11月24日に西恵利香さんが地元埼玉の埼玉大学むつめ祭のライブ企画「Palettes」に出演するというので見て来ました。
埼玉大学に行く前に北浦和のDISK UNIONに寄り道。先日、店内でのフリーライブがあったところです。うちの周りにはちゃんとした中古CD屋がないので、いくつか廃盤になっているやつをメモって行ったのですが、廃盤になっているだけあってこれらは流通量が少ないんでしょうね。結局、欲しかったやつはなかったのですが、実物を見て興味が出たやつを1枚だけ買いました。
学祭開催中の埼玉大学構内。私は大学在学中は自分のサークルの模擬店にほぼかかりっきりで、グランドでやっていたライブをちょっと見たり、ビールだけ買いに行ったりしたぐらいで、自校の学祭を見て回ることなく卒業してしまいました。その前と言えば、子供のときに近所の大学の学祭で落語を聞いたりってのがありましたが、要するに大学の学祭を見るのはものすごく久しぶりというか、ほぼ初めてに近いというか、という感じでした。模擬店があったり、アマバンがライブしていたり、アカペラグループが歌っていたり。多分だいたいこんな感じなんでしょう。
ちょっと気になるチラシをもらいました。私は昔の大学システムの恩恵を受けたのですが、最近は教育・研究環境の悪化が著しく、大変なようです。一つには金の問題で、交付金減で大学の維持管理費を捻出するのすら難しいとか、額が大きいのは競争的資金でお金を使いにくいとか、予算を取れるテーマが限定されるとか、プロジェクト期間終了後のケアができないとか。もう一つには、教育・研究に対する政府の介入であり、それは競争的資金として募集する研究の内容を限定するという形でも現れますし(デュアルユースの軍事研究なんかもこれの一部。池内了著の
『科学者と戦争』などを参照)、G型だL型だと言い出して大学システムをいじろうとしたり、文系学問は不要と言わんばかりの通知を出したりという形でも現れます。この両者は連続技で使われ、予算を絞っておいて、予算が欲しければ政府の言うことを聞け、とやってきます。で、この「教育学研究科修士課程を廃止し、教職大学院に一本化」というのは「実学」でないものは要らないという政府方針とおそらく対応したものでしょう(もしくは埼玉大学に教育学関係だけで2つの院を保持するだけの金がないのかもしれない)。政府方針的には教員養成だけをやればいいんだってことなんですが、じゃあ教育学の理論的面はどうなるのって話で、単純に空洞化するでしょうね。長期的に見ると国民が損をするでしょうが、そもそも学問・研究における損得とはということで、損得を乗り越えて学問・研究を行うんだという余裕もしくは覚悟は日本にはないでしょうね。
ノーベル物理学賞受賞のR.P.ファインマン著
『ご冗談でしょう、ファインマンさん』は大学1回生(1年生)が大学生らしい本を読みたいけど何を読めばいいかわからないときにとりあえず読んでおけばいい本として有名で、実際に読んだことがある人も多いと思います。若干へそ曲がりな私は、大学入学後、読んでいる友達がいたのでここはいったんスルーだなと判断し、岩波現代文庫が創刊され文庫化された際に買って読みました。これの最後の項目「カーゴ・カルト・サイエンス」はカリフォルニア工科大学卒業式での祝辞であり、科学と良心について語ったものです。この中でファインマンは、宇宙論と天文学を研究している友人がこれらがどのように応用できるかについて頭を悩ませていたので「応用できることなんか何もないんじゃないか」とアドバイスしたエピソードを紹介し、研究費のために無理な説明をすることを不正直であると論を進めます。そして、祝辞の結論は「私が今日卒業生諸君へのはなむけとしたいことはただ一つ、いま述べたような科学的良心を維持することができるようにということです。つまり研究所や大学内で研究費だの地位だのを保ってゆくために、心ならずもこの良心を捨てざるをえないような圧力を感じることなく、自由に生きていけるような幸運を、との一念に尽きます。願わくば諸君がそのような意味で、自由であれかしと心から祈るものです。」となります。そのような幸運は今の日本にあるのでしょうかね。
『困ります、ファインマンさん』の最後の項目「科学の価値とは何か」も必読。
ファインマンとノーベル物理学賞を同時受賞した朝永振一郎(日本人初のノーベル賞受賞者湯川秀樹の同窓生で、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』にはファインマンが入浴中の湯川と遭遇した話が出てきます)著の
『科学者の自由な楽園』にも面白いことが書いてあります(何故か
『量子力学と私』の方にあったはずと思って該当箇所を探してページをめくりまくってしまった)。ブラッケット(原文ママ)という物理学者(
