オークス馬Anna Paolaで、レットゲン牧場のAラインという魅力的な血統背景を持ちます。Trip to Parisはセン馬。後継種牡馬はいるんでしょうかね。これからに期待なのでしょうか。

全兄CaciqueはDominantMutual TrustSlumberとGI馬を輩出しましたが、2016年に種牡馬引退したそうです(記事)。そのうちSlumberはカルメットファームで種牡馬入りしています。最も種牡馬として成功した全兄Dansiliも今年種牡馬引退(記事)。母Hasiliも今年亡くなったそうです(記事)。一気にさみしくなってしまいました。
GalileoSea the Starsを出し、自身のクロスを持つダービー馬Masarを出したUrban Seaは凄すぎるわけですが、Hasiliの血を持つ馬も十分に繁殖方面で活躍したと言っていいと思います。

それにしてもPaulick Reportは便利ですね。そういう話題の記事がないかなと思って検索したらたいていあるという。

カルロスペレグリーニ大賞典とホアキンSデアンチョレーナ大賞典

2018-12-18 19:47:20 | 競馬日記
カルロスペレグリーニ大賞典を勝ったのはIl Mercato。Caroの系統のNot for Sale産駒です。2015年に亡くなっており、本馬が最後の世代になります。Not for Saleはアルゼンチン産で、産駒のAsiatic Boyはドバイ3冠馬となる国際的活躍を見せました。
Caroの系統で最近の活躍馬と言えばVision d'Etatがいますが、今年亡くなったそうですね。他にはSiberian Expressの系統ががんばっており、BCジェヴェナイルとケンタッキーダービーを制したNyquistが出ています。大繁栄とはいかないですが、しぶとく残っています。ただ、かなり存続が危ういところまでは来ているように思います。

Il Mercatoは、Caro 3 X 5はほぼ単一で、その中のChamossaireもクロス、Swaps =Track Medal 4. 5 X 7中間断絶とOwen Tudor 5 X 8の2つのHyperion系を父の母内に集めています(また、Khaledの母EclairとOwen TudorがBlushing Groomの祖母Aimee内に同居)。世代的に父の方が古く、父側の影響が大きく出ていますが、このような大きな部分に関しては世代のズレの悪影響はそれほど感じず、HyperionとかHurry Onとかのスタミナががっちり効いているのはいいところだと思います。一方、細かく見ると特に母の母の部分の血が後退し、またアルゼンチン土着血統の部分もいまひとつ抑えきれていない感じです。ただし強いときは強そうな感じがあります。

その同日に行われたホアキンSデアンチョレーナ大賞典を勝ったのがHat Marioという馬でハットトリック産駒です。ハットトリックはいきなり欧州2歳牡馬チャンピオンで仏年度代表馬Dabirsimを出して前途洋洋なのではと思いましたが、その後、北半球ではコンスタントに活躍馬とはいきませんでした。それでもジャマイカHのKing Davidなどを出しましたし、ロシアで活躍したBig Trickという馬もいるようですね。南米にシャトルされ、こちらでは亜グランクリテリウム、ドスミルギニーのHat Puntano、ドスミルギニーのZapata、ダルドロシャ大賞典のGiant Killingを出しています。

Hat MarioとHat Puntanoは父ハットトリック×母父Bernstein×祖母父Egg Tossと7/8が共通します。これの良いところは、父方の奥の方にあったBold Ruler - Nasrullah、Princequilloを自然に手前に引っ張り出している、5代内クロス馬はAlmahmoudだけ、父のPharamond = Sickleの流れを生かしている、Alibhaiを父方6代目からクロスしている(PrincequilloとTraceryで結合)、あたりでしょうか。すっきりとした配合で、6代目から効かせたAlibhaiには魅力を感じます。

Sixties Song

2018-12-14 23:22:43 | 競馬日記
カルロスペレグリーニ大賞典はBCターフへの優先出走権を得られるBCチャレンジに組み込まれており、これの話題でSixties Songが取り上げられていました(記事)。

父Sities Iconはセントレジャー馬。Northern Dancer 3 X 4中間断絶でリードするGalileo産駒初期の名配合です。父Galileoは英ダービー馬、母Love Divineは英オークス馬ですので、英ダービー馬と英オークス馬の組み合わせによる英セントレジャー馬ということになるのですが、これは他にどれくらい例があるのでしょうね。父Nijinsky、母Snow Brideのラムタラが英ダービー馬と英オークス馬の組み合わせによる初めてのダービー馬で、父Galileo、母Ouija BoardのAustraliaが英愛ダービー馬と英愛オークス馬の組み合わせによる唯一の英愛ダービー馬らしいですが。

