うぉんばっとな毎日

大用、現前するとき、軌則を存せず

アガカーンスタッドその後

2019-02-27 23:17:07 | 競馬日記
2012年5月に「アガカーンスタッドはいつ目覚めるか」というブログ記事を書きました(ブログ)。
それに発奮したのか(んなわけない)、2012年はGI6勝と久しぶりの当たり年でしたが、2013年は私が名前を出したDalkalaによる1勝だけ、2014年もSea the Starsの初年度産駒Vaziraによる1勝だけでした。
その後、アガカーンスタッドで供用されている馬の産駒が結果を出し始め、2015年はSyouni産駒Ervedyaによる3勝とAzamour産駒Dolniyaによる1勝を含む5勝、2016年はSea the Stars産駒Harzandによる2勝を含む4勝、2017年はDalakhani産駒ShakeelとZarkavaの仔Zarakによる勝利を含む3勝と持ち直したように見えました。しかし、2018年は2001年以来のGI勝利なし。(ここまでのデータはアガカーンスタッド公式サイトから抜き出したものですが、サイトのデータ自体に抜け落ちがあるかもしれません。)

これらの馬の中では、HarzandとZarakの配合がいいですよね(Harzandは解説済み)。Zarakは明確なMr. Prospector主導、父母相似で、2017年の最優秀配合馬に推したいくらいでした。

アガカーンスタッド公式サイトの「RECENT RACE RESULTS」のページに2018年6月以降の重賞成績があります(2019年2月27日現在)。
どのような種牡馬の産駒が重賞に出走したかを書き出すと、ManduroShamardalRaven's PassFrankelRock of GibraltarExceed and ExcelAzamourTeofiloIffraajとなります。
アガカーンスタッドで供用されていた種牡馬はAzamourのみです。更にDanehill直仔Rock of Gibraltar、Exceed and ExcelにGalileo×DanehillのFrankel、Teofiloと、以前なら重用はしなかったのではないかと思われる種牡馬の名前があります。一方、Gone West系のRaven's Pass、Iffraaj、ドイツ血統Manduroなんかはアガカーンスタッドっぽさがあるように感じます。

アガカーンスタッド勝利の方程式、みたいな配合が難しくなって、従来のアガカーンスタッドっぽさのある種牡馬や今までは重用しなかった種牡馬を試しながら、というところなんでしょうね。その中で昨年は一休みのタイミングだったということでしょう。

最優秀配合賞2018

2019-02-09 22:26:05 | 競馬日記
2011年から「最優秀配合賞」というのを勝手にやっていたのですが、私が休眠状態に入ってしまったために2015年以降途絶えてしまっていました。それで、2015年以降の賞をざっと発表します。


2015年はこの馬しかいなかったでしょう。3冠馬American Pharoahです。
2歳時はGI2勝でエクリプス賞最優秀2歳牡馬、3歳時は3冠戦に加えてアーカンソーダービー、ハスケル招待、BCクラシックを勝ち、年度代表馬と最優秀3歳牡馬に選ばれました。トータルで11戦9勝(GI8勝)。3冠+BCクラシックの「グランドスラム」を達成した唯一の馬です。惜しかったのはKeen Iceに不覚をとったトラヴァーズS。これを制していたら4冠+BCクラシックというとんでもない大記録でした。
American Pharoahの配合は解説済みです(ブログ)。


