うぉんばっとな毎日

大用、現前するとき、軌則を存せず

西恵利香「soirée」

2018-01-21 02:19:56 | 音楽
西恵利香「soirée」

一時ブログを書ける状態でなく(私自身の問題でもあり、Pednetが死亡したというのでもあり)、その後も放置状態だったのですが、久しぶりの更新で競馬以外ネタです。

現在もグラビア等で活躍している篠崎愛(最近、韓国でも大人気という話を目にしましたが、なんちゅうかすごいなという感想です:記事)が所属していたAeLL.というアイドルグループがあり、たまたま出かけた先で開催されていた無料イベントで以前見る機会がありました。名前を知っているのは篠崎愛だけだったのですが、みんなルックスも悪くないし、歌も歌えるし、ステージパフォーマンスも悪くないし、こういうグループがグループとしてはテレビに出られないんだからアイドル戦国時代は大変やなあと思いながら見ました。
その後、2014年にグループは解散し、そのうち2人は芸能界を引退し、ここでも厳しさを痛感しました。芸能界に残ったのは篠崎愛ともう一人がAeLL.のリーダーだった西恵利香です。

AeLL.
左端が西恵利香、左から2番目が篠崎愛。写真を引っ張り出してきて思い出したのですが、このときは篠崎愛以外のメンバーの名前も役割も知らず、一番小さい子が張り切ってMCをリードしたりなんかやってるなと思いながら見ていたような。その人がAeLL.の最年長でリーダーだった西恵利香だったんだとこのブログを書いていてようやく理解しました。

西恵利香はAeLL.在籍時にカバーアルバムを出しており、AeLL.解散後、ソロ活動に移りました。もともと歌唱力には定評があり、シティポップの復権を期待されるシンガーという感じでウェブメディアで名前を目にすることもありました。見たことがあるグループなので、こういう情報を目にするとなんとなく記憶に残るので、そんな感じでゆるく動向を追いかけていました。で、その彼女がCICADAらが在籍するレーベルpara de casaに移籍し、1stフルアルバムを出すということで、iTunesで軽く試聴後、CDを購入しました。

1曲目「Démarrer la soirée」はインスト。2曲目「街へいこう」から歌入りの曲が始まり、3曲目「LAST SUMMER DRESS」が配信限定シングル(カップリングが6曲目「AFFOGATO」)、4曲目「Lonely Night」は自身の作詞。この3、4曲目が第一の山と感じました。自身の作詞で、自身が「アルバムの要」という「誰よりも素敵な」を7曲目に配置。8曲目「綺麗な嘘」はアルバムだからできる変な曲。最初聴いたとき、これであってるの?と思ってしまいました。2曲目「街へいこう」と9曲目「はるか数駅」には街の音が入っています。2曲目が街に出かけるときの街の音で、9曲目は街から帰るときの街の音。2曲目で始まった物語が9曲目で終わるととって良さそうで、そうすると10曲目「sugar me」は「Sgt. Pepper's〜」における「A Day in the Life」のようなポジションにあたるように思いました。というのが全体のアルバムの流れになります。既発曲は2曲だけですし(様々な事情で出した既発曲をアルバムの中にどのように置いてどのように機能させるかが難しい場合もよくあるような気がします)、曲の発注からえりす自身が関わった(記事)のもあるのだと思いますが、寄せ集め感はなくて、全体的なイメージがうまくコントロールできているように思いました。

具体的に1曲取り上げるとすればやっぱり「誰よりも素敵な」でしょう。Base Ball Bearの小出氏が「「誰よりも素敵な」ほんといい曲。。歌詞がまた素晴らしい」と褒めていて(小出氏は自分のラジオでもこの曲をかけていたそうな)、このアルバムの中でえりす自身が作詞している曲があることに気が付きました。
作曲を担当したひろせひろせ氏に、男の子の歌なのに歌詞が女の子っぽいと指摘され修正したとの話ですが(記事)、今の歌詞でも言い回しは十分に優しくて、さらっと聞いただけでは性別不詳な感じがします(歌詞の内容を考えれば、なるほど男の子の歌だとわかりますが)。修正した結果、この状態まで持ってきたということになりますので、確かにたたき台の段階では指導したくなるところがあったのかもしれませんが、ちょうど良いところくらいまで持ってこれたのではないでしょうか。
この曲は、確かに男の子が主人公の曲なのですが、その男の子にえりす自身を重ねているように聞こえるところがあり、これがどこまで計算尽くでそう聞こえるように書いたんだろうかと考えています。例えば、2番のサビの「気付いてよ 誰よりも大きな声で歌うから」というところは、グループ解散から歌う場所・環境を求めてもがくえりす(記事)の叫びに聞こえなくもないですし、そう思いながら聴くと、「変わらないものなんてないかもね 「君がいれば変わることすら怖くない」」というところは今回のレーベル移籍を反映しているように感じますし、「君」が「ファン」であればファンがついてきてくれるなら怖くないと言っているように思えてきます。その他、「シネマライズだったあの場所が ライブハウスになっていたりさ」という部分は実際に渋谷のシネマライズが閉館し、WWWというライブハウスに変わったのですが、そのWWWで「soirée」のリリースパーティを兼ねた初めてのワンマン公演が12月18日に行われました。また、「誰よりも素敵なダンスを踊るよ」で踊ってしまうところは元AeLL.だからだろうかとか。
いずれにせよ、男の子主人公の表向きの歌詞の意味とえりす自身のことを歌っているように聞こえる部分が共存していて不思議な歌詞で、小出氏がどのような意味で褒めたのかわかりませんが、私もすごくいい歌詞だと思います。

こういうアルバムがもっと売れるといいなあと思います。

ちなみに、歌詞サイトで歌詞が公開されてきていますが(例えばうたまっぷ)、「誰よりも素敵な」は実際に歌っている歌詞と一部異なります。歌詞カードに載っている通りに歌っていないようで、
「単純 バカみたい Ah 君しか見えない ほんとだよ」
のところは、CDからは
「なんてね バカみたい Ah 君しか見えないよ ほんとだよ」
と歌っているように聞こえます。

「西恵利香がキャリア初のフルアルバムをリリース!ソロシンガーとしての現在地とは?」 DI:GA online, 2017.11.18
「インタビュー:西恵利香、2018年へ “いつでもそこで歌ってる人でありたい”」 CDJournal, 2018.01.12
「西恵利香『soirée』 G.RINAやCICADA、フレンズひろせ、DÉ DÉ MOUSEら豪華な作家陣を迎えて完成した初のフル・アルバム!」 Mikiki, 2018.01.17
「AWAエディターが厳選した、2018年注目の邦楽アーティスト」