マンノウォーSは興味深い血統の馬が勝ちました。
Dynaformer産駒の
Point of Entryです。
父Dynaformerは1985年生のRoberto産駒。同期のRoberto産駒には
サンシャインフォーエヴァーと
ブライアンズタイムがいます。
競走馬として最も成功したのはサンシャインフォーエヴァーで、3歳時に芝GIを3連勝し、BCターフでも2着に入ったエクリプス賞最優秀芝牡馬です。
ブライアンズタイムはGIフロリダダービー、ペガサスHを勝つなどダートで活躍し、3冠路線にも進みプリークネスSでも2着に入りました。サンシャインフォーエヴァーがチャンピオンだっただけにかすんでしまうのですが、こちらもなかなかなものです。
DynaformerはGI勝利はありませんでしたが、ジャージーダービー、ディスカバリーHと2つのダートGIIを勝ち(ジャージーダービーは今は芝)、キーンランドの芝12Fのコースレコードを出したこともある芝砂兼用馬でした。
サンシャインフォーエヴァーとブライアンズタイムは
Darby Dan Farmの生産。Dynaformerの母はDarby Dan Farmの生産でJoseph Allenが所有し、DynaformerはJoseph Allenの生産馬となっています。
血統的には非常に近く、サンシャインフォーエヴァーとブライアンズタイムは母が全姉妹。Dynaformerの母父はサンシャインフォーエヴァー、ブライアンズタイムの母父Graustarkの全弟His Majesty。曾祖母がGolden Trailで、これがサンシャインフォーエヴァー、ブライアンズタイムの祖母です。
ちなみにDarby Dan生産で、Joseph Allenが所有した馬に
Darby Creek Roadという1975年生の馬がいます。父がRoberto、母がDynaformerの祖母On the Trailで、サンシャインフォーエヴァー、ブライアンズタイムの3/4同血に当たります。GI勝利はありませんでしたが、2歳時にGIIサラトガスペシャルを勝っています。
John Henryに3度勝ち、ベルモントSで
Affirmed、
Alydarに次ぐ3着に入った強豪でした。種牡馬としてはデルマーフュチュリティの
Drag Raceを出しています。
サンシャインフォーエヴァーは種牡馬として期待され、Darby Danに残りました。しかし、サンファンカピストラーノHの
Sunshine Streetを出した程度でした。Sunshine Streetは英ダービー(4着)、英セントレジャー(3着)にも出たことがある芝馬でした。後年、日本に輸入されてからも芝の勝利数の方が上回っていました。
ブライアンズタイムは早田牧場によって輸入されました。本当はサンシャインフォーエヴァーを狙ったのですが、値段が高くブライアンズタイムにしたとの有名な話があります。しかし日本で大成功し、3冠馬
ナリタブライアン、GI4勝
マヤノトップガン、2冠馬
サニーブライアン、ダービー馬
タニノギムレット、オークス馬
チョウカイキャロルなど、芝の大物を多数輩出しました。しかし、勝利数はダートの方が多く、また、活躍馬も年を経るにつれダートにシフトし、
タイムパラドックス、
フリオーソなど、ダートの大物も出しています。
Dynaformerは最初、Wafare Farmに繋養されましたが、1995年からは
Three Chimneys Farmに移りました。競走成績は前2頭に劣りますが、種牡馬としてはかなりのもので、米クラシック路線ではケンタッキーダービー、フロリダダービーの
Barbaroを出しました。しかし、産駒は芝適性の高いものが多く、メルボルンCの
Americain、英1000ギニー、愛オークス、ヨークシャーオークスの
Blue Bunting、独ダービー、ラインラントポカルの
Wiener Walzer、英セントレジャーの
Lucarno、フィリーズマイル、メイトロンSの
Rainbow Viewなど、数多くの芝のGI馬を出しています。
Point of Entryは良血馬で、半姉にアラバマS、ガゼルSの
Pine Island、母はBCディスタフの
Pleasant Homeの全姉、曾祖母メイプルジンスキーは名スプリンター
Dayjurの半妹であり、アラバマS、モンマスSを勝った名牝で、ここからトリプルティアラの
Sky Beauty、母父サンデーサイレンスのGI2勝馬
Tale of Ekatiなどが出ています。
血統構成は今、日本のダート戦線で活躍している
バーディバーディと似ています。母は全姉妹。父はDynaformerとブライアンズタイム。
父がダートの強豪を出すブライアンズタイムであり、尚且つ、今、日本のダート界で流行っているGraustark=His Majestyを3 x 4でクロスするバーディバーディはダート馬でしたが(スプリングSから皐月賞に向かったときはどうなるかと思いました)、Point of Entryは芝馬になりました。父が特に近年は芝用にシフトしていたDynaformerであるというのは大きいと思います。他に要素を探すと、Hasty Roadの位置でしょうか。バーディバーディは4 x 5でしたが、Point of EntryはGolden Trailの位置が一つ奥に上がったために5 x 5になっています。どちらもNashua 4 x 5 . 7でリードする血統構成だけにHasty Roadの位置がNashuaと並ぶよりも一つ奥に上がった方が少しすっきりします。
Graustark=His Majestyが日本のダートで流行っていると言ってもGraustark=His Majestyを持っていたらダート馬になるというほど単純ではありません。一番の例はタニノギムレットでしょう。ブライアンズタイム産駒でGraustarkクロスを持ちますが、競走馬として純然たる芝馬で、種牡馬としても芝向き種牡馬です。他の部分も大切ですし、直接遺伝のようなものもあるように思いますし、ダート馬が出やすいというのとその特定の馬がダート馬であるかどうかは別です。