ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「さかしま」 2020919

2020-09-19 | Weblog

 

世界をさかしまに見ないように

世界から見られるのではない
世界を見つめ返す
世界をこちらから見る視線をキープしよう

「ばかだから」
「ばかでない人間はいない」
「そうかな」
「かしこいふりをする大バカはいる。だまされないように」
「ずっとそう思って生きてきた」
「世界をさかしまに見ればそうなる」
「どういうこと?」
「自分の外からの視線に侵される」
「でもそうでしょ」
「人間の社会は自分をそう見ることを教える。ばかとりこう」
「偏差値とか」
「うん。ゲームを一つに絞ればそういうことになる。
絞りすぎるとゲームは加熱してそれが世界の現実、みたいなカン違いが起こる」
「でもゲームは一つじゃない?」
「ていうか、いろいろなゲームが立ち上がる地平がある」
「なに?」
「ぼくであり、きみであり、すべての人間である」

「でも、そうなりたいと思う知恵のある人はいる」
「わかるよ。でも、それはばかとりこうという話じゃない」
「ちがうの?」
「比較の問題じゃない。みんなそれぞれの生きる知恵をもっている。
みずからを、お互いを生かしあえるように知恵を交換し鍛えあえるかどうか」
「それがほんとうのかしこさ?」
「うん。ほんとうに大事なのは知恵の果実そのものじゃない。
いろいろな果実を育てる土壌が豊かかどうか。あえていえば、それが問題だ」
「土壌って?」
「ぼくであり、きみであり、すべての人間のこと。
人間の知恵には限界があるけれど、限界を広げるのはこの〝土壌〟以外ない。
そのことを知ることがほんとうの知恵と言えるかもしれない。
ほんとうに聡明といえるのは、そういうことだと思うな。
ばかとりこうの順番をつけるゲームとは全然ちがう話だ」

    *

一歩も動かなくていい
動いてはならない、そういうべきだな

はじまりの場所は、はじまりから終わりまで
つねにはじまりの場所でありつづける

きみの生、おれの生、だれかの生
すべての生きるものの固有の場所がある

一つの生命の場所、だれも取って代われない
その場所をキープしつづけること

おれたちはいつも動きすぎる
動きすぎてはじまりの場所を離れ、迷子になる

それだけではない、これまで頻発してきたことがある
そう、固有の生はいつのまにかだれか、なにかに取って代わられる

この倒錯の歴史、変態の歴史はいまもつづいている
動きすぎて起点が消え、この世で一番大切な場所を見失う

あれかこれか、あれでもないこれでもない
まよい、ためらい、さまよい、右往左往する
ゆらぐことは生命であることの本源的な原理だ

けれどもゆらぎ、迷う場所をまちがえてはいけない
みずからの生きる場所を忘れ、否定し、消去したらおしまいだ

その帰結は一つだ──「差し押さえをくらった命」

どんな超越項も介入できない神聖な場所
固有の生以外のなにものでもない
みずからが生き、これからも生きていく場所をキープする

世界が過酷な、惨劇の光景を再演しないように
差し押さえを喰らい、他者にもそれを求めず
相互にそこを生き、生き合う場所をキープして生きるために

変化が変化として、本質的な変化が起こる前提
すなわち、「動かずにそこに生きること」

起点がはっきりと生きられていること
すべての本質的な変化が現象するための絶対的条件 
逆に変化しなでいることも、すべてはそれが条件だ

変化を願う本源的なおのれの欲望
それが立ち上がる場所に居つづけること

同世代の時代、おれにはできていなかった、たぶん
きみにはできている、そう意識しているかどうかは知らない
けれど、そのことにおれにははっきりと見えていたと思う
(比較なんてどうでもいいことだけどね)

その潔さ、覚悟の見事さ
静かに、だれにも言明しない腹のくくりかた

一つだけ注意、蛇足かもしれない
「世界の姿を確定してはいけない」

なぜか

潔さのパラドクスに呑み込まれないように
覚悟を決めることと世界の姿を確定することはちがっている

そこにいることをキープしたまま
みずからのまなざし柔らかくして
そのスコープをどんどん広げていけばいい

ほんとうの知恵はそこでしか得られない
「動かなくていい」
そこにいることではじめて偽物fakeを見分けることができる

知恵者を競うゲームとは全然別の話だ
本質的な生のありかたがそこにある

友はいる、目の前にいなくても
歴史をさぐれば億単位でいるかもしれない

けれど同時代にもいる、この惑星のあちこちにね
それだけは知っておいたほうがいいな、絶対に

 

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