Sixties Songは2016年のカルロスペレグリーニ大賞典を含むGI3勝。Sixties Iconはイギリスで種牡馬入りし、アルゼンチンへもシャトルされているのですが、他のGI馬はCrazy Iconであり、どちらもアルゼンチンでの産駒になります。
母はアメリカ産で、Unbridled's Song×Relaunch×Northfieldsという累代配合。英国産Sixties Iconと米国産Blissful Songがアルゼンチンで出会ってGI馬が生まれるわけで、サラブレッドの移動は配合の可能性を広げる点で非常に重要ですね。曾祖母North of EdenはパラダイスクリークForbidden AppleWild Eventの母、高祖母ツリーオブノレッジはTheatricalタイキブリザードの母。他にもデビッドジュニアBobby's Kittenが近親にいます。なかなかレベルの高い牝系です。
Sixties Songはごく普通に良い配合ですね。Northern DancerだけでなくMr. Prospectorもクロスして主導が分かりにくくなったと言えそうですが、他にもHail to ReasonやBuckpasserのクロスをGalileo内に集めて、ここの部分を強調しているというのははっきりしています。DiesisとCaroという欧州系の馬の間でRelicクロスができたり、母内In Realityクロスに含まれるWar Relicや、The AxeのおかげでBuckpasser内Businesslike = Big Eventをクロスしたり、DjeddahクロスがTourbillonとAsterusを内包したり、細かいところも結構いいと思います。

以前、Sixties Songの配合をちょっと調べて、へー、と思ったのですが、当時はブログを書かないことが習慣になっていまして、なぜか最近好調にブログを書いているので、この機会に書いてみました。

Kukulkan

2018-12-07 20:32:20 | 競馬日記
最近、「Kukulkan」、「Clásico Internacional del Caribe」という言葉をよく見るなと思っていたのですが、メキシコにKukulkanという13戦無敗の3冠馬がいて、それがガルフストリームパークで行われるClásico Internacional del Caribe(カリビアンダービーとも呼ぶらしい)に出るということなんですね(記事)。普段、記事タイトル斜め読みで、気になったやつだけ中身まで読んでいるので、この話題は理解していませんでした。

Kukulkanはメキシコ産ですが、父も母もアメリカ産のアメリカ血統。母はBernardini×フレンチデピュティ×Slew o'Goldと格の高い種牡馬の累代交配。それに対して父Point DeterminedはGIIIアファームドS勝ちとGIサンタアニタダービー2着がある程度で、ケンタッキーで種牡馬入りの後、メキシコに輸出された馬のようです。当地では昨年のClásico Internacional del Caribeの勝ち馬Jala Jalaらを出して成功しているようです。
Mr. Prospector 5 X 6系列ぐるみを主導と見てよいでしょう。Mr. Prospector - Raise a Nativeは少数派なのですが、Seattle Slew 5 X 4. 5単一とはNasrullah、Polynesianで強固に結合します。で、そのSeattle SlewがRound Table - Princequilloという欧州血統の血も内包しているところが良く、更にこれは父方Table PlayのRound Table×Nasrullah、Princely PleasureのBold Ruler×Prince John、母方SecretariatのBold Ruler×Princequillo、Fairway FableのNasrullah×Prince John、MitterandのPrince John×Bold Rulerと相似性のある部分を完全に巻き込んでいて、かなり威力がありそうです。他の6代内クロス馬では、Turn-toはNearcoで、Northern DancerはNearcoとNative Dancerで、Never BendはNasrullahで結合していて、前面に並ぶ血の結合状態は良いと思います。更にDjebel - Tourbillonとか欧州系スタミナを押さえているところも良いんじゃないでしょうか(Never Bendに内包)。他方、Jameela、Davids Tobin、Isabelitaと弱いところが複数あるのは難点でしょうね。しかし、もっとも弱いIsabelita(牝系祖先で、シュレンダーハン牧場出身)はその中で近親クロスががっちりとあって、あまり気にしなくてよいのではと思います。全体的に見れば十分にできた配合だと思います。

もしこのレースなどを勝って、カリブに敵なし、となった場合、どうするんでしょうかね。アメリカ移籍とかあるんでしょうか。

Dick Lee「The Mad Chinaman」「Orientalism」

2018-12-06 21:05:13 | 音楽
北浦和のDISK UNIONに行った際に、探していたCDの一つはDick Leeの「The Mad Chinaman」、買ったCDは「Orientalism」だったのでした(ブログ)。その後、「The Mad Chinaman」の方は仕方なくアマゾンで中古を買いました。どちらも非常に良いコンディション、帯・ライナーノーツ付きで満足です。



