昨日、「中原中也全詩」(角川ソフィア文庫集)を買って、大岡昇平の「中原中也伝」から読む。かれの出自や家族関係を詳細に紹介したのち、大岡は「中也は生涯すべてを自己の力を通して見、強い、独創的な自分、弱い雷同的な他人という簡明な対立で世間を眺めた。」と評している。アト・ランダムに中原の詩集を読んでいる。
本日、泉谷しげるのCDを買って「春夏秋冬」や「黒い鞄」、「人には厳しく 自分には甘く」から聞く。泉谷しげると中原中也の詞と詩には相通ずるものがある。絵画に例えれば中也の詩は抽象画だ。「泉谷は半生を自己の力を通して見、弱いが独創的な自分、強い雷同的な他人という図式で世間を眺めている。」。泉谷の方が処世術に長けている。
教科書的に言えば、中也の代表作は「サーカス」か「汚れちまった悲しみに・・・」だ。ところが、全集を読むにつけ、中也の詩はこちらの経験で照らしたり、思い当たるふし色に解釈できることが明らかになってくる。先入観は持たないほうがよい。抽象的な詩を読む側からすれば、中也をどのように感じ取るかが問題なのだ。
泉谷しげる 中原中也