心もち肝要にて候。
常に飛花落葉を見ても草木の露をながめても
此世の夢まぼろしの心を思ひとり、
ふるまいをやさしく、幽玄に心をとめよ。 ──心敬『心敬僧侶都庭訓』
現実への着生がゆるむ カウントできない刹那
なにもない 澄みきった突きあたり
なにごとも示されない 空のかなた
みずからの経験が失われてしまわないように
こころは、公理系の外にくちびるを向ける
記述の手を止めて ただたなびくまま
かたちなく 輪郭をたどれないままに
いざなうものにいざなわれ
あなたはまなざしを凝らす
混じりあう言葉と言葉のうちがわに
どこにも いちどもしたためられたことのない
かたちなくいざなうものに
わかれを告げ 手を振ることができない
はじめからなかったかのように動いていく
消えてしまうはかなさを受けいれることができない
帰るのか 行くのか どこへ
つかまえられない とどかないへだたり
けれど、たなびくままに
ただ決められることを決める
わかれないためにわかれを告げるように
ふたたび 新しく出会う時をあつらえるように
まなざしを柔かく ふるまいをやさしくして
出ていくためにこころのかたちを決める
どこへ
いま、ここに