ずっと思っていたことですが、「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」という組み合わせの活躍馬は多く、しかも種牡馬として成功していますよね。
試しに英・愛、北米、仏、独、豪、日のリーディングサイアー(Northern Dancerが初めて首位をとった1970年以降)の表を作ってみます。
バックが黄色なのはNorthern Dancerを持つ種牡馬(
Northern Dancer自身は除く)、赤、青、ピンク字はFlares = Omahaを持つ種牡馬で、赤字は「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせの種牡馬からOmaha = Flaresを供給している種牡馬、青字は「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせの馬からOmaha = Flaresが供給されていない種牡馬という分け方です。
赤字は
ノーザンテースト、
Nijinsky、
Nureyev、
Caerleon、
Sadler's Wells、
Green Dancer、
Palace Music、
Fairy King、
Zabeel、
Storm Cat、
Thunder Gulch、
El Prado、
Montjeu、
Dansili、
Redoute's Choice、
Galileo、
Zamindar、
Samum、
Encosta de Lago、
Giant's Causeway、
King's Best、
Areion、
キングカメハメハ、
Lomitas、
Lonhro、
Poliglote、
Fastnet Rock、
Kitten's Joy、
Motivatorの29頭に対し、青字は
アグネスタキオンと
マンハッタンカフェの2頭のみ。ピンクの
Flying Spurは「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせの“繁殖牝馬”からOmaha = Flaresを供給している種牡馬です(Encosta de Lago、Kitten's Joyは「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせの種牡馬と繁殖牝馬両方から供給)。Samum、Lomitas、Kitten's JoyはRidan = Lt. StevensからもFlaresを取り込んでいます。
白バックのところの青字の比率に対し、黄色バックのところの赤字は圧倒的に多いですね。そして黄色バックのところに青字は出現しないです(Omaha = Flaresは「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせの馬から供給されている)。Northern Dancer産駒種牡馬が初めて首位をとった1978年以降で具体的に数えると(Nothern Dancer自身は除く)、Northern Dancerを持たない種牡馬55頭に対し、Northern Dancerを持たずFlares = Omahaを持つ種牡馬2頭、Northern Dancerを持つ種牡馬44頭に対し、「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせの種牡馬からOmaha = Flaresを供給している種牡馬29頭(ピンク字も合わせると30頭)、ということになります。圧倒的な差ですね。Omaha = Flaresは「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせによって広まったということができると思います。
この表に載っている種牡馬の血統表に出現する「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせはいくつかのパターンがあります。
母父がVictoria Park:ノーザンテーストと
The Minstrel
Victoria Parkと同じChop Chop×Windfieldsの組み合わせ(
Victoria Park × Ciboulette):
Fanfreluche(牝馬)
Flaming Pageから:NijinskyとThe Minstrel
Flaming Pageとよく似たSouth Oceanから(
Flaming Page × South Ocean):Storm Bird
Specialから:Nureyev、Sadler's Wells、Fairy King
はまりやすいパターンがあった上できっちりと成功しているということですね。Samum、Lomitas、Kitten's JoyもThong = Ridan = Lt. Stevensを使っている点でも成功パターンでした。
この表に載っている種牡馬の血統表に出現するOmaha = Flaresを持たないNorthern Dancer直仔は
Lyphard、
Be My Guest、
Danzig、
Vice Regent、
Hero's Honor。これらの間に明確なパターンがあるようには感じないです。
ただし、DanzigはGallant Foxと同血のFighting Fox、Vice RegentはVictoria Parkの母Victorianaを持ち、「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせの成功例と共通点があります。
青字の
アグネスタキオンは母父ロイヤルスキーがNijinskyやThe Minstrelと同じ牝系で、ここからOmahaを供給しています。アグネスタキオンも「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせの成功例と共通点があると言えます。
マンハッタンカフェは母父Law Society内
Summer Tanの母父がOmahaです。
「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の組み合わせがはまりやすかった理由はNorthern Dancerがカナダ産でカナダで供用されたことが一つの理由でしょう。Northern DancerはカナダのE.P.テイラーによってウインドフィールズファームで生まれ、生まれ故郷のウインドフィールズファームに繋養されました(その後、ウインドフィールズファームのメリーランド支場へ移動)。そして、Nijinsky、The Minstrel、ノーザンテースト、Storm Birdはウインドフィールズファーム=E.P.テイラーの生産です。Fanfrelucheもカナダ産で、母CibouletteがE.P.テイラーの生産です。「父Northern Dancer×母Omaha = Flares全兄弟(のいずれか)持ち牝馬」の成功パターンと挙げた8頭のうち5頭がこれですね。ただ、Specialの血を引く3頭は違いますね。
こういった背景があって、成功例が多数出る確率が高かったにせよ、大成功が多すぎますし、OmahaもFlaresもカナダにしかない血ではないですし、Omaha、Flaresを持つ牝馬にNorthern Dancerだけが付けられたわけでもありません。何かよく分からないですけど、成功しやすい何かがあったのでしょう。とまあ、特にアイデアがあったわけではないのですが、そういうことを指摘したくてブログを書いたということです。
ここまで来て、OmahaとFlaresについて何も書いていないことに気付きました。両馬の父は米3冠馬Gallant Fox。Omahaも米3冠馬であり、世界的にも稀な3冠馬父子になります(ディープインパクト→ジェンティルドンナは3冠馬→牝馬3冠馬)。Omahaは4歳時はイギリスで走りましたが、アスコットGC、プリンスオブウェールズSで2着と大レースを落としました。その敵を討ったのが全弟Flaresで、イギリスで競走馬生活を送り、アスコットGC、プリンスオブウェールズS、チャンピオンSなどを勝ちました。両馬の母FlambinoもガゼルHを勝った活躍馬です。
Omahaは父と同じ名門クレイボーンファームで種牡馬入りしましたが、直仔に目立った活躍馬を出せず。しかし、牝系に入って、ヴォスバーグS、ピムリコスペシャルなどのSummer Tanの母父として、そして英3冠馬Nijinskyの曾祖母父として、復活しました。Flaresもアメリカで種牡馬入りしました(牧場名が探し出せない)。代表産駒にカナダリーディングサイアー5回のChop Chop、クイーンズプレートのEpigram。Chop Chopはアメリカで種牡馬入りしたものの、待遇が悪かったのですが、E.P.テイラーに買われてから大ブレイクしました(
記事)。
OmahaとFlaresについては何かで詳しい記事を読んだ気がするのですが(紙媒体だったような気が)、それを探し出せればもうちょっと詳しく書けるかもしれません。