うぉんばっとな毎日

大用、現前するとき、軌則を存せず

Too Darn Hotの引退後

2018-11-30 00:05:40 | 競馬日記
Too Darn Hotの引退後の繋養先がDarleyと決まったそうです(記事1記事2)。まだ3歳になっていないのに随分と早いですね。父Dubawiもその父Dubai MillenniumもDarleyの馬ですから、この系統の活躍馬はどうにかして手元に置いておきたいんでしょう(何しろあのDubai Millenniumですからね)。どちらももともとDarley生産ではありますが、モンテロッソHunter's LightもDarleyにいます。でもさすがにZarkavaの仔Zarakまでは手を伸ばせなかったでしょうね。ただ、Too Darn HotはDubawi最良の仔となるポテンシャルがありそうですから、是非とも欲しかったんじゃないでしょうか。

で、そのToo Darn Hotについて、ゴスデン師はダービーは難しいと見ているらしいですね(記事)。父のDubawi、姉のSo Mi Darに似ていて、10Fまでが良いと考えているようです。セントレジャー2着のLah Ti Darも全姉だから12Fくらいまでは守備範囲に入っているかなと思っていたのですが。

Too Darn Hotは母父Singspielの部分の5代目に並ぶクロス馬Northern Dancer、Shirley Heights、Sunbittern、Hail to Reason、Herbargerが壮観です。一番大きなクロスはShirley Heights 4 X 5であり、これとSingspielの影響が強そうで、そうなると12Fくらいは持ちそうなのですけどね。Shirley Heights内もUmidwar、Djebel、Princequilloと生きていますし。

2000ギニーもまだなのにその先の心配をしても仕方がないので、来春をゆっくりと待ちましょうか。

Sinndar死亡

2018-11-29 00:13:49 | 競馬日記
Sinndarが亡くなりましたねえ(記事1記事2)。もう21歳だったんですね。ついこないだ走ってたんじゃないのと思うような馬がすでに結構な歳でびっくりします(1歳下のGalileoも急に何かあってもおかしくない歳だということです)。

英愛ダービーと凱旋門賞を同一年に制した馬はSinndarだけという話です。強い馬でした。強さもさることながら、やっぱり配合ですよ。Danzig系にNever Bend系を持ってくるアガカーンスタッドの当時の鉄板配合で、額縁に入れて飾りたいくらいの美しい配合でした。
代表産駒といえばやっぱり配合的にはShawandaでしょう。4代目にMill Reef、Northern Dancer、Abdosと3種類のクロス馬が並びますが、いずれも中間断絶であるとともに結合状態が非常によく、これでいいんだというのを教えてくれる配合です。3/4同血のSharetaの場合はHabitatクロスが加わっていますが、基本的にはShawandaと変わりません。Shawandaの配合を良いと評価できていれば、問題なくSharetaの配合も良いと評価できたはずです。
この辺、何回も見返すべき配合だと思います。

ShawandaはDarleyに出されたようで、産駒はDarley生産です。その中の代表産駒Enckeはセントレジャーで2冠馬Camelotを破りましたが、のちにGodolphinの大規模ドーピングトラブルに巻き込まれてしまいました(ブログ1ブログ2)。そして調教中の故障で予後不良という。何と言ったらいいのかわからない悲惨な運命をたどりました。

Sharetaはアガカーンスタッドに残っているようです。が、産駒の配合を見ると、うーん…という感じです。Sinndarの配合が完成されており、それを複数の近親交配で折り返したのがShawanda、Sharetaであり、その次はちょっと難しいんだろうなあと思います。

西恵利香「Palettes」at 埼玉大学むつめ祭

2018-11-28 22:52:52 | 音楽
ポスター

11月24日に西恵利香さんが地元埼玉の埼玉大学むつめ祭のライブ企画「Palettes」に出演するというので見て来ました。

埼玉大学に行く前に北浦和のDISK UNIONに寄り道。先日、店内でのフリーライブがあったところです。うちの周りにはちゃんとした中古CD屋がないので、いくつか廃盤になっているやつをメモって行ったのですが、廃盤になっているだけあってこれらは流通量が少ないんでしょうね。結局、欲しかったやつはなかったのですが、実物を見て興味が出たやつを1枚だけ買いました。