「The Mad Chinaman」は発売年とされる1989年(西恵利香さん誕生年じゃないですか、やばいな、って何が)もしくは1990年(こちらはCDの帯に書かれている日付)だったと思いますが新聞にレビューが載り、このジャケット、このアルバムタイトルでハズレなわけはないだろう、おもしろそうだなと思ったのですが、計算によると当時、私は中学生であり、手にする機会には恵まれませんでした。最近たまたま思い出して(ほぼ30年前のことをよくしつこく覚えていたなと思いますが)調べると廃盤になっており、iTunes Store、Spotifyにもなく、中古以外の入手法がなさそうということでした。それでちょっと探していたわけです。
私が付け焼刃の知識でDick Leeについて云々するのはどうかと思うのですが、すごく簡単に説明すると中華系(プラナカンの)シンガポール人です。シンガポールは1963年にイギリスから独立しマレーシアの一部となり、更に1965年にマレーシアから独立してできた国で、その独立から四半世紀後に出たCDが「The Mad Chinaman」ということになります。シンガポールの公用語は英語、標準中国語、マレー語、タミル語。中華系なのに標準中国語が話せない(広東語は話せるらしい)、東洋人なのに西洋風の生活をしているDick Lee自身を自分で「バナナ」(外は黄色く中は白い)、「Mad Chinaman」としているわけで、この自身のアイデンティティが一連の作品のテーマとなっています。ゆえに「The Mad Chinaman」では中国、マレーシア、インドネシア、中東の民謡・童謡や007挿入歌風、シングリッシュラップなど何でもありです。その何でもありなのは当時のワールドミュージックブームに乗ったものではなくて(この作品が売れたのはワールドミュージックブームのおかげもあるでしょうが)シンガポール人たる彼自身の個人的な音楽性から出てきたものなわけです。歴史的作品となるべき作品であり、そりゃ評価されなければおかしいですよ。wikiのディック・リーのページを見るとこの作品を最後に引退しようとしていたと書かれていますが、本作は輸入盤としてではなく韓国、タイ、インド、マレーシア、インドネシアのレコード会社から日本と同時期にリリースされた作品であり(日本発売盤が出るのは自身初、アジアの歌手の作品がこれだけの国のレコード会社から発売されるのも初だったそう)、それだけ営業的に力が入っていたはずで、ここまでやって売れなければ後はなかったという意味もあるのではと思いました。#11 "The Mad Chinaman"はシンプルで洒落ていて美しいバラードの理想のような曲です。



「Orientalism」の方はその3作後の作品。こっちもインパクトのあるジャケットです。「オリエンタリズム」という言葉は素朴な意味では「東方趣味」であり、西洋人がオリエントの文化、芸術、風俗の中に面白さを見出したということなのですが、サイードの定義によってそんな素朴さは吹き飛びました。サイードは奇妙で劣った存在としてのオリエント像が西洋によって作り上げられていることを発見し、それをオリエンタリズムと呼び、西洋による東洋の文化的支配の様式であると喝破したわけです(私はサイード著『オリエンタリズム』を読んでいないですし、社会学・比較文学など完全な門外漢であって、ここの説明は私の薄っぺらい理解によるものです)。「日本趣味」(ジャポネズリー、ジャポニズム)にももちろん同様の側面があり(例えばオペレッタ「The Mikado」を見れば明らか。Irish National Studでこれをやったようで、なんだかなと思いました)、西洋が作り上げた幻想のアジア像、日本像に合わせるようなのは注意しなければならないでしょうし、オリエンタリズム、ジャポニズムのような言葉も注意して使わなければならないのだろうと思っています(とあるテレビ番組で世界的に売れている日本の某グループの話の中でピーター・バラカン氏が「世も末」というようなことを言って騒動になったことがありますが、その席で某「社会学者」がオリエンタリズムみたいな感じでいいんじゃないかというような発言をしていて、この人は大丈夫なのだろうかと思ったことがあります)。だからこそ、東洋と西洋の間で混乱したアイデンティティを持つDick Leeがこの「オリエンタリズム」という言葉を用いることに説得力があるように思いましたし、また#1 "Orientalism"で「その時がきたようだ そう 僕ら東洋人が決してマンガのようでもなければ 決まり切ったタイプの人間ばかりでもないことを知らしめる時が 皆が同じ黄色い顔をしているわけじゃないのさ」(ライナーノーツ中の訳詞による)とまさしく「オリエンタリズム批判」と言えるような詞を歌っているんですよね。さすがです。「The Mad Chinaman」同様に様々な国の音楽を取り込んでいるとはいっても、カバー曲は2曲だけであり、ボーカルもDick自身によるものが多く、かなりまとまりがあって完成度の高いポップアルバムになっています。アマゾンのレビューで星野源を引き合いに出している人がいますが、なかなかいい例えだと思います。久保田麻琴という方がプロデュースで参加されています(「裸のラリーズ」のメンバーだったそう)。

