オリンピックが終わってしまいました。あっという間でした。
全てを振り返るのは不可能なので適当に思うところをまとめます。
陸上男子100、200mのウサイン・ボルトは常識破りでした。あの巨体で、ものすごいパワーで、猛烈なスピードで、突き進みます。100m決勝のゴール前で横走りのようになっていましたが、マイケル・ジョンソンを思い出しました。あれは確か、いつかのオリンピックか世界陸上の前の大会で、400mで完全に独走状態になってしまって、ゴール前でスピードを落としながら手を前後に開いて横走りをしたのでした。あのときはギリギリ世界記録を破れず、見ている方が悔しかったです。もうちょっとで破れるのだからまじめに走ってくれよと。ボルトの場合は横走りしながら世界記録。こっちもえげつないです。あの巨体、あのパワーですから、マイケル・ジョンソンが戦前に200mでの世界記録は難しいと言ったのは常識的です。しかし、カーブを曲がり終えたときに世界記録誕生を確信させる見事な走りでした。ボルトは400mリレーでも世界記録で金メダル。二度と起こりえない偉業だと思います。200mでも後半強かったですから、400mを走ればどうなるんだろうとも思います。
その400mリレーでは日本チームが銅メダルを取りました。予選でアメリカなど強豪チームが失格するラッキーはありました。しかしながら彼らはバトンパスが下手くそなので、確率的にこのような事態は起こりえます。日本チームはいつかメダルに手が届くことを信じてバトンパスの練習を積み重ねてきたので、メダルを手にする運命でした。アテネで4位だったときのメンバー土江寛裕はコーチをしているのですね(
記事)。バトンパスのポイントを分析してロスを減らす作業をしたようです。100mの日本記録保持者で甲南大学准教授の伊東浩司はちょうどNHKで解説をしていました。彼も朝原らと同じチームで走ったことがあります。朝原や末続が今までリレーに関わってきた全ての人の勝利であるようなことを言っていましたがその通りだと思います。
朝原宣治は最後の最後に最高の結果を手にしました。昨年の世界陸上のときに朝原がやめなければ北京ではメダルに手が届くと書きましたが(
ブログ)、本人もやめなくて良かったと思っているでしょう。これで思い残すことなく現役生活から卒業ができると思います。
今後の課題はやはり個人のレベルアップでしょう。今回、ボルトがとてつもない記録を作りましたが、早く10秒を切る日本人が出てきて欲しいです。またリレーのチームとして考えた場合、朝原の穴を誰が埋めるのか、この4年間の大きな課題になると思います。急造チームでロンドンを目指すのではなく、ロンドンの1年前の世界陸上から同じメンバーで臨めるぐらいが理想だと思います。
女子マラソンは野口が試合に出られず、土佐が棄権。両方ともオーバーワークでしょう。自分を追い込めるから一流選手なわけで、誰かがきっちりブレーキをかけてあげなければなりません。今回のレースのレベルから考えても非常にもったいなかったです。若い中村は遅いペースのレースでジョギングをしてきただけでした。経験不足とセンス不足です。
男子の方もオーバーワークで大崎が欠場。練習しすぎです。レースは夏のマラソンとしては破壊的なハイペースでした。日本人選手にとってはどうしようもありません。尾方の作戦が精一杯でしょう。
男女とも欠場が出たのですが、補欠選手を使えませんでした。直前に欠場が分かった男子の方はある面仕方がないですが(なぜ直前まで把握できなかったのかは問題ですが)、女子の方は補欠選手の方に切り替える時間の余裕があったにもかかわらず、補欠の方もダメという不手際でした。出たい選手、経験を積ませたい選手はいるのにそれを出せなかったのは日本にとって大きな損失でしょう。
今回は女子の方は遅いぺースでしたが、男子の方がそうだったように今後はオリンピックでもハイペースのレースが見られるようになるかもしれません。そうなった場合に今の日本の女子のレベルでは苦しくなるでしょう。オリンピック、世界陸上の女子マラソンメンバーが発表される度に「最強メンバー」などと盛り上げようとするのですが、そんな幻想を語っている間に世界の方はどんどん進んでいくでしょう。
夏の大会で6分台の記録で優勝したワンジルはすばらしいですね。天才的スピードランナーであり、我慢することを仙台育英時代から叩き込まれてケニアに初めてのオリンピックマラソン金メダルをもたらしました。3分台の世界記録を目指すそうです。ちょっと次元が違いすぎますね。
ハンマー投げの室伏はメダルに届かず。まだまだ力はありますが、若手の伸びが著しく、競技のレベルが向上しています。投擲種目で日本人がメダルを争えることだけで十分すごいです。
幅跳びの池田久美子は予選敗退。「まさかの予選敗退」という書き方をしている新聞もありましたが、今の池田では順当な結果です。今はスランプ気味ですから、もう一回技術を作り直して7mに挑戦して欲しいです。
3000mSCの早狩さんはこけなかったようで良かったです。全中の優勝者が未だに日本のトップなのですからすばらしいとしか表現できません。朝原と同い年ですが、まだ競技を続けるようです。まずは来年の世界陸上に出られることを期待しています。日本人が苦手な中距離種目をこれからも引っ張っていって欲しいです。
男子400m障害は為末、成迫ともに予選敗退。この種目は一時は4×400m障害リレーでもあれば(物理的に無理ですが)金メダルを狙えるのではないかと思うぐらい選手がそろっていたのですが、寂しい結果ですね。
その一方で女子の400m障害では久保倉が準決勝に進出する快挙がありました。日本女子短距離はレベルが低いと言われ続けていますが(実際にレベルが低いですが)、福島大学を中心とした強化が実を結びつつあります。
男子400mでは金丸が予選敗退。派手なパフォーマンスで知られる金丸君ですが、パフォーマンスに見合った走りを期待したいですね。
マイルリレーでは金丸が直前に出られなくなり、為末が急遽走ることなりました。ベストのメンバーさえ組めればこちらもメダルを狙っていける種目なのですが、どうもうまくかみ合いません。
男子の5000m、10000mは日本人には全く関係のない種目になってしまいました。新皇帝ベケレ兄が強いですね。このレベルでどうにか入賞を争えるぐらいのレベルの選手を育てて行かなければマラソンの方も今後も厳しいでしょう。
女子では5000mで小林が惜しくも次点で決勝に進めず、1000mでは福士が11位。小林は伸びしろがどれくらいあるのでしょうか。ちやほやされ方を見ると早熟で終わってしまいそうな気がしているのですが。