DISK UNION北浦和店

学祭開催中の埼玉大学構内。私は大学在学中は自分のサークルの模擬店にほぼかかりっきりで、グランドでやっていたライブをちょっと見たり、ビールだけ買いに行ったりしたぐらいで、自校の学祭を見て回ることなく卒業してしまいました。その前と言えば、子供のときに近所の大学の学祭で落語を聞いたりってのがありましたが、要するに大学の学祭を見るのはものすごく久しぶりというか、ほぼ初めてに近いというか、という感じでした。模擬店があったり、アマバンがライブしていたり、アカペラグループが歌っていたり。多分だいたいこんな感じなんでしょう。

埼玉大学構内

ちょっと気になるチラシをもらいました。私は昔の大学システムの恩恵を受けたのですが、最近は教育・研究環境の悪化が著しく、大変なようです。一つには金の問題で、交付金減で大学の維持管理費を捻出するのすら難しいとか、額が大きいのは競争的資金でお金を使いにくいとか、予算を取れるテーマが限定されるとか、プロジェクト期間終了後のケアができないとか。もう一つには、教育・研究に対する政府の介入であり、それは競争的資金として募集する研究の内容を限定するという形でも現れますし(デュアルユースの軍事研究なんかもこれの一部。池内了著の『科学者と戦争』などを参照)、G型だL型だと言い出して大学システムをいじろうとしたり、文系学問は不要と言わんばかりの通知を出したりという形でも現れます。この両者は連続技で使われ、予算を絞っておいて、予算が欲しければ政府の言うことを聞け、とやってきます。で、この「教育学研究科修士課程を廃止し、教職大学院に一本化」というのは「実学」でないものは要らないという政府方針とおそらく対応したものでしょう(もしくは埼玉大学に教育学関係だけで2つの院を保持するだけの金がないのかもしれない)。政府方針的には教員養成だけをやればいいんだってことなんですが、じゃあ教育学の理論的面はどうなるのって話で、単純に空洞化するでしょうね。長期的に見ると国民が損をするでしょうが、そもそも学問・研究における損得とはということで、損得を乗り越えて学問・研究を行うんだという余裕もしくは覚悟は日本にはないでしょうね。

ノーベル物理学賞受賞のR.P.ファインマン著『ご冗談でしょう、ファインマンさん』は大学1回生(1年生)が大学生らしい本を読みたいけど何を読めばいいかわからないときにとりあえず読んでおけばいい本として有名で、実際に読んだことがある人も多いと思います。若干へそ曲がりな私は、大学入学後、読んでいる友達がいたのでここはいったんスルーだなと判断し、岩波現代文庫が創刊され文庫化された際に買って読みました。これの最後の項目「カーゴ・カルト・サイエンス」はカリフォルニア工科大学卒業式での祝辞であり、科学と良心について語ったものです。この中でファインマンは、宇宙論と天文学を研究している友人がこれらがどのように応用できるかについて頭を悩ませていたので「応用できることなんか何もないんじゃないか」とアドバイスしたエピソードを紹介し、研究費のために無理な説明をすることを不正直であると論を進めます。そして、祝辞の結論は「私が今日卒業生諸君へのはなむけとしたいことはただ一つ、いま述べたような科学的良心を維持することができるようにということです。つまり研究所や大学内で研究費だの地位だのを保ってゆくために、心ならずもこの良心を捨てざるをえないような圧力を感じることなく、自由に生きていけるような幸運を、との一念に尽きます。願わくば諸君がそのような意味で、自由であれかしと心から祈るものです。」となります。そのような幸運は今の日本にあるのでしょうかね。『困ります、ファインマンさん』の最後の項目「科学の価値とは何か」も必読。
ファインマンとノーベル物理学賞を同時受賞した朝永振一郎(日本人初のノーベル賞受賞者湯川秀樹の同窓生で、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』にはファインマンが入浴中の湯川と遭遇した話が出てきます)著の『科学者の自由な楽園』にも面白いことが書いてあります(何故か『量子力学と私』の方にあったはずと思って該当箇所を探してページをめくりまくってしまった)。ブラッケット(原文ママ)という物理学者(この方かなと思います)が宴会でのテーブル・スピーチで「科学とは、国の金を使って科学者が好奇心を満たすことである」と語り、それを聞いた朝永がこれは半分は冗談としても8割くらい科学の本質を言っていると思い、あるところでこの話をしたところ、「けしからん、科学者は独善的だ。国の金を使って自分の好奇心を満足させ、そして科学とはこういうものだなんてのはけしからん」という手紙をもらったという話です。半ば冗談の話に対してそういう手紙が来るってのは、なかなか笑わせてくれるエピソードなのですが、この「科学とは、国の〜」というのはファインマンのスピーチの結論部分とドンピシャで被りますよね。ファインマン、ブラケット、朝永と住む国の違う3人のノーベル物理学賞受賞者の一致するところがこれなんですよね。ここで言っている科学は自然科学のことなんでしょうが、文系だ理系だ言わずに全般に拡張してしまえばいいと思います。ちなみに私は物理学は専門ではありません。量子力学など全くわかりません。
ということで、私は埼玉大学関係者ではありませんが、「教育学研究科修士課程を廃止し、教職大学院に一本化」はやめた方がいいという意見です。