2016年は英愛ダービー馬Harzand。英愛ダービー以降は振るわず、GI勝利はこの2つだけですが、配合には脱帽です。
曾祖母Hazy Ideaは見たことのある血統です。輸入種牡馬ヒッタイトグローリーの母です。経緯までは調べていませんが、このHazy Ideaがアガカーンスタッドに移動し、Darshaanを付けて生まれたのが祖母のHazaradjatです。Djebel - TourbillonとBlandfordがバリバリのとんでもないヘビー級配合です。これに2歳GI馬ザールを配して生まれたのが母Hazariyaで、GIIIのアサシSを勝っています。ザールは4歳時にエクリプスSで2着に来ているように純然たる早熟スピード馬ではなかったですが、Gone Westの仔Zafonic産駒であり、重い配合でないことも事実です。Zafonic(=Zamindar)産駒でSomothingroyalクロスというのはZarkavaと同じですね。HazariyaではDjebelは無視していますが、Djebelと相性の良いPrincequilloを父方SecretariatとSir Gaylord、母方Mill Reefの関係を生かしながらクロスしていて、うまいなあと思います。そこにSea the Starsを配して生まれたのがHarzandになります。
HarzandはSir Ivor 5 X 4、Mr. Prospector 4 X 5、Northern Dancer 5 X 6。これらは全て中間断絶ですが、Nasrullah、Nearco、Native Dancer、Man o'War、Mahmoud、Pharamond = Sickleなどで強固に結合します。Sir Ivorクロスが、父Sea the StarsのPrincequillo、Nasrullahの流れを受け止めながら、母父ザールのSomethingroyalクロスを生かしている(ザール内Secretariatが父Nasrullah系×母父Princequilloでもある。そもそも父内Miswakiもザール内Gone Westも父Mr. Prospector×母Nasrullah+Princequillo+Tom Foolで同じパターン)点が特に気に入っています。6代目からのDjebelクロスはNasrullahとともにNever Bendクロスに含まれ、またGay CrusaderクロスでPrincequilloと結合し、スタミナをアシストしています。
Sea the Starsに対してどのような配合がいいかなとこれに近い配合を考えていたのですが、私が仮想配合として考えていたよりもHarzandの方が良くて、完全に脱帽です。
ちなみにアガカーンスタッドにはマクフィがいたのですが、Harzandの出現とともにJBBAに売却されてしまいました。Green DessertのSir Ivorがクロスする点でHarzandと同パターンの配合ですね。マクフィも本当に素晴らしい配合です。


2017年はEnable。2017年は英愛オークス、ヨークシャーオークスのハットトリック+KジョージVI&QエリザベスS+凱旋門賞というとんでもないシーズンでした。続く2018年もけがで出遅れたものの凱旋門賞・BCターフ同一年制覇という大記録。歴史上最も強い牝馬の1頭でしょう。
Juddmonteの自家生産馬。高祖母Fleet GirlがJuddmonteに来たようで、その産駒で曽祖母のBourbon Girlは英愛オークスで2着があります。父はイルドブルボン。そういえばHasiliの父はイルドブルボン産駒Kahyasiでしたね。Bourbon Girlは2頭の重賞勝ち馬を出しています。1頭はシャンティイ大賞典(GII)の勝ち馬でSadler's Wells産駒Daring Miss。もう1頭がロワイヨモン賞(GIII)の勝ち馬でShirley Heights産駒Apogeeで、Enableの祖母です。Bourbon Girlの孫にはサンクルー大賞典のSpanish Moon(El Prado産駒)もいますね。Apogeeはロワイヤリュー賞(GII)とロワイヨモン賞(GIII)の勝ち馬で仏オークス2着のDance Routine(Sadler's Wells産駒)、シュマン・ド・フェール・デュ・ノール賞(GIII)とトマブリョン賞(GIII)の勝ち馬Apsis(Barathea産駒)の2頭の重賞勝ち馬を出しています。Enableの母ConcentricはDance Routineの全妹です。Dance RoutineはGI5勝のFlintshire(Dansili産駒)を出していますね。
配合は、クロス馬的に見るより、まずは中島理論的に見るべきで、Sadler's Wells 3 X 2という強いクロスがあるもののGalileoがSadler's Wellsゼロ交配であるために弊害なしと考えます。更に曾祖母父イルドブルボンもゼロ交配という念の入れよう。これを確認したうえでクロス馬を見ると、Northern Dancer - Nearctic、Hail to Reason - Turn-to、Native Dancer、Lalunなど、影響が強すぎるきらいはありますが、Sadler's Wellsに完全に血を集中させています。有効に作用していたなら凄いんじゃないかと思わせる迫力で、結果、有効に作用していて歴史的名牝が生まれました。そもそもこの牝系はDaring Miss、Spanish Moon、Apis、Dance RoutineとSadler's Wells系との間で結果を出してきましたから、「Sadler's Wells勝負」というのはあり得る発想でした。3 X 2クロスの成功例としても歴史に残るでしょう。


