うぉんばっとな毎日

大用、現前するとき、軌則を存せず

Sadler's Wells死亡

2011-04-28 00:10:29 | 競馬日記
Sadler's Wellsが亡くなりました。
競走馬時代は大調教師ヴィンセント・オブライエンに管理され、マイルから中距離までが守備範囲で愛2000ギニー、エクリプスS、愛チャンピオンSと3つのGIを制しました。種牡馬入りしてからは基本は底力豊富なクラシック向きサイアーではあるものの2歳戦から走れるマイラーから晩成ステイヤーまで幅広く大舞台で活躍する産駒を出し、英愛リーディングサイアーにHighflyerをこえる14回も輝くという偉業を成し遂げました。日本における社台がノーザンテーストサンデーサイレンスで絶対的な支配力を確立したように、CoolmoreはSadler's WellsとDanehillで欧州において圧倒的な優位を築きました。

代表産駒、と呼ばれる資格のある成績を残した馬があまりに多すぎて絞りきれませんが、ダービーと凱旋門賞の勝ち馬はGalileoHigh ChaparralカーネギーMontjeuの4頭です。

Galileoの母は凱旋門賞馬Urban Sea。Bay Ronaldを主体としたシンプルな構造でした。その母内ではクロスさせることが出来ていなかったHyperionを生かすことにより、スムーズにBay Ronaldの流れを受け継いでいる素晴らしい配合です。
High Chaparralは父Sadler's Wells×母父Mill Reefのニックス。Lalunのクロスがポイントで、Djebelのようなヨーロッパ系のスタミナとBlue Larkspur、Black Toneyのようなアメリカ系の血が結びついています。High Chaparralは母父がヘビー級の重さを持つDarshaanであり、更に残り1/4の部分の5代目にDjebelが配されています。相当に重厚ですね。
カーネギーは母が凱旋門賞馬Detroitで、凱旋門賞母仔制覇を成し遂げました(後にGalileo半弟Sea the Starsも成し遂げています)。配合は父Sadler's Wells×母父Riverman系のニックスで、母父Mill Reef系のニックスと合わせて父Sadler's Wells×母父Never Bend系のニックスと呼ぶことが出来ます。Lalunのクロスがやはりポイントと言ってもDjebelのクロスはなく、Nasrullahの位置もかなり前です。じゃあスピードタイプかというとそうでもなく、残り1/4のSunny Boy、Norseman、Vatellorと言うスタミナタイプの血の中にあるAsterus - TeddyをLalunの中に取り込んで徹底的に生かしています。
Montjeuは父Sadler's Wells×母父High Topのニックス(母がHigh Top全妹のオールドヴィックを含む)。傾向の違う無意味なクロスが全く発生せず、スムーズにNearcoが主導を作ります。Nasrullahのスピードを生かしていると言っても、Djebelとその中のGay Crusaderの生かし方はなかなか強力であり、他にもスタミナのアシストが多く、やはり中長距離向きに出来上がっています。

いずれも実績に違わぬ素晴らしい配合で、Sadler's Wells産の一流馬の配合としては模範的です。配合の手本になります(他にはSalsabilドリームウェルキングオブキングスなんかも手本として押さえておきたいところです)。

メジロ牧場解散

2011-04-26 23:09:36 | 競馬日記
とうとうメジロ牧場が解散するようです(記事)。

大レース勝ち馬を輩出して一時代を築いたメジロ牧場ですが、近年は全く駄目で重賞勝利は2006年のメジロマイヤーによる小倉大賞典(GIII)までさかのぼらなければなりません。リーディングブリーダーの順位でも近年は下位に低迷しています。
メジロが頂点を迎えたのは1987年生のメジロライアンメジロマックイーン(生産牧場は吉田堅牧場)、メジロパーマーの3頭の活躍でしょう。3歳(旧4歳)の春からクラシックを期待されたメジロライアン、そのライアンが取りこぼし続けたクラシックを最終戦でかっさらったメジロマックイーン。マックイーンは天皇賞3代制覇を成し遂げました。宝塚記念ではライアンとマックイーンの一騎打ちになり、鞍上ノリちゃんの気迫がライアンに勝利をもたらしました。この2頭が戦線離脱したのを埋めるように障害帰りのメジロパーマーが春秋グランプリを制しました。3頭とも父内国産馬でそれぞれキャラの立った個性派でした。その後一時的に低迷しましたがライアンの初年度産駒メジロブライトメジロドーベルが活躍し、過去の栄光を取り戻したかのように見えました。