ところでふざけるなと言いたくなるようなのが11月21日に内閣府から出ていますね。「参考資料2」をご覧ください。
教育の無償化に関する国と地方の協議」の資料で、「支援措置の対象となる大学等の要件」が「実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学の場合、124単位)の1割以上、配置されていること」、「法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命していること」です。天下りを受け入れ、産業界のいうことを聞くなら支援してやろう、ということです。
これ、びっくりして大騒ぎなわけですが、もっと前(6月1日)に文科省からも同様の資料が出ていました。
こちらも「4.支援措置の対象となる大学等の要件について」で、「①実務経験のある教員による科目の配置が一定割合を超えていること」、「②外部人材の理事への任命が一定割合を超えていること」です。
よくこれだけ馬鹿にしたことができますね。高度な専門性を持つ教員の育成と言って教職員大学院が推進するくせに大学に天下りと銭ゲバを押し付けようというわけですよ。教育ってなんなんでしょうね。とにかく研究というものを軽視する姿勢は非常にはっきりとしていると思います。 (このセクションの加筆は2018/11/30)

チラシ

政府による大学・研究者いじめのせいでとんでもなく話が逸れてしまいましたが、ようやくPalettesの話です。
ライブは大学会館3階で行われました。

大学会館

西恵利香 -band set-、MINT mate box、LUCKY TAPESと3組が出演したのですが、いいラインアップだったと思いますよ。来れた人は幸運だったと思います。うちの学祭はどうだったかなあと記憶を掘り起こすと、アイドル研が売れる前のアイドル(ネットの発達していない時代ですから、その筋の人じゃなきゃ知らない)を連れて来たり、メインアクトも私の知らない人ばかりだったような。さすが埼玉大学だなと。

西恵利香 -band set-のメンバーは以下のとおり。
ボーカル&シンセサイザー:西恵利香
キーボード:井上惇志(showmore)
ギター:一戸祐介
ベース:ドラ内山(ビーチ・バージョン、ふたりの文学)
ドラム:櫃田良輔(CICADA)

MAKE MY DAY TOUR 2018と同じで、私はFINALの代官山LOOP公演に行ったのですが、あのときは本当に素晴らしい体験だったんですよね。初めてライブハウスで見たライブがこれだったのは幸運でした。その辺のところで、思えば初めからすでに私はおかしかったのかもしれません。

ベースのドラさんは人の良さそうな外見で油断させておいていきなり自分の見せ場を放りこんできます。騙されてはいけません。櫃田さんは見た目通りのドラマーらしいドラマーで、ドラさんとのリズム隊の掛け合いが楽しそうで聴いている方・見てる方も楽しいです。井上さんはボコーダーを使ってのコーラスがいつもより多めでしたよね? というか、あのコーラスはどんな歌詞なんでしょうね。考えたことがなかったな。一戸さんはいつも通りクールな演奏と甘いコーラス。いつも思うのですが、西恵利香さんを聴きに行ったら何故か一戸さんの美声に酔いしれていたみたいなの、すごく楽しいです。
で、恵利香さんなのですが、すごく良かったですし、本当に感無量でした。ということなのですが、すごく良かった、物凄く良かった、ただただ良かった、みたいな感じでディテールが飛んでいます。MMDTOUR2018を思い出しておそらく初めから私のテンションはおかしく、それに順調に西恵利香大好き人間化が進んだ結果も加わり、さらには埼玉出身の恵利香さんが地元埼玉の埼玉大学の学祭出演という「エモい」状況も狂わせる要因になったように思います。すごくふわふわした気持ちになってしまいました。
私のような学外の人間もいましたが、学祭だけあって学生っぽい方も当然ながら多かったです。客層がいろんな方向に広がるといいなあ。

