それぞれに、存在ごとに、固有の巡航速度があり
生の気圏に描かれる航跡、一回的波形がある
揚力と斥力のたえざる感知、エアポケット
遭遇する嵐、雷雲を避けるように
晴れ間を縫うようにして航跡を描くもの
その全景、全時間、全航跡にわたって追尾し
とらえ尽くすまなざしはどこにも存在しない
波形と波形が出会う限られた場所、限られた時間のなかで
互いに投げあうことばは限られている。
それでも出会うことに
なんらかの〝決着〟をつけることばをあつらえる
出会ったことにあいさつを交わし
手を振り、いちどきりの別れを告げる
ありがとう
*
すこしだけ現実への着生がゆるむ許された時間
たとえば茜色に染まった夕暮れの空
心を柔らかくして、窓を開く
永遠の相の下で──
海と空が出会う水平線、虹のかなた
たしかにそこに萌すものがある
見渡すかぎり
どこまでもはてしなく
思いのたけ思うかぎり
見たい夢を見たいかぎり
泣きたいだけ
叫びたいだけ
けっして生きられることのない〝永遠〟
仮象のイデアにリンクして流れ出す感情
わかれのことばを交わし
消えゆく航跡を見送りながら
わからないことのわからなさ
知りえないことの知りえなさ
ことばにできないことのできなさ
わかりあえないことのわかりあえなさ
伝えきれなかった、伝えそびれたことば
たがいに未知であり、非知であること
そのはてに萌す地平に立って
シグナルを交換する
満ちる疑いようのないたしかさ
そのエールのたしかさに心をよせる存在
いまここにいてもいなくても
つねにかたわらにいるもの
俺たちはそれを友と呼んでいる