奇しくも天皇賞春を前にJRAのCMでは「絶対の強さは、時に人を退屈させる」というコピーでメジロマックイーンの天皇賞春の映像が流れています。また、先日、メジロマックイーンを母父に持つオルフェーヴルがメジロが結局勝つことが出来なかった牡馬の春のクラシックを制しました。
メジロ牧場はなくなってもドリームジャーニー、オルフェーヴルがメジロの血を広めてくれるでしょう。

ザール

2011-04-25 22:00:11 | 競馬日記
ザールの仔がGIを勝ったようですね(記事)。

シャティンで行われたチャンピオンズマイルはXtensionが勝ちました。このタイミングで勝つとは思っていませんでした。というのは先ほどShawandaにはRaven's Passでどうかと書いたところだったのですが、Xtensionは父Gone West系×母父Grand Lodgeであり、更にSecretariatとSir GaylordがクロスするところがRaven's Pass × Shawandaと共通します。狙ってみたくなる配合パターンの一つじゃないでしょうか。
ちなみにGone Westの系統でSecretariatとSir GaylordによってSomethingroyalをクロスする配合はZafonic最良の仔ザール、GIII2勝のみですが種牡馬として成功したGone West直仔Elusive Qualityの他に、Zafonicの全弟Zamindar最良の仔Zarkavaがおり、これも一つのパターンになっています。

Raven's Passを選んだのはShawandaはDarleyにいるようですからDarleyの種牡馬から選ぶのがいいだろうということで、当然ダーレージャパンのザールも見てみたのですが、世代の関係もあってRaven's Passで仮想配合を行いました。

Shawanda

2011-04-25 19:43:07 | 競馬日記
Shawandaの初仔Genius Beastがサンダウンのクラシックトライアル(GIII)を勝っています(記事)。
アガカーン殿下がKingmamboを使うとは珍しいこともあるものだと思ったら、ラストレースとなった2005年の凱旋門賞のあと、ShawandaはGodolphinに売却されていたんですね。このニュースは見逃していました。イニシャルが母と違っているから馬主がアガカーン殿下じゃないことはすぐに分かりますが、Shawandaをスタッドから出しているとは思いませんでした。

ShawandaはMill Reef 4 x 4、Northern Dancer 5 x 4、Abdos 5 x 4と前面に複数の大きなクロスを持っていて、ローズキングダムの血統表を見るたびに思い出します。そのローズキングダムの祖父KingmamboをShawandaに配したのがGenius Beastで、持っている血自体はそんなに不満はありませんが(母方のマニアックな欧州系の血を押さえ切れていない面はありますが)、世代の関係はちょっと不満です。Kingmamboではなく例えば父がキングカメハメハなら母の血をそのまま増幅させることができます。他には豊富なPrincequilloを生かすという観点からDarleyに繋養されているRaven's Passなんかどうでしょうか。

キングカメハメハ × Shawanda
Raven's Pass × Shawanda

オルフェーヴル

2011-04-24 23:42:13 | 競馬日記
ドリームジャーニー全弟オルフェーヴルが皐月賞を勝ちました。兄は小回りの右回り専門ですが、弟は東京2000mを完勝。兄は2500mのGIを勝っていますし、距離の心配はないでしょうから、次も期待できそうです。