12月以降の恵利香さんの予定(確定分)は以下のようになります。

12.4 六本木Varit w/星野みちる
12.7 心斎橋FAN J w/Lucky Kilimanjaro / MADE IN HEPBURN
12.23 福岡六本松 蔦屋書店 ※トーク&ライブゲスト
12.24 福岡 天神コア w/やのあんな / MANON
12/24 福岡 THE DARK ROOM ※ゲストライブ
1/11 代官山LOOP Make my day! ~birthday~

みなさん、西恵利香さんのライブに行きましょうね。

アーモンドアイ、牝馬3冠+JC達成

2018-11-25 21:19:19 | 競馬日記
アーモンドアイジェンティルドンナに続き牝馬3冠を達成した年にJCも勝利しました。しかも従来のレコードタイム(2分22秒1)を1.5秒短縮する2分20秒6という大レコード。おそらくとんでもない勝ち方をするだろうと思い、久しぶりにリアルタイムで中継を見ましたが、すごい走りでした。

昨年の菊花賞馬キセキが素晴らしい逃げを見せ、騎手も言っているように普通なら押し切れているはずでした。しかし、その逃げを難なく追走し(ほぼキャンターで)、ラストで交わすだけというアーモンドアイ。恐ろしいですね。まだ余力のありそうな走りでした。
ちなみにアーモンドアイもキセキも父の父はキングカメハメハ。日本ダービーのレコードを持っていましたが、それを破ったのは産駒のドゥラメンテでした。JCの前のレコードを持っていたのはアルカセットで、キングカメハメハと同じKingmambo産駒です。東京2400mでのレコードといえばKingmamboという状況です。

さてさて、アーモンドアイの配合を五十嵐理論的に見るならSex Appeal 6 X 3やTurn-to 8 X 5が世代ズレで第一感で高い評価にはならなさそうと思うのではないでしょうか。じゃあ世代ズレがなければいいのかというと、フサイチパンドラはキングカメハメハとの間にサンエルピス、パンドラズホープ、パンデリングを、全姉のインディゴワルツはエフティレフアを出しています。この中で中央で勝ち上がれたのはサンエルピス1頭だけです。Nureyev 4 X 3、Sex Appeal 5 X 3でロッタレースを強烈に強調した配合になっていて、もしハマればすごいのかもと思わないでもないですが、結局成果は出ませんでした。これに比べれば、アーモンドアイは「世代ズレのおかげでNureyev 5 X 3の影響が明確になりシンプル」という配合になっているように思います。世代ズレの悪影響の方もそれほどではないですよね。
最上級の配合とは言い難いですが、悪くなく、良さもある配合ですね。

欧州からの遠征馬サンダリングブルーは10着、カプリは11着でした。私の予想通りサンダリングブルーの方が着順が上だった、なんてことはこの着順では言う気はありません。この尋常じゃないペースに適応するのはどちらも難しかったでしょう。何はともあれ彼らが来てくれたことに感謝します。

ちなみに、カプリに騎乗したムーアは戦前、アーモンドアイのレーティング115は過小評価だ、と語っていました(記事)。18馬身3/4もアーモンドアイに離されてしまいましたから、だからそう言っていたじゃないかという思いでしょう。

Talismanic輸入

2018-11-22 21:19:13 | 競馬日記
昨年のBCターフ馬Talismanic(タリスマニック)がダーレー・ジャパンで種牡馬入りするそうですね(記事)。