さて、2018年はこの馬にしました。Weatherbys Hamilton Stayers' Millionの覇者にしてカルティエ賞チャンピオンステイヤーのStradivariusです。
曾祖母はPawnees。英仏オークス、KジョージVI&QエリザベスSを勝った名牝です。アイルランド生まれですが、父も母も祖父母もフランス血統で3代目にようやく牝系高祖母として英国産Ballynash(モンタヴァルムーティエMourneの母ですね)が現れるというコテコテのフランス血統です(ダニエル・ウィルデンシュタインの自家生産馬で、Pawneesを受胎した状態で母をアイルランドで種牡馬生活をしていたドンのところに送って生まれた、ということなんだろうと思います)。残念ながら繁殖牝馬としては活躍馬を出せなかったようですが、その中で一応勝ちあがることができたのがStradivariusの祖母Poughkeepsieになります。Poughkeepsieは父がSadler's Wellsです。母の血統が特殊なフランス血統で占められているので、大種牡馬Northern Dancer直仔の大種牡馬Sadler's Wellsというのはマニアックな血をメジャーな血の方に振るという点では悪くないかもしれません。そこに仏ダービー馬Beringを配して生まれたのがPrivate Lifeです。Beringはフレンチな血もメジャーな血も持つので丁度よさそうな相手に見え、重賞勝ちはなかったですが、リステッドで2回3着があるようです。Private Lifeはウィルデンシュタインの死去によりドイツのクリストフ・ベルグラー博士(ドイツジョッキークラブのCEOを務めていたことがあるそうですが、ノヴェリストのオーナーブリーダーとして日本では知られていますね)のところに渡ったようで(Private Lifeの姪Patineuseもベルグラー博士ところに渡り、メルボルンCのProtectionistを産んでいます)、そこで何年か繁殖生活を送ったあと、ビヨン・ニールセン氏のところへと渡ったようです。ニールセン氏はたまに名前を目にする馬主なのですがどういう方なんでしょうね。で、そのPrivate Lifeにパーフェクト・レーシング・マシンSea the Starsを配して生まれたのがStradivariusです。
StradivariusはNorthern Dancer 5 X 4. 5中間断絶を呼び水としたAlmahmoud主導。日本でもサンデーサイレンス産駒種牡馬の産駒でよくみられる形態です。父方Urban Seaと母方Sadler's Wellsにより血統表内でGalileoが再現されているところもポイントです。父Sea the StarsはPrincequilloとNasrullahの馬だったのですが、StradivariusではPrincequilloはクロスせず、Sea the Stars的というよりGalileo的な配合と言えるかもしれません。また父内にNever BendがあるのでSadler's Wellsの血を持つ馬でよく見られるLalunクロスを持つ形態ができています。スタミナはDonatello = Domenico Ghirlandaio、Norseman、Acropolis内Hyperionなど。これらに含まれるBlenheim - Blandford、GainsboroughがAlmahmoudを支えています。他にはPrince Rose、Djebel、Asterus、Aethelstanなど。これらはもともとBay Ronald(とSt. Simon)でつながっていて(Hyperionも)、父や母や祖父母の血統内でこれを軸にして働いてきた血ですので、相性がいいでしょうね。これらのスタミナは魅力で、ステイヤーらしさは十分です。スピードはTurn-to、Nasrullah、Court Martial - Fair Trialなどでしょうか。Turn-toはNearcoでNasrullahとNorthern Dancerに直結、NasrullahはAlmahmoudにスピードを供給、Court MartialはGainsboroughとSon-in-Lawにより単なるスピードではありません。全体的に欧州系の血が多い配合ではありますが、父母に含まれる米系の血も最低限抑えられています。
Harzandとは全く違う配合ですが、これはこれで良い配合だと思います。また、Sea the Starsは良い配合の馬が走るので、血統マニアとして好きな種牡馬です。