この方かなと思います)が宴会でのテーブル・スピーチで「科学とは、国の金を使って科学者が好奇心を満たすことである」と語り、それを聞いた朝永がこれは半分は冗談としても8割くらい科学の本質を言っていると思い、あるところでこの話をしたところ、「けしからん、科学者は独善的だ。国の金を使って自分の好奇心を満足させ、そして科学とはこういうものだなんてのはけしからん」という手紙をもらったという話です。半ば冗談の話に対してそういう手紙が来るってのは、なかなか笑わせてくれるエピソードなのですが、この「科学とは、国の〜」というのはファインマンのスピーチの結論部分とドンピシャで被りますよね。ファインマン、ブラケット、朝永と住む国の違う3人のノーベル物理学賞受賞者の一致するところがこれなんですよね。ここで言っている科学は自然科学のことなんでしょうが、文系だ理系だ言わずに全般に拡張してしまえばいいと思います。ちなみに私は物理学は専門ではありません。量子力学など全くわかりません。
ということで、私は埼玉大学関係者ではありませんが、「教育学研究科修士課程を廃止し、教職大学院に一本化」はやめた方がいいという意見です。
ところでふざけるなと言いたくなるようなのが11月21日に内閣府から出ていますね。「参考資料2」をご覧ください。
「
教育の無償化に関する国と地方の協議」の資料で、「支援措置の対象となる大学等の要件」が「実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124単位)の1割以上、配置されていること」、「法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること」です。天下りを受け入れ、産業界のいうことを聞くなら支援してやろう、ということです。
これ、びっくりして大騒ぎなわけですが、もっと前(6月1日)に文科省からも
同様の資料が出ていました。
こちらも「4.支援措置の対象となる大学等の要件について」で、「①実務経験のある教員による科目の配置が一定割合を超えていること」、「②外部人材の理事への任命が一定割合を超えていること」です。
よくこれだけ馬鹿にしたことができますね。高度な専門性を持つ教員の育成と言って教職員大学院が推進するくせに大学に天下りと銭ゲバを押し付けようというわけですよ。教育ってなんなんでしょうね。とにかく研究というものを軽視する姿勢は非常にはっきりとしていると思います。 (このセクションの加筆は2018/11/30)
政府による大学・研究者いじめのせいでとんでもなく話が逸れてしまいましたが、ようやくPalettesの話です。
ライブは大学会館3階で行われました。
西恵利香 -band set-、MINT mate box、LUCKY TAPESと3組が出演したのですが、いいラインアップだったと思いますよ。来れた人は幸運だったと思います。うちの学祭はどうだったかなあと記憶を掘り起こすと、アイドル研が売れる前のアイドル(ネットの発達していない時代ですから、その筋の人じゃなきゃ知らない)を連れて来たり、メインアクトも私の知らない人ばかりだったような。さすが埼玉大学だなと。
西恵利香 -band set-のメンバーは以下のとおり。
ボーカル&シンセサイザー:西恵利香
キーボード:井上惇志(showmore)
ギター:一戸祐介
ベース:ドラ内山(ビーチ・バージョン、ふたりの文学)
ドラム:櫃田良輔(CICADA)
MAKE MY DAY TOUR 2018と同じで、私はFINALの代官山LOOP公演に行ったのですが、あのときは本当に素晴らしい体験だったんですよね。初めてライブハウスで見たライブがこれだったのは幸運でした。その辺のところで、思えば初めからすでに私はおかしかったのかもしれません。
ベースのドラさんは人の良さそうな外見で油断させておいていきなり自分の見せ場を放りこんできます。騙されてはいけません。櫃田さんは見た目通りのドラマーらしいドラマーで、ドラさんとのリズム隊の掛け合いが楽しそうで聴いている方・見てる方も楽しいです。井上さんはボコーダーを使ってのコーラスがいつもより多めでしたよね? というか、あのコーラスはどんな歌詞なんでしょうね。考えたことがなかったな。一戸さんはいつも通りクールな演奏と甘いコーラス。いつも思うのですが、西恵利香さんを聴きに行ったら何故か一戸さんの美声に酔いしれていたみたいなの、すごく楽しいです。
で、恵利香さんなのですが、すごく良かったですし、本当に感無量でした。ということなのですが、すごく良かった、物凄く良かった、ただただ良かった、みたいな感じでディテールが飛んでいます。MMDTOUR2018を思い出しておそらく初めから私のテンションはおかしく、それに順調に西恵利香大好き人間化が進んだ結果も加わり、さらには埼玉出身の恵利香さんが地元埼玉の埼玉大学の学祭出演という「エモい」状況も狂わせる要因になったように思います。すごくふわふわした気持ちになってしまいました。
私のような学外の人間もいましたが、学祭だけあって学生っぽい方も当然ながら多かったです。客層がいろんな方向に広がるといいなあ。
12月以降の恵利香さんの予定(確定分)は以下のようになります。
12.4 六本木Varit w/星野みちる
12.7 心斎橋FAN J w/Lucky Kilimanjaro / MADE IN HEPBURN
12.23 福岡六本松 蔦屋書店 ※トーク&ライブゲスト
12.24 福岡 天神コア w/やのあんな / MANON
12/24 福岡 THE DARK ROOM ※ゲストライブ
1/11 代官山LOOP Make my day! ~birthday~
みなさん、西恵利香さんのライブに行きましょうね。