Medaglia d'Oro産駒。北米で活躍馬を出しているEl Pradoの系統で、Rachel Alexandraなど、もちろんダート馬も出していますが、本馬は芝での活躍馬になります。
母父Machiavelian、祖母父Danzigで、Sadler's WellsとDanehillの組み合わせに近いところがありますし、高祖母はBurghclereでディープインパクトなどと同じ牝系です。普通に組み合わせで見れば芝馬でしょう。フランスのファーブル師の管理。BCターフを勝った際はそれほど人気ではなかったのですが、配合自体はちゃんとしていると思います。

さて、日本で種牡馬入りし、内国産の牝馬と交配した場合、Northern DancerもHaloも系列ぐるみをつくるパターンが多くなるのではと思います。両者はAlmahmoudとNearcoで強固に結びつきますから、位置のバランスが悪くなければ問題ないかもしれません。ただし、母父にディープインパクト=ブラックタイドを持ってきたらSir IvorとBurghclereもクロスしてしまいます。更に現在の日本ではMr. Prospectorもクロスされやすくなってきています。こんな感じでクロスしすぎるとゴテゴテっとした配合になって大丈夫なのかなと思いそうです。この辺、実際に交配する人がどう考え、どう交配するのか、実際にどんなタイプの馬が出るのか、興味深いです。

Sting『44/876』など

2018-11-21 21:16:50 | 音楽

今年の4月に発売されたStingの最新アルバム『44/876』。レゲエシンガーのShaggyとの共作になります。The Police時代の2ndアルバム『Reggatta de Blanc』はかなりのレゲエ調で、そもそもタイトルが『White reggae』という意味らしく。44と876はイギリスとジャマイカの国番号で、1曲目『44/876』はプッシュホンの音入りです。
私はレゲエは自分からは聴くことがなく(『Reggatta de Blanc』以外)、Shaggyは名前を知っている気がする、声も聴いたことがある気がする、というレベルなのですが、Stingと演ると聴けてしまうんですよね。過去には"Whenever I Say Your Name"でMary J. Bligeとデュエットしたり、Stevie Wonderが"Brand New Day"でハーモニカを吹いたりということがありました。そういった私が普段聴かない個々のアーティストでもStingとの共作なら聴けてしまわけで、Stingは私が聴ける範囲に落とし込んでくれる優秀な翻訳家なのだろうと思います。ノリノリでキャッチーなアルバムです。



で、前作『57th & 9th』が私にとって問題だったわけですが。「13年ぶりのロックアルバム」、「原点回帰」みたいな謳い文句でして、Stingにしてはかなりストレートなロックのアルバムでした。しかしStingがストレートなロックを演ったことってありましたっけ、というところに凄く引っかかってしまいました。たとえば、The Policeとしてのデビューアルバム『Outlandos d'Amour』は「パンクまがい」(←「まがい」と書くとけなしていそうですがシニカルな感じをほめています)でしたし、次の『Reggatta de Blanc』はかなりのレゲエ調でしたし、3rd以降はその辺が消化された結果、ニューウェイヴに分類するのが妥当という内容でした。Stingはもともとジャズのベーシストでしたから、ソロ作は基本的にジャズの影響下にあったように思います。こういうのも結局はすべて広い意味のロックであり、その意味では『57th & 9th』の前の作品の『Last Ship』だってロックと言ってよかったはずです。
『44/876』を聴いた後、『57th & 9th』に戻って聴いた結果、思ったのはこれはSting流のストレートなロックであり、ストレートなロックに回帰したわけではないということです。回帰したのはスタイルとしてのロック(ロックバンド)なんですよね。この辺のところが自分で整理できずに居心地が悪かったんだと理解でき、急に素直に聴けるようになりました。


