個人的体験は深刻であっても、
それが照らし出す範囲は限られている。(中井久夫)
実感、実感っていうけれどさ、信を置きすぎないほうがいいな
それでおしまいではなく、はじまりの地点を示すものさ
実感同士がせめぎあえば、どっちが真か偽か、火花が散ることになる
実感は始原のマテリアルであっても、つまり
それ以上遡行できない認識の突当たりであっても
それ自体では真理も善も正義も普遍性を主張する権利はもたない
実感が実感のまま直進すれば、独断、専制のルートに入る
実感と実感が出会う場所、そこにことばの主戦場がある
つまり、武装解除、平和構築のきびしい仕事場がある
実感と実感を突き合わせ架橋するように交渉ルートを探索する
共有可能な第三の合意項、ことばを抽出していくさを回避する
できてもできなくても、この課題を携えることにはこの上ない意味がある
本当にすぐれた人間の知恵はそういう場面ではじめて姿を見せると思うな