JCに出走する外国馬について1頭ずつ見たいと思います。
まず、
サデックス。繁栄しているBest in Showの牝系で、Sadler's Wells×Never Bend系のニックスです。血統表上Northern Dancerの2×4のクロスがある点は
ドリームウェルと近似します(祖母父がNorthfields)。ドリームウェルは仏愛ダービーを勝った名馬ですが、種牡馬としては日本で成功しませんでした。ドリームウェルの半弟の
Sulamaniですと父がJCで2年連続で掲示板に載ったエルナンドであり、またアメリカの芝で実績を残しているのでJCでも好走する可能性があったように思います。サデックスは配合的にはドリームウェルと似たところがあり、また日本での実績に欠けるSadler's Wells×Never Bend系のニックスですので、血統からは推奨しにくいです。
競走成績の面では、ドイツ調教馬でありドイツで実績があります。ドイツの競馬場は直線が500mぐらいですので、プラスだとは思います(実際、ドイツ馬では
ランドがJCを勝っていますし、
プラティニは軽視されながらも4着と好走しました)。シャンティイの1マイル半で2分28秒7の時計を持っているのも少しはプラスかと思います。もうちょっと堅い馬場での実績があれば競走成績的には推奨しやすいです。
ペイパルブルは父Montjeu、母父Zafonicです。モンジューはJCに参戦し、スペシャルウィークの4着でした。凱旋門賞でピークを迎え、シーズン最後の遠征であり、体調面では完全ではなかったでしょう。それを考えればそこそこ走った方ですが、日本の馬場が合っていたというより、能力が高かったと言った方がいいのかもしれません。ペイパルブルは母父からスピードを供給していますので日本の馬場に対する適性は増しているように思います。
競走成績の面では昨年、アスコットの1マイル半のレース、キングエドワード7世S(GII)を2分28秒02で勝っており、このときBCターフの
Red Rocksを破っています。ただしGIでの実績はなく、実力の面で疑問はあります。
ハリカナサスはスピードのありそうな牝系は面白いです。父のCape Crossの産駒では
ウィジャボードが昨年のJCで3着、
エイブルワンが安田記念で12着。競走成績はこれらより下で、実力に疑問があります。合田さんは堅い馬場で実績があると言っていますが(
記事)、それほど速い持ち時計もありません。
アルティストロワイヤルは前走のクレメントLハーシュメモリアルターフチャンピオンシップで初GI勝利を挙げました。そのときの勝ち時計は2000mで2分を切っています。トラックコースでのスピードに対する適性は十分です。
サラファンと印象がかぶります。ちなみにサラファンが2着に入ったときのJCの前前走はクレメントLハーシュメモリアルターフCSで、
The Tin Manの2着でした。これは2002年です。今年の同レースの2着はThe Tin Manでした。The Tin Manのセン馬らしいタフさはすばらしいですが、今のアメリカ芝路線のレベルは少し疑問視されるところです。そのレベルの中でようやくGIを取れた程度ですからどれぐらい実力を信用していいのか分かりません。
血統的には父デインヒル×母父Manila。Northern Dancer系の同系交配で、父系のNorthern Dancerは切れていますので弊害はないです。直接ゼロ遺伝を受けていないのは日本ではマイナスなんじゃないかと思いますが、内国産馬ではないのでGIでもやれるかもしれません。
いいところも悪いところもある馬が多く、ファルブラヴ、サラファン、ピルサドスキー、シングスピールのように、実力、適性ともに上だと自信を持って言えるタイプはいません。
血統的な適性ではペイパルブル、アルティストロワイヤル、実力ではサデックス、実力の評価を迷うのはアルティストロワイヤル、競走成績の面からの適性ではアルティストロワイヤルと時計勝負が未知数ながらトラックコース適性のあるサデックスいう感じでしょうか。
まさかの抗体検査非陰性で出走できない
Dylan Thomasは過去の傾向からは人気を背負って飛んでくれるタイプです。ただし、今年の神懸かり的成績と速くなりつつあるロンシャンの馬場を考えれば好走の可能性もありました。
ですが、辞退した
Red Rocksがデットーリ騎乗で出走なんてことがあったら、こちらの方が怖かったでしょう。