今回の世界陸上のマラソン代表に男子は5名、女子は3名が選ばれました(
記事)。
女子は3名しか選ばれず、枠があるのに選ばれなかったというのは選ばれなかった選手からしたら不満でしょうが、日本の女子マラソンはレベルの低下が著しいのは確かです。ちなみに日本の女子マラソンがヤバいことは2007年時点で指摘していたことで(
ブログ1、
ブログ2)、そこから全く改善しなかったのが残念です。
世界記録と今回の世界陸上の選考会での記録を見てみます。
男子
パトリック・マカウ:2時間03分38秒(世界記録)
前田和浩:2時間8分00秒
川内優輝:2時間08分15秒(参考:2時間08分14秒)
堀端宏行 :2時間08分24秒
中本健太郎:2時間08分35秒
藤原正和:2時間08分51秒
女子
ポーラ・ラドクリフ:2時間15分25秒(世界記録)
木崎良子:2時間23分34秒
野口みずき:2時間24分05秒
福士加代子:2時間24分21秒
男子は世界記録から4人までが5分以内、残り1人も6分以内、女子は世界記録から8分以上遅れ。
以前は女子は、高橋尚子が世界で初めて20分の壁を突破し、それに渋井陽子や野口みずきが続いたのですが、近年は全く20分を破れなくなりました。弱くなりましたね。でもまだ代表に入ってくる野口みずきは素晴らしいですし、よく復活してきたと思います。
男子の方は全員8分台の記録で選ばれ、粒は揃っています。世界はまだ遠いですが、随分とましになりました。もうひと頑張りですね。まずは5分台で走れる選手が見たいです。
川内優輝の登場は革命的出来事です。
マラソンというのは、目標となるレースを絞って、それに向けてハードなトレーニングを積んでいくものと今まで思っていました。
しかし、川内はレース自体を練習の場にしてしまいます。その結果、今年に入ってから月1回ペースでフルマラソンに出るという普通ではあり得ない状態になっています。更に、その4レースで3勝、負けたレースも自己ベスト更新。結果も残しています。
まずは世界に通用するスピードを鍛えてからマラソンに転向して、、というルートが最近の基本だったように思いますが、マラソンは奥が深いですね。詰まった間隔で走って自己ベストを出してきた点で浅井えり子を思い出しました。まず1992年11月の東京で自己ベスト、翌1993年2月の上尾マラソンを挟んで3月の名古屋国際女子マラソンで30分を切る2時間28分22秒(もう20年も経つんですね)。浅井が30分を切れるとは思いませんでしたし、しかも前のマラソンから1ヶ月でこんな記録が出せるとも思いませんでした。
浅井えり子といえば佐々木功監督のLSD理論。「ゆっくり走れば速くなる」というやつです。負荷の少ない練習+短い間隔でレースというのはアリな組み合わせかもしれませんね。
川内はレースがどんどん上手くなっています。レースを絞り込んで、展開も考えて本番を迎えたところでその展開にならなければ終わりです。川内はレース経験が豊富で、駆け引き、いろんなレース展開への対応力が素晴らしいです。また川内は実業団に所属せず、大学卒業直前からいわゆるマラソン競技への転向をしています。
他の選手ももっと早くマラソンに取り組んでいいかもしれませんし、取りあえずマラソンを回数走ってみるのもいいんじゃないかと思います。走ってみなければ分からないことも多そうです。