最近、突然『LAST SESSION』が大好きになりました。ビッグバンドジャズのGil Evansとの共同名義で、Gil Evansが死ぬ前年に録音された伝説的ライブアルバムです。このCDはたぶん、私が洋楽のCDというものを買い始めたごく初期に買ったもので、当時は良さがわからず、その後、ほとんど聴かずにしまっていたものでした。で、Bill Evans (p)云々と言っていて、Evansつながりで、そういえばGil Evansも1枚だけ持ってたなと引っ張り出してきて聴いてみると、すごいんですよね。Jimi Hendrix作の"Little Wing"なんてめちゃめちゃ心に沁みます(途中、Stingは"From Me To You"を歌いだしてしまいます。なんでもありです)。Branford Marsalisのサックスが炸裂する"Englishman in New York”で有名な『...Nothing Like the Sun』にも裏のエースとして"Little Wing"が入っているのですが、これまであまり気に留めてませんでした。が、『LAST SESSION』を聴いた後にきくと、なるほどこれは裏のエースやわと。『LAST SESSION』はAmazonで見ると新品が切れていて入手が難しいかもしれません。『...Nothing Like the Sun』版でもいいので"Little Wing"を聴きましょう(こちらもGil Evansが参加しています)。
それにしても買ってから良いと思うまで20年以上かかるとは。タイミング、時期というものが重要なんだなあと思います。20年以上前に買っていなければ聴くことはなかったでしょうから、当時の自分を褒めたいです。

ブレイブスマッシュ

2018-11-20 19:57:23 | 競馬日記
特に何も調べもせず「シンボリルドルフ(の同血)を持つGI馬って最近いましたっけ?」と書いたわけですが(ブログ)、ブレイブスマッシュ がいましたね。日本産で、日本でデビューし、2歳時にサウジアラビアRC(GIII)を勝ちましたが、その後は国内で勝利を挙げることができませんでした。4歳になってからオーストラリアに移籍し、今年、フューチュリティS、マニカトSと2つのGIを勝っています。

父はトーセンファントム。私が2歳時に注目していた馬ですが(ブログ)、朝日杯で故障して引退しました。その後、種牡馬入りできたと聞いてびっくりしたのですが、まさかその産駒がオーストラリアで大活躍とはこれにもびっくりです。
また調べもせずに書いているのですが、Northern Dancerクロスを伴うノーザンテーストクロスを持つGI馬っていましたっけ。少なくともたくさんいるわけではないでしょう。ノーザンテーストは言わずと知れた万能の大種牡馬で、競走馬としてもダービー5着がありますが、勝利はすべて1500m以下です(競走成績)。本来は短距離向きだったのでしょう。ノーザンテーストらしさを出したクロス(例えばオルフェーヴル = ドリームジャーニーのノーザンテーストクロスは単一であり影響は薄い)をするとオーストラリアの短距離戦を走れてしまう、というのは一つの発見ですね。
ブレイブスマッシュの配合は完璧とは言い難いのは確かだと思います。しかし、ノーザンテーストの位置が4代目とだいぶ奥の方に来ていますし、Buchanをクロスしていて最低限のラインは守っていますし、IKが推奨していたトウカイテイオーとトニービンの相性の良さを生かしていますし、ネオユニヴァースも欧州血統が強めでトウカイテイオーを相手にするのに悪くないですし、いいところもあります。

ブレイブスマッシュはGI2勝ですから種牡馬入りできますかね。オーストラリアでトウカイテイオーの血を引く種牡馬出現ということになるでしょうか。
シンボリルドルフにしてもトウカイテイオーにしても、オルフェーヴル = ドリームジャーニーの母父メジロマックイーンにしても、配合内容は非常にレベルが高く、これらの血を持つ活躍馬が出るのはたまたまではないでしょう。

※Northern Dancerクロスを伴うノーザンテーストクロスを持つGI馬として今年の春の天皇賞馬レイボーラインがいました。ノーザンテースト内の処理はこちらの方が上でノーザンテーストの悪さが軽減していること、ゴールデンサッシュ、レンボーアンバーのスタミナが生きていることなどが距離をこなせた理由でしょうか。 2018/11/21 19:40

ステルヴィオ

2018-11-19 20:22:38 | 競馬日記
マイルCSを勝ったのは3歳馬ステルヴィオ。内を進み、直線で先行馬の隙間を見つけると鋭い切れ味で抜け出してきました。父はロードカナロア。今年の3歳馬が初年度産駒で、牝馬3冠馬アーモンドアイに続く2頭目のGI馬です。