母父はメジロマックイーン。血統表にメジロの名前が入った馬が皐月賞を勝ちました。父はステイゴールドで、母父メジロマックイーンにとって最良の父でしょう。ステイゴールドは国内ではとうとうGIに手が届きませんでしたが、ラストレースとなった香港ヴァーズとドバイシーマクラシック(当時はGIIですが、ワールドチャンピオンFantastic Lightを初め、GI馬が何頭も出走しており内容はGI級でした)を勝ちました。外弁慶の血は産駒にも受け継がれており、宝塚記念を勝ったナカヤマフェスタは凱旋門賞勝利にあと少しというところまで迫りましたし、シンガポールで高岡師に管理されているEl Doradoは当地のGIシンガポールゴールドCを連覇しました。
となると海外で大きいを取って海外で種牡馬入りしてくれることを期待してしまいます。クラブ馬ですから種牡馬入りした後にバックアップしてくれる人に恵まれるか分からないですし、サンデーサイレンス系は日本では飽和に近づいていますし、兄もGI馬で同じところで種牡馬入りしても仕方がないですし、ノーザンテーストクロスも日本で種牡馬入りする際にはプラスにはならないでしょうし、母父メジロマックイーンの優秀なステイヤーの血は欧州で生きる道があるんじゃないかと思います。ステイゴールドの母父ディクタスを考えるとフランスなんかが合いそうに思います。ディヴァインライトの仔にGIを取らせた実績もあります。

フミノイマージン

2011-04-23 22:30:37 | 競馬日記
フミノイマージンがようやく重賞を勝ちました。
ちょっと目を付けていた馬なのですが、3歳秋に道新スポーツ賞を豪快に勝ってこれからというときに一頓挫あり、昨秋に復帰して徐々に調子を取り戻し、前走の中山牝馬Sでは2着に入りました。

この馬の場合、何と言っても母内の豪快な近親交配でしょう。Northern Dancer 2 x 4、Delta Judge 3 x 4、Native Dancer 4 x 4 . 5 . 6がありますが、父の16歳時種付けです。仔出しは良好と言って良く、上の2頭は地方ですが10勝以上、弟は中央で勝ち上がっています。

フミノイマージンは血統要素がデルタブルースと共通しています。Alibhaiが利いているのがいいです。

Gentoo

2011-04-14 19:48:25 | 競馬日記
天皇賞(春)にGentooが参戦予定なんですね。昨年、ロワイヤルオーク賞、カドラン賞のGI二つとグラディアトゥール賞(GIII)を勝ちながらもカルティエ賞チャンピオンステイヤーに選ばれなかった不運な名ステイヤーです。

Gentooの母Ifniは欧州系の血を生かしたオシャレな配合で、Blushing Groom、Lyphard、Le Fabuleux、Herbagerの関係はルグリエールを思い出させます。父Loup Solitaireはアメリカ系の血を豊富に持つLear Fanの直仔で、母Ifniの傾向を生かし切れず、Lear Fanのアメリカンな血の生かし方にも問題がありますが、Alycidonが5代目から系列ぐるみを作る迫力には見所があると言っていいでしょう。AlmahmoudとAlycidonという点ではニュービギニングを思い出しました。Ifniにはディープインパクトを配してヨーロッパで走らせてみたいです。

今の状態の日本に本当に来てくれるのか心配ですが、本当に来てくれたらその勇気を称賛しなければなりません(成田着じゃなければ心理的な障壁がもっと低いと思いますが)。純然たる欧州型ヘビーステイヤーですから普通は淀の3200mはこなせないはずですが、Makybe Diva以来2頭目の参戦に期待したいです。

桜花賞

2011-04-10 23:21:45 | 競馬日記
混戦と言われた桜花賞はディープインパクト産駒マルセリーナが快勝しましたね。
ディープインパクト産駒は3頭出て、1、4、6着。上位では勝ちきれないような雰囲気があった中で、クラシックのタイトルを獲得した上に外れなしという素晴らしい結果になりました。

ディープインパクトは前代未聞の期待をかけられ、猛烈に高い質の繁殖牝馬を集めましたから、早く一つ結果が欲しいところでした。クラシック初戦でいきなり結果を出したのは非常に大きいです。

