旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

ヒューム

2011年08月27日 08時08分02秒 | Weblog
世界の名著「ロック ヒューム」(中央公論社)に収録された「人性論」を読んでいて、タイトルが内容にそぐわないことが気にかかった。「人性論」を語るような哲学者は2流だという先入観もある。懐疑論で著名なヒュームが「人性」を語るとはなんたる不見識・体たらくかなどと不満をいだきながら読み進んだ。

昨日、久しぶりに駅前エール・エールの「ジュンク堂」に立ち寄った。目的はヒューム本の点検だ。意外に研究書の類が少ない。経済学や政治学の売り場をみていないとはいえ、哲学分野での研究書や原著の翻訳ものは10冊にもみたなかった。なかにかなり分厚い本で「人間本性論」定価1600円があったので買い求めようとした。

ヒュームの代表作と明記されている。安すぎるのでよく目を凝らして価格を見直してみたら驚くなかれ定価16000円の間違いだった。改めてタイトルを眺めると「人間本性論」、思い起こせばヒュームの「人性論」の性にリッシンベンがついていたような気がしてきた。世界の名著収録の「人性論」は「人生論」ではないことにようやく気がついた。

自らの読み違いに呆れるとともに、タイトルと内容の不整合感は瞬時に霧散した。既にタイトルと内容との間に違和感はない。16000円もだして「人性論」を買い求める必要がないことを確信した。「人生論」は「人間本性論」に他ならないからだ。

古典を紐解く際には注意深く謙虚でなくてはならない。思い込みの激しさは読書の大敵だという貴重な教訓をえた。思うところがあって本日は、珍しく、ヒュームの著作ではなくて、昨日ジュンク堂で買った泉谷周三郎著「ヒューム 人と思想」(清水書院)という入門書を読む。

「A Treatise of Human Nature」David Humeは注文済だ。この英語タイトルの翻訳は、「人性論」とするよりも「人間本性論」の方がふさわしいように思う。もっとも、私なら「人間性の理論」と訳すことだろう。わたしは生まれてこの方、人性や人間本性という類の言葉を使ったことがない。


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