このステルヴィオを語る際に誰もが話題に出すのは高祖母のスイートコンコルドではないでしょうか。父パーソロン、母スイートルナで、3冠馬シンボリルドルフの全姉に当たります。そしてシンボリルドルフの1歳上の3冠馬ミスターシービーの父トウショウボーイをスイートコンコルドに付けて生まれたのが曾祖母ファーストクラスです。そのファーストクラスと名種牡馬サンデーサイレンスの仔が祖母のアズサユミ。3冠馬の全姉に3冠馬の父を付けてそこにサンデーサイレンス(これも3冠馬の父)ですから、夢の配合と言ってもいいくらいなのですが、サンデーサイレンスを付けるにはファーストクラスは欧州血統過ぎでして、サンデーサイレンスはこのような母が相手では絶対に大物を出さないという正直さがありました。しかし、それが孫世代にGI馬を出すのですから、短期的な成功と長期的な成功は別という馬産の面白さがあります。
母父ファルブラヴ。中山で行われたJCをデットーリ騎乗で勝利しました。すでに懐かしいですね。世代のズレがあって種牡馬としての難しさがありましたが、ラルケットは割合うまくまとめていると思います。そこに持ってきたのがロードカナロアになります。

ステルヴィオはNureyevとFairy Kingの3/4同血を生かした上でのNorthern Dancer 5. 6. 6. 8 X 4の中間断絶がリードする配合ということになるのでしょう。母方が4代目に対し、父方では8代目とかなり奥の方にNorthern Dancerがありますが、父ロードカナロアではNorthern Dancerクロスが十分に働いいていると考え、大きな問題なしと見ます。ロードカナロアに対してSadler's Wells(= Fairy King)持ち、というのは自分で書いていたんですね(ブログ)。すっかり忘れていました。書いているようにSadler's Wells(= Fairy King)とMill Reefの相性の良さも生かせています。ロードカナロアの特徴である母内Secretariat = Syrian Sea同血クロスがMill Reefと呼応している点(ブログ)については、ステルヴィオの母父ファルブラヴの母父SlewpyがSeatle SlewにさらにPrince John(Princequllo×Count Fleet)を重ねた配合であり、見事に生きています(Secretariat = Syrian Seaの方はBold RulerとPrincequilloで、Mill Reefの方はNasrullah、Lalun、Princequillo、Count Fleet、Red Ray = Khaledと完璧)。Graustark = His Majesty 6 x 4クロスの方は母内にRibotとYour Hostがあってこちらも見事に生きています。ほかにはBalladierやDjebelを抑えていたり、父内Turn-toの位置が丁度良かったり、いろいろきめ細かいように思います。うまくできた配合と言っていいのではないでしょうか。

シンボリルドルフ(の同血)を持つGI馬って最近いましたっけ? 現在でも十分に通用する血であることが分かりましたし、本馬が種牡馬入りした際にシンボリルドルフ = スイートコンコルド同血クロスみたいなのは狙えないんでしょうか。パーソロンまでクロスしたらやりすぎになるでしょうが、単一であればDjebel、Palestine - Fair Trialなど欧州系の血をHail to Reasonと結びつけるような役割を果たせそうな気がします。
※母父トウカイテイオーのブレイブスマッシュが今年オーストラリアでGIを勝っていますね(ブログ)。 2018/11/20 19:45

ジャパンカップの外国馬

2018-11-17 17:53:14 | 競馬日記
今年のジャパンカップに出走予定の外国馬はカプリサンダリングブルーの2頭。

カプリ(Capri)は昨年の愛ダービー、セントレジャー馬。今年は4戦してアレッジドS(GIII)の1勝だけ。でも英愛のクラシックを勝った馬ですから十分な大物と言っていいでしょう。愛ダービーでは今年GI3勝のCracksmanを2着に、セントレジャーでは今年のチャンピオンステイヤーStradivariusを3着に降しています。サンダリングブルー1頭だけの可能性もありましたから、この馬が招待受諾してくれて本当に良かったです。2歳時にベレスフォードS(GII)も勝っており、重賞は4勝です。
配合は父Galileo×母父Anabaa×祖母父Linamix×曽祖母父Akarad。欧州外遠征は今回初めてで、GI勝利が愛ダービーとセントレジャーで、Galileo×Anabaaって、日本で走ることを考えれば不安しかないです。重厚ですよ、重厚。しかし、昨年のJCで外国馬最先着の5着だったIdahoもエイダン管理で父Galileo×母父Danehill(Anabaaと同じDanzig産駒)でしたから、侮りすぎないほうがいいのかもしれません。ただし、Idahoはカナダ遠征経験がありました。