マルセリーナはCrepello 5 x 6がありますね。単なるスピード、瞬発力じゃない時代に入っています。

A.P. Indy引退、Ouija Board出産

2011-04-09 11:19:59 | 競馬日記
Lane's Endに繋養されているA.P. Indyは受精能力の喪失のため、種牡馬から引退するそうです(記事1記事2記事3記事4)。
Lane's Endは昨年、Kingmamboが引退したばかりなんですね。KingmamboとA.P. Indyを持っているスタッドというのも驚きですが、短期間に両方ともいなくなるというもショックでしょう。そうは言ってもSmart StrikeMineshaftも次のエース候補のCurlinもいるのですが。

Ouija Boardは4番仔となるGalileoの牡を出産したそうです(記事)。Ouija Boardの子は以下の4頭。
2008年生:Voodoo Prince
2009年生:Monsun × Ouija Board(牡)
2010年生:Galileo × Ouija Board(牝)
2011年生:Galileo × Ouija Board(牡)
Kingmambo、Monsun、Galileo。素晴らしいですね。Monsunの仔が牝馬だったら良かったのですが、Galileoの仔で牝馬を1頭確保出来ていて良かったです。Galileo × Ouija BoardはAlycidon = Acropoliceが5代目から強烈に系列ぐるみになるのが凄いです。

ちょっと前のニュースですが、Zenyattaは受胎が確認されていたはずなのですが、3月29日の検診では子供がいなくなっていました(記事1記事2)。再びBernardiniと交配される予定です(3月29日の記事に来週交配予定と書いてあったのですが、種付けは無事終わったのでしょうか)。

Black Caviarをなめていた

2011-04-07 19:49:32 | 競馬日記
Black Caviarという馬が強いそうですね。
The World Thoroughbred Rankings - 1st October 2010 to 27th March 2011で牝馬でありながら130というレーティングを得てトップです。この130は2009年のGoldikovaと同じで、2009年のZenyatta、2008年のZarkavaの128よりも上という高い数字です。スプリント部門での130以上は1990年のDayjurの133以来です(セックスアローワンスが3ポンドならDayjur並、4ポンドならDayjur超え)。

どんなものかレース映像を探してみました。その130のレーティングを得たレースです。
BLACK CAVIAR - NEWMARKET (G1) - 2011 - 1200 MTS


これは強い。牝馬でありながらトップハンデを背負い、残り300m地点で馬なりのまま先頭、そこから軽く仕掛けて一気に抜け出し、ラストは流す余裕があって3馬身差。他の馬との力の差がスプリントGIとは思えないですね(距離が長い方が力の差がはっきりと出る)。将来の名馬が新馬戦で見せるような競馬です。「スプリント界の大物」みたいなのは昨年のStarspangledbannerのこともありますからあまり信用していなかったのですが、これは本物と見ていいでしょう。
合田氏によれば秋にはスプリンターズSに来る可能性があるそうです(記事1記事2)。遠征競馬に適応できるかがまず第一の関門であり、後はコーナーさえ曲がれれば日本でも当然ながらいいレースをしてくれると思います。

レースは見たことがなかったのですが、血統表は何回も眺めています。その配合はBel Esprit x Desert Sun x Snippets x Vain。父Bel Espritはロイヤルアカデミー産駒のオーストラリア産スプリンターでGI2勝。母父Desert SunはGreen Desert産駒で重賞勝利なしの英産二流スプリンター。代表産駒は名牝Sunline。祖母父SnippetsはBuckpasserを通らないTom Fool系のオーストラリア産スプリンターで、後継種牡馬Pinsを得て父系を継続中です。曾祖母父Vainは1969-70シーズンの年度代表馬に選ばれたオーストラリア産名スプリンター。徹底的にスプリンターが累代交配されています。そして最前面のクロスはVain 3 x 4。これは単一クロスですが中の血は十分に生きていると思います。土着化した血をどのように使うかという面から参考になる点がありそうです。