実存の未決性──〝ゆらぎ〟という本質的特性。
ためらい、迷い、とまどい、逡巡、はにかみ、はじらい。
存在を確定する記述命題からはみ出し、あふれ、こぼれ出る〝未決のゆらぎ〟。
みずからの存在のかたちを問題として、
みずからに問い、問いをたずさえ、生きる存在──実存。
つねに因果的な記述とすれちがう実存の本質的形式。
あるいは、生命/非生命をわける決定的な存在特性。
この領域でのみ現象する不連続な変化、生成的いとなみがある。
因-果の線形的記述に従わない現象、創発する〝意味と価値〟。
「すき-きらい」「ほんとう-うそ」「きれい-きたない」
世界を光と影のテクスチャ-として織り上げるそれぞれに固有のまなざし。
実存のまなざしは新たなエロスの光源を探してさまざまな予期を立ち上げる。
「ありうる-ありえない」
相即する新たな存在のフォーメーション──「ありうる」(存在可能)を求めて。
「未決」としての実存──
生きられる現実の構成は、しかし、確定された「既決」を要請する。
実存と実存が交わり、生成し、展開する関係世界、関係のゲーム。
関係のゲームから生成する「既決」の集積体としての社会体。
集合的組織化を可能にする関係記述、関係項の生成──客観・真理・正義・ほんとう。
禁忌、禁則に囲われた価値と意味を確定する関係記述の体系化。
個と個を結び合わせるパターン、その派生的形式、モラル、常識、通念、習慣。
「未決」から「既決」へ。
この線形的な集合的原理の進行、展開に、もう一つ加えなければならない。
「既決」から「未決」へ。
展開形の人間的生から、その本質、全域性、生成性が失われないために。
ゆらぎにおいてその本質を展開する、人間的生の未決性に回帰するまなざしを確保する。
Intermission──人間的生の本質を構成する原理として、
つねに、相互に、守られるべき生成的な展開領域がある。