この時期のDick Leeの作品は全アジア人がもっとじっくりと聴かなければならない内容を含んでいるんじゃないかと思ったのですが、レコード会社のWEAはマスターを紛失したらしく、そのせいだと思うのですが、CDは復刻されず、iTunes Store、Spotifyにもないという状況です。とんでもない文化的損失です。

ライナーノーツは両作とも尾崎新という方が担当されています。アジアの状況、世界の音楽に詳しく、Dick Leeとも面識のある方のようなのですが、検索してもそれらしき人が出てきません。誰かのペンネームとかなのでしょうか。このブログを書く際にライナーノーツはかなり参考にしました。


iTunesにほとんどCDを取り込んでなかったのですが、「JAZZ ENTRATA」以降、ちょっとずつ取り込み始めています。JAZZ ENTRATAの影響で取り込み始めたのでJazzがちょっと多め。「re:LISTEN UP」が輝いています。


International Trainer of the Year

2018-12-05 19:50:57 | 競馬日記
チャーリー・アップルビー師が"International Trainer of the Year"に選ばれたそうですね(記事)。

記事にあるように今年はイギリスのダービー、オーストラリアのメルボルンC、アメリカのBCジュヴェナイルターフ(記事中ではターフが抜けている)を勝ちましたが、これ以外にもフランスのオペラ賞、アイルランドの愛ナショナルS、カナダのナタルマSとまさに国際的大活躍でした。
3年連続受賞ということなのですが(2016年2017年)、2016年はドバイのジェベルハッタ、イギリスのエクリプスS、フランスのマルセルブサック賞のGI3勝で受賞です。どういう賞なんでしょうね。過去の受賞者一覧みたいなのも探せないですし。ニューマーケットのInternational Racing Bureauというのがスポンサーらしいですが。Internationalとありますが、例えば日本の調教師が日本とドバイと香港でGIを勝てば対象にしてくれるんでしょうかね。

アップルビーはマームード・アル・ザルーニ師による大規模ドーピング(ブログ1ブログ2)の後、同師のアシスタントから昇格し、Godolphinの専属として指名されました。以降、GI勝利を毎年重ねて結果を出してきましたが、今年はGodolphinに初のダービー制覇をもたらすとともに世界各国でGIを12勝と大ブレイクしました。

Mendelssohn引退、種牡馬入り

2018-12-03 20:47:34 | 競馬日記
Mendelssohnが引退し、Coolmore Americaで種牡馬入りするそうです(記事1記事2)。アメリカ産アメリカ血統ですがエイダン管理。昨年のBCジュヴェナイルターフを勝ち、今年UAEダービー(GII)を勝ちましたが、以降は重賞勝利を挙げることができませんでした。

今年の3冠馬Justifyと同じくScat Daddy産駒です(Justifyについて語ろうと思っていたものの内容がまとまらないままで年末まで来てしまいました)。
半兄にHarlan's Holiday産駒Into Mischief、半姉にHenny Hughes産駒Beholder。いずれも2歳GIウイナーですが、この3きょうだいで3歳以降GIを勝ったのはBeholderだけです、でも3頭のGI馬というのは十分すぎるほど優秀な母ですね。全部Storm Cat系ではあるのですが、かなり違ったところもあります。

Into MischiefはNorthern Dancer - Nearcticが5代目に並び、これの主導なんですが、Princequilloも同じく5代目で、この辺、もうちょっとスムーズならいいのにと思います。しかし、種牡馬としてなら問題がないのではという感じで、実際、既に複数のGI馬を出して成功しています。
Beholderは同じくNorthern Dancer - Nearcticによる主導ですが、5代目にあるほかのクロスはTom Fool。Into Mischiefよりわかりやすいです。

Mendelssohnは両者とは異なり、Nijinsky 4. 6 X 5が明確な主導を作ります。このきょうだいの中で一番好みの配合です。Scat Daddy産駒だとJustifyみたいにYarnとLove Styleの相似をいじくっていくのが一つの成功例なのですが、Mendelssohnは別の方法ですね。種牡馬としては、Nijinsky - Northern Dancer -Nearctic -…の系列ぐるみもクロスしていますから、「YarnとLove Styleの相似をいじくる」のがもっと強烈に決まったりしないですかね。
父Scat Daddyは既に亡くなっています。Justifyとは違うタイプの後継種牡馬ですから、Scat Daddyの仔の種牡馬を付けたいのだけど、さあどっち?って楽しそうですね。