2018年エクリプス賞

2019-02-05 22:49:32 | 競馬日記
2018年エクリプス賞が発表されています(記事)。

年度代表馬はJustify。6戦無敗の3冠馬です。惜しむらくは古馬との対決前に引退してしまったこと。十分に強い馬だと思っていたのですが、古馬との対決でそれを証明することはできませんでした。GI勝利は3冠戦とサンタアニタダービー。
この部門は古馬のAccelerateとの一騎打ちだったのですが、票は191対54でJustifyの圧勝でした。AccelerateはオークロンH(GII)でCity of Lightに不覚を取った以外は完璧で、BCクラシックを含む7戦6勝(うちGI5勝)でした(ちなみに引退レースとなった今年のペガサスWCでもCity of Lightの3着に敗れています)。

最優秀2歳牡馬は247票でGame Winner。4戦無敗、BCジュヴェナイルを含むGI3勝で、順当に受賞です。

最優秀2歳牝馬は214でJaywalk。5戦4勝2着1回、BCジュヴェナイルフィリーズを含むGI2勝。BCジュヴェナイルフィリーズターフのNewspaperofrecordも31票獲得しています。

最優秀3歳牡馬はJustifyが満票の249票で受賞。

最優秀3歳牝馬は247票でMonomoy Girl。7戦6勝。コティリオンSでは1位入線から2着に降着になってしまいましたが、BCディスタフも制し、ほぼ完ぺきなシーズンでした。

最優秀ダート古牡馬(2015年に最優秀古牡馬からこの名前に改められたそう)は245票でAccelerate。

最優秀ダート古牝馬は前年の最優秀牝スプリンターUnique Bella。4戦3勝2着1回、GI2勝です。3歳馬Monomoy GirlにBCディスタフを持っていかれる年でしたので票は少し割れ、182票での受賞です。次点は34票で前年の最優秀3歳牝馬Abel Tasmanで、こちらもGI2勝(5戦2勝)でした。

最優秀牡スプリンターは234票でRoy H。前年と同じくサンタアニタスプリントCSとBCスプリントを連勝し、2年連続で受賞です。

最優秀牝スプリンターは票が真っ二つに割れましたが、136票でBCフィリー&メアスプリントShamrock Roseが受賞。次点は113票でバレリーナSを勝ったMarley's Freedom。どちらもGI1勝ずつで、大一番BCで直接対決し、Shamrock Roseが勝っていますからね。

最優秀芝牡馬は大混戦でした。BCターフスプリントを連覇したStormy Liberalが85票で受賞しましたが、BCマイルを勝ったマイケル・スタウト厩舎のExpert Eyeが66票、ソードダンサーSのGlorious Empireが43票、ベルモントダービー(とダートのトラヴァーズS)を勝ったCatholic Boyが14票、ガルフストリームパークターフSとメイカーズ46マイルCを勝ったHeart to Heartが12票で、10票以上はここまで。全体では12頭の馬に票が入るという。芝のGI勝利数ではHeart to Heartなのですが、BC優先なんでしょうね。

最優秀芝牝馬も票が真っ二つ。BCフィリー&メアターフを含むGI4勝のSistercharlieが130票で受賞、同一年凱旋門賞・BCターフ制覇を成し遂げたEnableが119票。普通の年なら文句なしでSistercharlieなんですけど、歴史的名牝Enableも捨てがたく。

最優秀障害馬は176票でZanjabeelでした。障害レースはよくわからないのですが、配合はDanzig 3 X 4系列ぐるみ主導で、なかなか見所がありますね。