サンダリングブルー(Thundering Blue)は5歳馬ですが、今年になってから10.5FのヨークS(GII)で重賞初勝利、英インターナショナルSではRoaring Lionの3着でしたがSaxon Warriorには先着、スウェーデン遠征しストックホルムCインターナショナル(GIII)を勝利、さらにカナダ遠征しカナディアンインターナショナルSで2着。
配合は父Exchange Rate×母父Forestry×祖母父Pass the Tab×曽祖母父One for Allと、アメリカ産のアメリカ血統なのですが、英国で調教されている芝馬です。配されている種牡馬はカプリより格が落ちるのですが、血統的な日本適性ではサンダリングブルーのほうでしょう。配合自体もいいんじゃないかと思います。さらに競走成績的にも本格化して来ている感じがありますし、10Fでの良績、遠征経験共に評価できますし、びっくりさせるような走りがあってもびっくりする必要はないように思います。

大物なのはカプリ、調子と適性ではサンダリングブルー。

カルティエ賞2018

2018-11-14 23:49:46 | 競馬日記
今年もこの時期にカルティエ賞が発表されました(記事)。なぜ年明けまで待とうとしないのかと毎年思うわけですが。

年度代表馬と3歳牡馬チャンピオンはRoaring Lion。ダービー3着のあと、GI4連勝は見事でした。Sadler's Wells系は欧州での活躍馬が目立つのですが、El Pradoの系統は北米で活躍しています。その血統が欧州に戻ってきての活躍であり、すでに血が広まっているSadler's Wells系の割に種牡馬としても期待されるのではないでしょうか。来年も現役なのか、情報が出てましたっけ。
Tweenhills Studで種牡馬入りするんですね(記事)。本馬のオーナーであるQatar Racingの種牡馬繋養地なんですね。 2018/11/16 0:06

2歳牡馬チャンピオンはToo Darn Hot。Dubawi×Dar Re Miの鉄板配合です。全姉はムシドラS(GIII)の勝ち馬So Mi Dar、セントレジャー2着のLah Ti Dar。全姉2頭は3歳になってから活躍しだしたのですが、本馬はデューハーストSを含む重賞3勝、4戦無敗。このまま行けばクラシックを取れそうですね。

2歳牝馬チャンピオンはSkitter Scatter。米3冠馬Justifyを出したScat Daddy産駒。Mr. ProspectorとNijinskyクロスがあり、Justifyとも共通性のある部分があります。モイグレアスタッドSを含む重賞3勝で受賞です。

3歳牝馬チャンピオンはAlpha Centauri。牡馬との闘いとなったジャックルマロワ賞を含むGI4連勝があり、故障なく走り続けていたら年度代表馬に選ばれていたのではと思います。

チャンピオンスプリンターはMabs Cross。アベイドロンシャン賞の勝ち馬であり、ナンソープSで2着、キングズスタンドSで3着がある牝馬です。Machiavellian→Medicean→Dutch Artという父系に魅力を感じますし、配合もなかなか味がありそうです。

チャンピオンステイヤーはStradivarius。超長距離路線活性化のためにWeatherbys Hamilton Stayers’ Millionという100万ポンドのボーナスが出るシリーズが今年から始まったのですが、StradivariusはヨークシャーC(GII)、アスコットGC、グッドウッドC、ロンズデイルC(GII)を勝ち、初年度にそれを制しました。さらにロングディスタンスC(GII)も追加し、超長距離だけを走って5戦無敗でシーズンを終え、文句なしの受賞となりました。配合が良いです。

古馬チャンピオンはEnable。前半を棒に振りましたが、凱旋門賞、BCターフ連勝という偉業を成し遂げました。

ジョン・ゴスデン師はRoaring Lion、Too Darn Hot、Stradivarius、Enableの4頭で5部門制覇。4頭とも種牡馬、馬主が異なるという。今年、Galileoもエイダンもいつもより振るわなかったのは(ブログ)ゴスデンにやられた面も大きかったのでしょう。Galileoが衰えたからエイダンが大きいところをあまり勝てなかったのか、エイダンが大きいところをあまり勝てなかったからGalileoが振るわなかったのか、どっちなのでしょうかね。